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ロングトレイルの歩き方ー歩く編 最終回(歩き方とマナーと怪我)

ロングトレイルの歩き方についてまとめ

ロングトレイルの歩き方ー準備編(パーミット、ビザ、保険、仕事を辞める前にすることなど)
ロングトレイルの歩き方ー装備編(ギア、ウエア、アクセサリーなど)
ロングトレイルの歩き方ー装備編(携帯回線と電子機器とカメラなど)
ロングトレイルの歩き方ー歩く編(自然、天気、動物、買い物と装備の買い方)
ロングトレイルの歩き方ー歩く編(ハイカー飯と文化)
ロングトレイルの歩き方ー歩く編(歩き方とマナーと怪我)
ロングトレイルの歩き方ー歩く編 最終回(歩き方とマナーと怪我)

これで一旦連載を終わる予定です。

前回の記事はこちら

今回は歩き方とマナーと怪我について。



歩き方

歩いて、食べて、寝る。だけ。

PCTは4200km続く

強いていうなら、一日何マイル何キロ歩けば期間内に到着できるのか。サボりすぎず、頑張りすぎないスケジュールをなんとなく予想して歩きましょう。
PCTの場合…
・4200km
・180日
・歩かない日(ゼロデイ)30日
4200km/(180-30日)=28km毎日

となるのでハードスケジュールです。
でも山火事があったり、怪我もしたり、色んな感情が湧いてくるでしょう。

でもそんなことも考えずガンガン歩こう。好きなことしよう。ポテチ食べよう。


トイレとゴミのマナー

日本ではウンチとオシッコを持ち歩くということが推奨されていますが、どこの山もトイレというのは暗黙の了解であまり触れられない話でもあります。
私は野糞派ですが、日本のアルプスのような高山地帯では土壌の栄養を吸収する細菌も少なかったりしますが、山小屋が多いから野糞をしなくても大丈夫だったりもします。
しかしアメリカには山小屋はほとんどありませんので野糞です。

PCTには野糞のルールが決まっていますし、このルールはどこでも通用すると思うので覚えましょう。パーミットを取ると勉強するかと思いますが気持ちよく歩くためにトイレは絶対に守ってほしいです。

蚊が多い時のトイレは大変だった…

PCTの野糞ルール
・15~ 20cm掘って埋める
・水、キャンプ、トレイルから 200 フィート(61m)離れる
・適切なウンチキットを持ち歩く
・ロックンロール方式はしない
・穴を掘ってシチューを作る
・木の棒を刺して目印を作る

・15~ 20cm掘って埋める
正直な話、トレイルの土は全て柔らかい訳でもありません。とんでもなく硬くて掘れ無いこともたくさん。でも15cm以上掘れるようにちょっと余裕を持ってトイレポイントを見つけてウンチをしましょう。
(何度かウンチをしてから掘りました)

・水、キャンプ、トレイルから 200 フィート(61m)離れる
水やトレイルの汚染を防止するために離れてしましょう。(でも間に合わない時も…)

・適切なウンチキットを持ち歩く
・トイレットペーパー
・ZIP LOCK 
・スコップ
だけです。これは絶対に持ち歩きましょう。
使い終わったトイレ紙も絶対に持ち歩きましょう。自然には分解されるまで途方もない時間がかかるので絶対。
臭いが気になる人はこのビニール袋を持ち歩けば最強。僕は4枚持って行きました。なかなか穴が開かないので臭いも通過し無いしおすすめ。

残念ながらPCTを歩いていると、残念ながらトイレ紙を見かけることがあります。埋めたりしていても動物が掘り起こすので持ち帰ること。

・ロックンロール方式はしない
要するに石を持ち上げて、できた穴に埋めること。PCTAで禁止されているのでやめましょう。

・穴を掘ってシチューを作る
木の棒でオシッコとウンチと土を混ぜて自然に戻りやすくしましょう。

・木の棒を刺して目印を作る
ウンチをして土を被した所にシチューを作った木の棒で目印をしておきましょう。ウンチのしやすいところは他のハイカーも見つける可能性が高いのでウンチを掘り起こさないようにするための目印です。


野宿

日本とは違って禁止エリアじゃなければどこでも野宿OKです。
正確にはトイレのルールと同じく、 200 フィート(61m)離れてキャンプをしましょう。
ちなみにフィートという単位は足の長さ=1フィートという身体ベースの単位です。なのでトレイル上でも大体の距離を計測できてルール通りにキャンプできます。
(でも自然相手なのでいつも最適なスポットがあるというわけじゃないです。たまにはルールを破ることもあります。)

オフトレイルを歩いて良さげなポイントで野宿したり、歴代のハイカーが構築したテントサイトっぽい広場も無数にありました。

ネズミや蟻の巣や水たまりなど無いように見定めてキャンプしましょう。
ネズミにテントを齧られて、穴を開けられたり、ヒアリが大量にテントへ入り込んだりもします。
さらにベアキャニスターを指定されているエリアでは必ずテントから離れた場所に食料を置きましょう。2022年は何人かのハイカーが襲われてしまったそうです。熊に襲われるとあらゆる装備が壊れるので金銭的なダメージも大きいです。

あと夜は騒ぎすぎないように…ハイカーは日が沈んだらすぐ寝ちゃうので怒られちゃいます。

ラッキーと板谷さんゴールまで歩くなんてこの時は思ってなかった

カーボーイキャンプも楽しいし、起きたらすぐに出発できて便利です。
乾燥して、虫が少ない地域では基本的にカーボーイキャンプをしていました。シエラでは氷点下となり霜がつくのでランチタイムにスリーピングを干していました。


焚き火

アメリカの大部分の範囲は乾燥しており、山火事が頻発しています。焚き火に憧れるのはよく分かりますが、なかなか火が消えないので水が入手しやすい場所でやりましょう。
あと新規の焚き火台は作らないようにしましょう。すでに大量にあるので作らなくてもいいです。

私は一度焚き火をして、4-6L水をかけても消えなくてかなり焦りました。

CAMP 4というクライマーの聖地でキャンプした時
双子ハイカーのリリィとビビィ


水が無くなると死にます。2022年のMojave砂漠はシアノバクテリア(藻類ブルーム)に汚染されて水が飲めない地域がありました。幸い他のトレイルエンジェルのウォーターキャッシュとハイカーと協力してナイトハイクを繰り返して歩いたので無事に歩けましたが、PCTで1番辛かったです。
湧き水を見て泣きました。

水はFarOutで計画をして持ち歩きましょう。
砂漠では常時6L
汚染された場所では12L(3日間)
シエラでは2L
北カリフォルニアでは3-4L
を持ち歩いていました。

水を切らさないように常に計画をしてください。
メキシコ国境から歩き始める場合は6Lは最初に持っておくと安心です。

ミューアパスの水は美味しかったな〜
水が無い。本当にどこにも無い。Mojave砂漠

他のルールとか

他にもルール等ありますが現地での情報収集を怠らずに、PCTの場合はPCTAに全て情報が掲載されています。

https://www.pcta.org/


怪我

1000kmも半年も歩くのですから怪我や体の不調はほとんどの人が体験するはずです。特に骨折以外はよく起こるのでエマージェンシーキットは必須です。

下記内容に対処するエマージェンシーキットについてはこちらの記事からどうぞ。しかし商品リンクに関しては重複してこちらにも掲載しています。

・足の水脹れ
・爪の剥がれ
・筋膜炎
・関節炎
・骨折
・切り傷
・その他
・虫刺され
・高山病
・日焼け

足の水脹れ

歩き始めて1ヶ月間ぐらいは永遠と思えるほどに足に水脹れが発生します。足の皮が厚ければいいかもしれませんが、足が鍛えられるまでは水脹れと付き合って対処をして行きます。
水脹れを放置すると大きくなり、破れて、炎症が起きます。もし発生したらなるべく早く対処をしたほうが楽です。
安全ピンで水を抜いて、皮をめくらずに絆創膏をしておきましょう。
もし破れたら軟膏を塗って絆創膏をして皮ができるまで頑張りましょう。

水ぶくれ防止テープをするとかなり効果的に防止できます。

爪の剥がれ

足をぶつけたり、歩きすぎて爪が変形したり、割れたり、剥がれたりします。自然に生え変わるまで放置が普通かと思います。
ペリペリして邪魔なのでいつも爪切りやペンチなどで剥がしていました。


筋膜炎・関節炎

毎日40kmぐらい歩くので筋肉の使いすぎで筋膜炎という炎症が起きます。筋膜炎は筋肉に激痛が走り、歩けなくなります。放置をすると腫れ上がりなかなか治りません。筋膜炎になったら即アイシングをして冷やしていきましょう。水で足を冷やしましょう。

歩き終わったら必ずマッサージボールで揉んであげると筋膜炎を軽減できます。でも1番大切なのはアイシングです。炎症が起きると新しい炎症も呼び起こすので即刻冷やしてあげましょう。

さらに筋膜炎にもテーピングをしてオーバーユースをしないようにしていました。


骨折

足を骨折したら長距離歩けないですし、治療費も高いので素直に日本へ帰りましょう。
大きな怪我で歩けなくなったら誰かに助けてもらうしかないです。GPSやホイッスルを持ち歩いて助けてもらいましょう。
トレッキングポールなどを添木にしてぶらぶらしないようにしとくといいと思います。



切り傷

血がたくさん出る場合はガムテープなどで止血しましょう。怪我をしたての時はとにかく痛くても血が止まれば大丈夫です。
止血用ガーゼがおすすめです。
切開場所が大きい場合は血が止まっても開く可能性が高いので、縫う必要があるので病院へいきましょう。
それかランボーみたいに頑張って縫ってください。でも感染症の危険があるので病院へ行って、滅菌された環境で処置して、抗生物質をもらった方がいいと思います。

小さな切り傷にはとりあえず抗生物質入りの軟膏で速攻で治しましょう。トレイルで膿んだら危険です。

虫刺され、毒草

海外には得体の知れない毒虫や草がたくさんあります。できれば長袖長ズボンを身につけるのがいいかと思いますが、できれば肌を出して歩きたいですよね。

私はヒアリに刺されて皮膚の一部が壊死してしまいました。ずっと血が出てストレスなのでポイズンリムーバーで即対処するといいと思います。

さらにハチやヌカカなどもいるので気をつけてください。
ヌカカや蚊だと刺された所に45度ぐらいのお湯をかけるとタンパク質が変質するので痒みが抑えられるのですが自己責任でやりましょう。
特にヌカカは腫れるのでお灸がおすすめです。

砂漠地帯や山火事あとにはプードルドックという毒草が生えています。綺麗な草ですが触らないように。
北上していくとポイズンオークという草も生えているそうなので気をつけて。


高山病

高山病は誰でもなりうると考えてください。体質や寝不足や疲れやメンタルなど様々な理由で悪化します。
私は2000mでも高山病になる体質なのでPCTの4000m越えの峠は高山病の薬「ダイアモックス」を服用して登りました。
内科や泌尿器科系の病院で処方箋を発行してくれるはずです。登山用途の場合は保険適用外となりますがアメリカで買うより安く買えます。
1500m付近から半錠を朝晩飲んで、3000m付近から朝晩に一錠飲んで登りました。途中から体が慣れたのかダイアモックスが無くても大丈夫な体になりました。

でも1番良い対処法は毎日よく食べてよく寝ることです。
これが1番効果の出る対処方法でした。

酸素レベルを計測することで自分の状態を把握できるので良いかもしれません。私も腕時計のinstinct 2 Dual Powerで計測をしていました。

日射病、熱中症、日焼け

カリフォルニアの日差しは焼けます。文字通り皮膚が焼けていく感じがします。暑いですが長袖とフードをかぶって、さらに日傘までして歩いていました。長袖と傘だけでかなり涼しくなるので熱中症対策におすすめ。日中も歩けるようになります。

温度も把握できるように温度計ももあるとおすすめ。


日に焼けると体力を消耗し、水脹れも発生します。さらに目もやられてしまい目ヤニが止まりません。
ジリジリとやられてしまうので気をつけてください。
でも私は日焼け止めが嫌いで全然使いませんでした。

メンタルヘルス

ロングトレイルにおいて、メンタルヘルスも重要な項目です。楽しく、モチベーションを保ちながら歩くことは何かと難しく、壁にぶち当たることもたくさんあります。特に、砂漠では水もなく、とにかく辛いです。景色も大して変わらないので、苦痛を感じることもあります。他のハイカーと協力したり、好きな音楽を聴いたり、ラジオを聴いたりして、メンタルを整えましょう。
歩くことにとらわれずに、ロングトレイルをやめてもいいと思います。とにかく、山から離れて遊ぶことも大切です。

バーニングマン的な砂漠の音楽フェス

私は足を怪我して歩くメンタルでもなかったので12日間音楽フェスティバルへ行ったりして遊んでいました。


まとめ

とりあえず歩けばいいかと思います。



Masaki Miyazaki
自転車で日本一周、アメリカ Pacific Crest Trail 4200km をスルーハイク、宮源酒店、MIYAGEN Trail Engineering、元アウトドアメーカーのエンジニア、デザイナー、PREDUCTSエンジニア
Instagram:https://www.instagram.com/miyachi0730/
Twitter:https://twitter.com/miyachi0730
MIYAGEN Trail Engineering
WEB:https://www.miyagen.com/
Instagram:https://www.instagram.com/miyagen_corp/

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miyachi /ミヤザキマサキ
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