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在宅医が考える、努力と成果の関係を読み解く「四つの〇然」(在宅医療編)
はじめに
人生において、努力が必ずしも成果に直結するとは限りません。しかし、その関係性を理解することで、より良い選択ができ、納得のいく生き方へのヒントが得られるかもしれません。本稿では、努力と成果の量を基に表を作成し、それぞれに「〇然」という概念を付けて考察します。
これらの「〇然」は単なる言葉遊びではなく、在宅医療におけるさまざまな側面を映し出す鏡です。それぞれが私たちにどのようなメッセージを伝えているのかを探りながら、努力と成果の関係を深く掘り下げていきましょう。
努力 / 成果の表
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1. 「努力が少なく、成果が少ない」〇然とは
< 必然・当然 >
「努力なくして成功なし」(トーマス・アリバ・エジソン)
何も行動しなければ、何も起きません。これは、行動しなければ成果を期待できないという、当たり前の因果関係です。病気を克服したい、幸せに暮らしたいといった何らかの成果を得たいなら、まず行動を起こすことが必要です。在宅医療においても、適切なケアを受けるためには患者や家族の積極的な取り組みが欠かせません。
2. 「努力が少なく、成果が多い」〇然とは
< 偶然 >
「運によって得た成功は、しばしばその人を破滅させる」(セネカ)
時には、わずかな努力でも幸運が訪れ、思いがけず大きな成果を得ることがあります。しかし、これは一瞬の煌めきに過ぎず、長続きはしません。たとえ運に恵まれても、その場に甘んじず堅実であることが重要です。
医療のガイドラインが整備され、どこの病院でも標準的な医療が受けられる時代になったとはいえ、必ずしも自分に合った治療や医師に巡り会えるとは限りません。特に在宅医療では、明確なガイドラインが存在しないため、提供される医療の質は在宅医の器量や判断力、さらには連携する訪問看護やケアマネージャーの対応に大きく左右されます。まさに偶然という要素が大きく関与します。「どこでも同じ医療が受けられる」と安易に考えるのは避けるべきです。軽率に医療機関や介護事業所を選ぶと、結果として満足のいかない医療を受けることにもなりかねません。そのため、口コミを参考にしたり、信頼できるクリニックを自ら丁寧に調べて選ぶことをお勧めします。
3. 「努力が多く、成果が多い」〇然とは
< 蓋然(がいぜん) >・・・高い確率
「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるとしたら、それはまだ努力といえない。」(王貞治)
人は努力を重ねることで、自らの道を切り拓くことができます。ひたむきに取り組めば、その先には確かな成果が待っています。王貞治の言葉が示すように、報われるまで努力を続けることが真の努力です。すべての人はこの領域を信じて生きており、これを「意志」と呼んでいます。患者さんも、病気を克服するために強い意志や目的を持って生きています。
しかし、どれだけ努力しても、努力ではどうにもならない領域、つまり老いや死があることにも気づく時が来ます。その先に待つのは何でしょうか。次にその答えを示します。
4. 「努力が多くても、成果が少ない」〇然とは
< 自然 >
「無為自然」(老子)
どれほど努力しても、すべてが思い通りになるわけではありません。ここでは、意志の力でなく自然の力が圧倒的に支配しています。老子の「無為自然」とは、無理に何かを変えようとせず、自然の流れに従うことを意味します。人はできる限りのことを尽くした後、結果を受け入れ、無理に逆らわないことが大切です。
自然を花にたとえるならば、花はその時期に全力で咲き、誰かに評価されようがされまいが、やがて静かに散っていきます。自然とは見返りを求めず命を全うする純粋な生の姿です。「自然な最期を迎える」というのも同じです。どれだけ努力をしても、最終的にはすべてを受け入れ、自然の流れに身を任せる瞬間が訪れます。それは諦めではなく、自分の力では及ばない領域に対する深い理解と受容なのです。
努力 / 成果
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まとめ:自然の選択とは深い理解と知恵を伴う決断
最終的に、私たちが行き着くのは「自然」という選択です。それは、ただ受け身でいるのではなく、これまでの努力を尽くした末に、それでもなお流れを受け入れるための深い理解と知恵を伴った潔い決断です。自然とは、すべての努力の先に待つ、厳しくも美しい結末です。無為自然こそが、人生の究極の完成なのかもしれません。
在宅医療においても、患者さんと医療従事者がこの理解を持つことで、より良いケアと生活の質を追求する道が開かれるでしょう。