数学が、できない。
「数学の1教科さえあればどれだけ差がついてても逆転できる」
これは、僕が高校1年生の時に毎回テストの点数で勝負をしていた友達から言われた言葉だ。
当時、9科目ほどあった試験。
他の科目でどれだけ自分が勝っていても、数学のテストを返された瞬間に、合計点で負けてしまうのが常だった。
僕はほとんど、10点台。
周りの人たちは80点とか、90点とか。
思い返せば、中学1年生の時の
「マイナスとマイナスでプラスになる」
という言葉を聞いた時から、頭の中はハテナの嵐。
そして中学2年生の「√」でズタボロにされ、
中学3年生の「虚数」の登場で、僕の豆腐メンタルは粉々になったのを鮮明に覚えている。
勉強をしなかったわけじゃあなかった。
自分で言うのもアレだけど、悔しいからどの科目よりも勉強をした。毎回、毎回。
それでも返ってくるテストの点数はいつも平均の半分にも行かず、決まって"落ちこぼれ"だった。
もう、「こうなったら意地でも点を取るぞ」と躍起になり、問題集の問題と回答を全て覚えた。
そして迎えたテスト当日。
問題文の数字を変えて出題された。
ペンは進まず、まったく解けなかった。
悪あがきとして、答えを覚えていた"問題集に載っていた式"を丸々書き殴った。
その努力は実らずに、大きなバツ印が返ってきた。
もちろん赤点だった。
周りからも「なんでできないんだろうね…」と不思議がられ、最終的には「なんか可哀想なやつというポジション」になっていく。
もはや居心地の良さを感じ始める始末。
数学担当の先生からも「なんで君はここまでできないんだろうな…」と同情を受ける。
ごめんよ、自分でもわからんのだよ、先生。
肝心の成績は「1」がベースで、たまに「2」を入れてくれる優しさ。
おかげでなんとか卒業できたんだと思う。
と、こんな具合で「数学」がまるっきしできなかった僕だったが、なんと物理はクラスでも上位に入っていた。
何故ならば、テストに問題集の問題が"そのままの数字で出る"から。
暗記したものをそのまま書けば良かったので、点数は取れた。
テストの傾向が変わり、数字が変えられた瞬間にできなくなった。
当時の自分は、「どうせできないだろうな」と半ば諦めながら、勉強をしていた。
それは、勉強しなくて点数が取れないのは、なんか格好悪い気がしたから。
「勉強してなかったからさ」と、言い訳になってしまうから。
言い訳をしないために、結果が見えている勉強をしていることが、高校生の自分にとっては"当たり前"だったんだと思う。
どうやったらできるようになるか?
なんて考える余裕なんてなかった。
だって「自分はできない」と思い込んでいるから。
「頑張ってみなよ」
「いやいや、頑張ってるんだってば」
「いつかできるようになるよ」
「いやいや、ずっとできないんだってば」
「このやり方でやってみなよ」
「ありがとう、でもできなかったんよ」
そんな経験を何年も何年も繰り返していると、感覚が麻痺してくる。
目標を立てようにも、成功体験が全くないからビジョンの持ちようがなかった。
当時の自分は、数学は勉強しつつも、心のどこかでは諦めていたんだと思う。
だから伸びなかったんだろうな。
自分を信じられなかったら伸びようもないもんな。
と、20代後半に差し掛かった今だからこそ
冷静に振り返ることができているだけで、
その当時は「なんでできないんだろうな」としか思えなかった。
けど、唯一ポジティブだったのは
「数学で80点の差が出るなら、他の8教科で10点ずつ上回れば、その人たちと同じ土俵に立てる。」
と、自分の中である意味での"弱みに対する許容"と
"違う方向への切り替え"を同時にしていたことだったと思う。
それから5年余。
新卒で就活をしていたときのこと。
入社を決めた会社の最終面接でこんな質問をされた。
「これまでの選考を見てきて、あなたの弱みは○○だと思っている。ここに対して、あなたはどう向き合いますか?」
自分の回答は決まっていた。
「弱みは弱みだと受け入れて付き合っていきたい。」
「強みもあって、弱みもある。それが自分なんだと思う。」
「弱みを改善することも大事なので取り組むが、完璧にはなれないと思うので、自分の強みを活かすことにも同時に注力したい。」
またそれから5年余。
社会に出てから数年経った今振り返ってみると
この時の回答は『数学』という圧倒的弱みとの向き合い方と似てるな、と思う。
苦手や不得意は、克服できるように頑張る。
けれど、頑張って、頑張って、それでも無理なこともある。
「諦めたらそこで試合終了」
という言葉がある。
その通り。だけれども、
「無理ならいったん諦めて、攻め方を変えてそのまま試合を続ければいい。最終的にいつか勝てばいい。」
が僕の考え方だった。
だが、20代後半になった今。
未だ『数学』に勝てていないと思う。
なんて手強いのか。試合は終わる気配がない。
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