『愛の嵐』 / 山口百恵(昭和歌謡曲)
【歌ってみた語ってみた】『愛の嵐』 /山口百恵(昭和歌謡曲)
母は歌謡曲が好きで、特に山口百恵がお気に入りだった。共にたくさんの百恵を聞いたけれど、私はこの2曲を推したい。『曼珠沙華』そして『愛の嵐』である。
この曲は、女の辛く苦しい嫉妬を力強く歌っている。
♪ 炎と~書いて~ ジェラ~シィ~♬
さて、ここでまた小噺をひとつ。日本を代表する古典文学・源氏物語の中にある『愛の嵐』を語ってみよう。
源氏物語とは、恋における男の栄光と衰退をも描いた作品である。養母に恋い焦がれるあまり、光の君はわずか10歳の養母の姪を引き取り、自分好みの女に育て上げてしまう。
この姪は見事に花開き、光の君に一番愛された女性として名を轟かせる。しかしそんな女性でも『嫉妬』の苦しみから逃れることは出来なかった…!!
♪ その人は幻~ 薄紅のドレス着てぇ~♬
『愛の嵐』の出だしにもある衣装の記述。源氏物語の中で正月に新しい衣装を贈るシーンが登場するのだが、これがとても面白い。紫の上と明石の御方は、2人とも源氏物語のヒロインである。
紫の上は「妻たちに選ぶ衣装は、ど~れ?」と夫・光の君に尋ねてみる。(「玉鬘」の巻・衣配り)
すると「君には、流行りの紅梅×ぶどう色の着物だね!」と夫。自分に贈る衣装は、最も高級品。一の妻に対する神対応。
「じゃあ、あの明石の人には?」
重婚の許された時代のこと。つい聞いてしまう彼女の心中を察す。
「異国風の純白と紫かな。高貴なあの人らしいよ♬」
Σ( ̄ロ ̄lll) 高額ッ
♪ 二人で~こぉしてぇ~ 一緒にぃ~居るのにぃ~♬
ジェラシー・ストーム、『愛の嵐』が吹き荒れた瞬間である。
紫の上は、財力・権力・地位・美貌4拍子揃う光の君 に誰よりも愛された女性だが、2人の間に子どもは授からなかった。
♪ あな~たが~どこ~かへ~行って、し・ま・い・そうっ♬
平安時代でも、嫉妬というのは辛く苦しく、、明石の御方は光の君の子を産んでいる。そして月日は流れ、紫の上も中年に差し掛かる頃。この夫は、自分より身分高くとんでもなく若い女を正妻にしてしまったのだ。
紫の上は、出家したい!と、この男と決別したい意思を示す。しかし認められない。女好きで浮ついたこの男の愛だけを頼りに、一生を終えることとなってしまった。今なら確実に才華を発揮できる女性だろうに。
バブル期には、3高という言葉が流行した。結婚相手に求める条件を示すものである。
高学歴、高収入、高身長。
これが時代と共に変化し、氷河期世代の求める条件はこの3平・4低がくる。現在は3生が望まれているらしい。
3平:平均的な収入、平凡な容姿、平穏な性格。
4低:低姿勢、低依存、低リスク、低燃費。
3生:生存力、生活力、生産力。
現代を生きる私は、離婚歴アリ・子育てを終えた独身の身である。やむなく無職の身の上となった今、揺らぐこともあるけれど‥ 相手は光の君とだいぶ異なるが明石の御方のように娘を育てきった。
身軽な身の上で、男に養ってもらおうなんて気持ちはさらさらない(笑)。男性に頼るより、才能を磨いて自分で稼ぎたい気持ちが強い。当然のこと、嫉妬させるような男を選んだりはしない。
♪ 紫のぉ~煙~ 一息吐いぃ~てぇ~♬
自分で言うのもおこがましい気もするが、この生き方こそ紫の上の羨望と嫉妬ではないか。彼女はこの明石の御方の子を養女とし、嫁入りまでの間、手元で育て上げている。
♪ 私はよぉ~やく~夢かぁ~ら~醒め~る♬
女性の自立・独立が進めば、ますます少子化になるだろう。子は産めるなら産むべき。しかし私としては、昨今の「共働きが基本!当然!当たり前!」とする今時らしい男性の態度も気に入らない。嫉妬はするより、させるもの。苦労もしたけどこうして私は生きてきた。
♪ 心の貧しい女だわぁ~アンアン、あ・た・し♬
そう言わせない世の中を!女性にはいつも豊かな心で居て欲しい。
若いなら男を上手く操るくらいのモテ!
そして、盛りを過ぎたら自分を持て!
紫の上を含めたすべての女性に、この歌を送りたい。