偏差値30の医道③
僕の最初のデビュー戦は惨憺たる結果だった。
会場に行く。試験開始時間になる。受験生が横一列に並び、問題文を開いたところで、試験が始まる。僕の身体は試験問題の戦場へダイブする。
僕の周りの戦場から激しい戦闘音が聞こえる。緊張。僕の顔面に敵の攻撃がクリーンヒットしていく、ただひたすらにノーガードで受け続ける。逆転の糸口が見えないまま、試験終了のブザーが鳴る。
それを一日中繰り返す。
相手の隙が見えないのは純粋に僕の訓練が足りないからである。試験問題を解くには、一見難解に見える敵の鎧を剥がし弱点をつく必要がある。一般的に医学部受験生と言うものは一年に一度しかない受験と言う戦場で勝ち抜くために、5ー10校の大学を受験する。僕は、その受験票の数だけ何もできない悔しさを味わっていた。いや、自分の前にある課題の大きさを測れない僕は、それでもどこかに合格するだろうと、その時点でまだ思っていた。
初めての大学受験は、負けたこともわからないくらい大敗北を喫したのだった。