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著書『秒で伝わる文章』から「製品・サービスや企業のネーミング」について書いた部分を無料公開!

私の初めての著書『秒で伝わる文章術』が、4月11日に発売されました!

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今回は、ビジネスでも非常に重要な「製品・サービスや企業のネーミング」について書いた部分を、無料で公開します。

どんなに優れたプロダクトを開発しても、ネーミングが悪いと、そのプロダクトは世の中に受け入れられないのではないかと、私は思っています。

このnoteを読んで内容に興味を持ったら、ぜひ『秒で伝わる文章術』を手に取ってみてください!

それでは早速お楽しみください!

たった4文字で売り上げ10倍

ビジネスにかかわる言葉の中で、最も重要なものの1つが、商品や企業のネーミングです。爆発的にヒットするような商品や、圧倒的に成長する企業は、確実に読み手ファーストの視点でネーミングが考えられています。

たとえば、こちらの商品です。

https://www.cosme.net/feature/201802_nipponpjt_legend08_hanaceleb_02より引用

 この商品をご存じでしょうか? おそらく、知っている人は多くないと思います。これは、ネピアの「モイスチャーティシュ」という商品です。実は、この商品は、もう世の中に存在しません。正確に言うと、別の名前で生まれ変わったのです。

それがこちら。

https://www.cosme.net/feature/201802_nipponpjt_legend08_hanaceleb_02より引用

そうです、ネピアの「鼻セレブ」です。この「鼻セレブ」という商品は、もともと「モイスチャーティシュ」として販売されていた商品の、ネーミングを変更したものだったのです。そして、商品名を変えたことにより、その売り上げは10倍になったそう です。

なぜここまで劇的に売り上げがアップしたのでしょうか? 読み手ファーストなネーミングの観点で言うと、その理由として次の3つが考えられます。

① たった4文字という短さ
② 漢字とカタカナの組み合わせによる字面の良さ
③ 語呂の良さ

① たった4文字という短さ

第2章の「短いは正義」(40ページ)で書いた通り、爆発的に情報が増えた現代において、短さこそ強さです。その点で、「鼻セレブ」はたったの4文字。改名前の「モイスチャーティシュ」の10文字に比べると、半分以下になっています。

商品名の短さは、覚えやすさに直結します。短く覚えやすい商品名にすることで、爆発的なヒットにつながったのです。

② 漢字とカタカナの組み合わせによる字面の良さ

2つ目は、字面の良さです。こちらは第3章の「文章も見た目が9割」に当てはまります。

改名前の「モイスチャーティシュ」はすべてカタカナで構成されていて、どこか引っかかりのない平坦な印象を受けると思います。しかし、「鼻」という漢字と、「セレブ」というカタカナを組み合わせたネーミングによって、かなり視認性が良くなっていることがわかると思います。

字面としても非常に良いので、パッケージデザインでも大きくレイアウトされています。「モイスチャーティシュ」のパッケージでは商品名を探すのが難しいほど小さく入っている程度なので、いかにネーミングが大きな役割を話しているかがわかると思います。

また、「鼻セレブ」のように、実は、ネーミングでは、ひらがな・カタカナ・漢字に加えて、アルファベットや数字も使うことができますが、それを組み合わせると、記憶に残りやすいネーミングになることがあります。

その最も象徴的な事例が、アイドルグループの名前です。アイドルグループの名前というと、多くの人が「AKB48」「乃木坂 46」「モーニング娘。」あたりを思い浮かべる人が多いと思いますが、ご覧の通り、どれもアルファベットと数字、漢字と数字、カタカナと漢字(と句点)という、複数の要素の組み合わせで構成されていることがわかります。

モーニング娘。もAKB48も、初めて聞いたときは、かなり違和感があったと思います。しかし、世の中に定着した今となっては、その違和感は完全に消えています。最初は違和感があるとわかっていても、それこそが個性になると理解して、このネーミングを採用するところが、秋元康さんやつんく♂さんのすごいところなのだと思います。

③ 語呂の良さ

3つ目は、語呂の良さです。第3章で「文章はリズムが命」と書きました(96ページ)が、口に出す機会が多いネーミングにおいては、より「音の良さ」が重視されます。「鼻セレブ」という言葉は非常に語呂が良く、どこか口に出したくなるような気持ち良さがあります。

前述の『ファスト&スロー』では、ダニエル・カーネマンは「発音しやすい言葉も好感度が高い」と書いています。人間の脳のメカニズムから考えても、語呂の良いネーミングは、多くの人に愛される可能性が高いのです。

100案の中から選ばれた「鼻セレブ」

以上の3点が、私が考える「鼻セレブ」が優れたネーミングである理由です。そしてもう1つ重要なのが、このネーミングに至るまでに、企画会議で100案もの候補があったという点です。のちほど「思考力より思考量」という言葉について書きますが、優れたアイデアを生み出すためには、圧倒的な「考えた量」が必要なのです。

世界最高の社名

商品名と同様に、企業の成長を考える上で非常に重要なのが、社名です。

私は何かを考えるとき、まずは成功事例を探し、その成功要因を探るところから始めます。成功している企業が採用している手法は、それを覆すほどの論理的な理由がない限り、そのまま踏襲するのが成功への近道だからです。

2022年1月現在、世界で最も成功している企業を、世界時価総額ランキングNo.1の企業とした場合、その企業はApple となります。つまり、Apple という社名は、現時点で世界最高の社名といえます。

Apple という社名から私が学んだことは、誰でも知っている言葉を社名にする重要性です。Apple という言葉は、英語圏の人であれば、物心ついたときにはすでに覚えている単語だと思います。それどころか、日本人である私たちでさえ、ほぼすべての人 がApple がリンゴであることを知っています。こうした誰でも知っている言葉を社名にすることで、「社名を覚える」という行為における脳のリソースを、限りなくゼロに近づけているのです。

このことは、マーケティングのコストにも大きくかかわってきます。基本的には、伝えたいことが難解であればあるほど、それだけ時間とお金がかかります。世界史の授業で出てくる「マルクス・アウレリウス・アントニヌス」(2世紀後半のローマ皇帝)をなかなか暗記できないように、複雑な社名や商品を覚えてもらうためには、それだけ多額の費用を捻出してCMをたくさん打たなければならないのです。

そしてこのことは、何もApple に限った話ではありません。たとえば、時価総額ランキング5位のAmazon も、誰でも知っている言葉を社名にしています。さらに、Microsoft(時価総額ランキング2位)とFacebook(時価総額ランキング7位、現在は「Meta」に社名変更)も、誰でも知っている単語を組み合わせた社名になっています。

このように、世界で圧倒的に成功している企業は、どれも読みやすくわかりやすい社名になっているのです。このことは、爆発的に情報が増加したデジタル時代であることと、無関係ではないと思っています。

初見で読めない名前は絶対ダメ

私が日々新しく生まれる商品名、サービス名、社名を見ていて思うのは、とにかく初見で読めない名前が多いということです。「名前が読めない」ということは、それだけでビジネスとして圧倒的に不利です。読めない名前をわざわざ調べるほど、読み手に時間はありません。そんなことをしている暇があれば、Netflix の韓国ドラマを消化したいし、友だちのTikTok に「いいね」したいのです。

新規性やオリジナリティを求めるあまり、まるで読めない商品名サービス名をつける企業は本当に多いです。もちろん、商品名やサービス名には、企業や開発者の強い想いがこめられています。しかし、それが初見で読めないということは、重い足枷を引き摺りながら歩いているような状態であるということを、ぜひ認識していただければと思います。

Paidyからペイディへ

「初見で読めない名前は絶対ダメ」と言いながら、実は、私が所属する企業「Paidy」でも、この「サービス名が読めない」という課題を抱えていました。「Paidy」は造語なので、初見で読むのが難しく、アルファベットで表記すると「ペイディ」ではなく「ペイデイ」などと読み間違えられることが多かったのです。

そこで、私が入社する少し前ぐらいから、サービス名に関してはカタカナの「ペイディ」を正式な表記として採用することになりました。アルファベットからカタカナに表記を変えることで、誰でも初見で読めるようにしたのです。その後、私がコピーライターとして入社して以降、より厳密に「Paidy」から「ペイディ」への移行を進めたことで、現在ではSNS 上などでも「ペイディ」と表記されることが多くなってきました。

こうした活動は、しっかりと成果が出ていて、Google トレンドで「ペイディ」と「Paidy」で比較すると、2021年5月ごろから、きれいに「ペイディ」が伸びていることがわかります。

こうしたことは、当然ネーミングを決める前に考慮しておくに越したことはないですが、実際世に出たあとでも、「ちょっとした工夫で読み手ファーストなサービス名になる」という良い事例の1つなのではないかと思います。

「#」をつけてハッシュタグにしてみる

SNS でのコミュニケーションが重要視される現代において、ネーミングやタイトルを考える際に非常に有効なのが、「#」をつけてハッシュタグにしてみる、という手法です。

たとえば、「読み手ファースト」に「#」をつけて「# 読み手ファースト」とするだけで、「SNS 上でこの言葉がどのように流通するか」を、かなり具体的にイメージすることができます。

たったこれだけで、「ちょっと長すぎるな」とか、「ひらがなばかりで読みにくいな」とか、「なんとなくしっくりこないな」みたいな違和感に気づくことができるのです。

本当に「#」をつけるだけで、その言葉の見え方がまるで変わります。新しい言葉を考えたり、気になる言葉を見つけたら、ぜひ試してみてください。

以上が『秒で伝わる文章術』の「「製品・サービスや企業のネーミング」について書いた部分です。最後までお読みいただき、ありがとうございました!少しでも興味を持っていただけたのなら、ぜひ購入をお願いします…!

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