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価値観のショーウィンドウ

昨今は多様性の時代だ、なんてよく耳にする。
いくつもの異なる価値観は日々メディアやSNSに現れ、拡散される。

僕らはそれを目にして、イケてるものを選んでは、情報を摂取する。そして彼らの主張を支える理屈や、印象的なエピソードを入手し、自分の口からそれらしく語れるようになる。

世間のトレンドに沿って、価値観を着替えるのだ。
まるで、ショーウィンドウに惹かれて店に入り込み、さっさとそのブランドの服を見に纏うように。

界隈の有名人が語った”名言”は、そのブランドの看板商品のように流行し、多くの人の口やSNSで語られる。

“名言”は得てして短くまとめられていて本質をついたように聞こえるから、真似したくなるし、実際するのも簡単だ。

よく耳にする言葉は潜在意識に少しずつ刷り込まれ、誰の言葉かも忘れたころに、もともと自分の本心であったかのように馴染んでいく。

自分で考えたつもりのこの言葉も、誰かの受け売りの集合でしかないのだろうか。それを判定する方法も、さっぱりわからない。

……それが悪いことだとも思わないんだけれど、それじゃつまらないというか、なんとなく物足りなさを感じてしまう。

きっと大して意味もないが、自分語り好きのささやかな抵抗として、一から十まで誰かの受け売りはしたくないと思う。身の丈に合わせて仕立てたアイテムを着てやりたいと思う。

たとえそれが、無意識のうちに何かを真似た模造品だとしても

そのほつれや歪みにせめてものオリジナリティがあってくれと願いながら、今日もそれに着替えて我が物顔で街を歩いてやろう。

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