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予定帝王切開と全身麻酔~ただの出産記録②~

近年、妊婦さん5人に1人の出産は帝王切開らしい。私も第一子は緊急帝王切開だったし、何よりも胎児の命を最優先にして選択するのは頷ける。緊急帝王切開は局所麻酔だった。

私が通った産婦人科は、第一子が帝王切開だったら第二子も帝王切開での出産と決まっていた。絶対に普通分娩をしたいとは思っていなかったし、何より自分も赤ちゃんも安全な方法が一番だと思っていた。Vバックという言葉も知っていたけれど、今は行っている病院はわずかだという。宮城県内では行っている病院はない。

【予定帝王切開での出産】

そう、前日入院である。幸い、あらゆるトラブルとは無縁のマタニティ生活を過ごすことができたのだが、何より私が入院している期間の夫と娘の生活が不安だった。帝王切開は1週間の入院期間に加え、前日入院。大丈夫かな、娘泣かないかな。ちゃんと夫はご飯作れるのかな。冷蔵庫と冷凍庫をいっぱいにしても、安心なんてしないのでした。

産婦人科の美味しい夕食を終え、絶飲食を言い渡され、「あぁ手術するんだな」という気持ちになった頃に夫からの連絡が入った。娘はいつもより早く寝たよ、泣かなかったよ。ただ、それだけの報告に私は涙が溢れそうになり、早くも家が恋しくなった。

出産当日、いろいろ検査をして、午後から手術。夫や娘、母も駆けつけた。個室のベッドで尿道カテーテルを入れるのだが、これが激痛。2回目だけど本当に痛かった・・・そして、娘の横で入れてもらうという何ともシュールな光景。

自分から手術台にあがり、横になったとき、「あ、手術台ってこんなに幅が狭いんだ」と驚いた。冷たい台に寝て、よくドラマで見るようなライトが視界に入ってきたとき、怖くなって、少し身体が震えた。看護師さんか助産婦さんか分からないけど、気付いた方が「大丈夫よ」と声をかけてくれたお陰で小さく深呼吸ができた。

麻酔科の先生が到着し、「10数えると眠くなるからね」と言われた。これも、ドラマみたいだなと思った。10?本当に~?と疑う気満々のまま、先生の声が「6、7」くらいで、まぶたが強制終了となり、私の意識は無くなった。

次に意識を取り戻したのは、もちろん出産後。

「ぷはっ!!」と、まるで水中の中から顔を出した時のように、息苦しさを感じながら目覚めた。やっと酸素が吸えたという感想。回復室に移動してて、横には生まれたばかりの息子がいた。でも、よく見えない。

ほんとに、「「ふっっ」」と意識はなくなるんだ。麻酔って怖いな、あのまま目覚めなかったらと思うと、全身の怖さを痛感した。と同時に、今の麻酔のすごさを思い知った。「JIN」で見てたけど、すごいな。体験するって、こんなにも心にずしーんってくるんだ。

産婦人科で出産前にバースプランとなるものを書かされた。全く希望も欲もなかったから、困り果ててしまったのだが、唯一書いたのは、「出産当日に家族全員の写真を撮りたい」ということだった。もちろん手術だったから私は起き上がれないし、いい顔なんて出来ないけど、夫はあまり写真を撮らないから、当日にしかないものを記録したいというのが唯一の願いだった。

まぁ、撮った写真のひどいこと。私の顔が。あらゆる管に繋がれて、目はうつろで、すごかった。

そのあとのことはよく覚えていないけど、確か夫に「頑張ったね」と言われて、また深い眠りについてしまった。一人目の時みたいに高熱は出ることもなく、次に目を覚ました時には身体がだいぶ軽くなっていて、足先や手を動かすことができた。身体の傷はものすっっっごく痛いけど、明日になれば歩かなきゃいけないのが分かっていたから、身体や足を少しずつ動かし痛みに慣れておいた。

そんな小さな努力が、翌日に効いてくる。身体は動かさないと固くなる、これ本当だね。少しずつ動かしていたから、翌日立ち上がる時の痛みは、前回の痛みの1/3くらいだった。経験者だからという訳ではなく、痛いものは痛い。皮膚切って、子宮切ってるんだから。リクライニングベッドから立ち上がるのもコツを掴んでいたから、だいぶスムーズだった。知っている知らないでは、だいぶ違う。何事も「知らないって損」だと痛感した。

あとから分かったのだが、第二子の出産でも出血は多かったらしい。コウノドリのドラマで、よく手術室が血の海になっていたけど、あながちオーバーな見せ方ではなかったのかもしれない。私は輸血するまでではなかったけど、母子手帳には「多量」の記録がある。私の友人は輸血までしたらしい。どんなに健康でも、マイナートラブルがなかったとしても、出産は分からない。絶対に成功するなんて分からない。出産が終わっても母体は大きなダメージがあるから、絶対に安心なんてしちゃいけないのだなと感じた。

出産は怖いし、痛いし、不安ばかりだ。

でも、医師や助産師さん、看護師さんはサポートしてくれる。その人達も言葉をよく聞いて、何より自分の身体に耳を傾けて、無理をしないということが一番なのかな。

久しぶりに自分の出産を振り返って、生きててよかったなと思う。産婦人科の先生や助産師さん、看護師さん、本当にありがとうという気持ちでいっぱいだ。そして、自分にも「よく頑張ったね」と言いたい。

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