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昨年の部門別新人研修を今更振り返って顧みる
かなり長期間書かず(公開せず)じまいとなっていました。
このところアウトプットというと、ほぼほぼ飲食したものをInstagramにポストすることしかしていなかったので、昨年の部門内新人研修で取り組んできたことを私なりに整理して、考えたこと、感じたこと、思ったことを整理していこうと思いました。
何をしたか?(なんでおまえが新人研修?)
例年、弊社では100人以上もの新入社員が4月に入社します。
新入社員は、まず全体研修として(…とはいえ、近年は大体がリモートでの実施となっているようですが、)会社組織としての社会人としてのマナーやセキュリティ・コンプライアンスの知識の習得と、技術的な部分の全体研修を三か月間実施した後、各事業部ごとに分かれていきます。
部署に配属後は、たとえばプロジェクトチームに参画し、実務を通じてOJTからマンツーマンでの指導を受けていくのか、あるいは事業部内の共通の研修があるのかは事業部ことによって異なります。
私の所属している事業部は、技術的な共通要素であるプログラミング言語を通じて論理(少し前に「プログラミング的思考」などと言われた部分)や設計の簡単な部分を学び、その成果を発表する(プレゼンテーション)を二か月ほど実施し、その後各部・各課に配属される流れとなっています。
理由としては私たちが所属する部・課の所属メンバは自社業務と客先常駐業務が半々となっており、実際に新人のOJTに任命された人が客先常駐業務にあたり「配属されました、それでは…」としにくい状況もあったり、配属先によっては、弊社拠点やお客様の拠点近隣じぇの引っ越しの準備などもあったりするため、配属された新人同士のコミュニケーションや部課長との顔合わせの意味合いも兼ね、一か月間は部全体で「簡単な開発演習を通じて部としてやっていることの概要説明と実践的な部分」とOJTとのコミュニケーションの機会を作り「実際にどのようなことを行っているのか?」や「本年度の育成プランを作成して(トレーナー・トレーニー間だけではなく、各管理職層とも)共有する」といった情報のインプット期間を設けています。
私はその九月以降の一か月間に実施する研修のサポートを行っていて、具体的には課題設定と準備、研修期間中の運営を行っていました。
なんか聞こえはいい感じですが「ちょうど担当していたプロジェクトが終結し、次の案件のヒアリングと見積もりや新規事業拡大ネタ作り・調査といった業務となるため、その中でうまいこと新人研修のカリキュラム作成もしといて。ほかにする人もいないし。」くらいの感覚で着手したというところが現実です。
着手し始めた途端に(今までもうわさにはあったものの、一向に動く気配のなかった)大阪への長期出張が決まったりするわけですが…。
もっとも、例年のことですし、私がもともと「先発隊で投入されることを良し」としているため「またか」という感じですが。
どんなことをしたのか?
背景説明
本題に入る前に「なんでそんな超短期な部門別研修をするようになったのか?」という背景というか、おかれている状況を説明する必要があると考えています。
そもそも、我々…(というか少なくとも私は)ITエンジニアを名乗りながら、そのお客様や現場の大半は装置関連、自動車関連、工場といったところが多く、いわゆる組み込み系、車載系(時々メディカル)のシステム開発が主軸です。
ですから、今どき(?)のITエンジニア像からすると、少々毛色が異なるものにりなます。
おそらく、大半の新人は「車載はともかく、組み込みって何だよ?」って感じると思います。
組み込みエンジニアとは、マイコンが内蔵された機械…すなわち「機械に”組み込まれた”マイコンのロジック(ソフトウェア)を設計・実装するエンジニア」になります。
最近は家電を筆頭にマイコンが内蔵されてない機械の方が珍しくなっていると思います。その装置に組み込まれたマイコンのソフトを開発している人は大体「組み込みエンジニア」だったりします。
例えば…
・(生産しただけキャリアが買ってくれる)携帯電話(ガラケー)が売れるとあれば「ガラケー開発」へ…
・時代がスマホにシフトすれば「スマホ開発」へ…
・自動車のエンジンや変速機や操舵やブレーキといった制御がどんどん電子化され運転支援機能が増加したり、商品性向上の名のものとに、ナビゲーションシステムやハイブリットシステムの導入の中からエンジンとモーターの協調制御が組み入れられたり、カメラやレーダーといった新たなセンサデバイスが組み込まれることで、クルーズコントロール機能の向上(ACC:アダプティブ・クルーズコントロール)や踏み間違い、衝突軽減、事故防止といった先進安全機能の追加など、制御の課題増加および高度化により人手不足になれば「車載」へ…
そんな変遷を辿った「組み込みエンジニア」は多いと思います。
ガラケーとかスマホとか聞くと「アプリ開発者?」と思われる方もいるかと思いますが、それよりももっとプリミティブ…というか、ハードよりの制御の開発に従事する(どちらかというと地味な)エンジニアといったイメージです。
そんな「組み込みエンジニア」ですが、近年はIoTやAI等により「エッジコンピューティング」「エッジAI」という言葉も出てくるようになり、小難しい技術も流入するようになりました。
ざっくりしたイメージで言えば、昔のお店のレジ端末は無駄にでかい電卓で、豪華になるとバーコードリーダーがついて、チェーン店におかれたものになるとネット(サーバー)に接続できる程度のものでしたが、最近はRFIDタグが値札についていて、商品が入ったカゴをそのまま指定の場所に置くと、無線でタグの情報を読み取って合計金額が出たり、学食や社員食堂で食器を画像認識で清算したりするものもあります。
また、その清算方法も食券などによる現金決済、給料天引きといったものから電子マネーやQR決済などに対応し、多様化するようになりました。
近年の組み込みのエンジニアはそういった進化の流れの中にポジションを置いていたりしています。
課題説明
閑話休題。
当初の目的である、簡単な開発を通じて組み込みシステムとマイコン制御に触れてもらうということで、もともとデモ展示用に存在していたセンサをつけて自動走行するラジコンカーを使用して、センサ制御、走行制御を通してソフトウェア開発を行ってもらうという課題設定をしました。
元々のデモ展示ではラジコンカーに搭載したセンサでコースに沿って走ったり、前方の障害物を検出して停止するというものでした。
ただ、センサの取り扱いや走行の制御がセンサ制御や制御開発の経験がない(どころか文系からエンジニア職を希望している人もかなり多い)新人にはかなり負荷が高いため、センサの中でも扱いが簡単な超音波センサを使用し、簡単な障害物検知ロジック実装例を提供。それをベースに欠けている機能と性能のチューニングを新人に検討してもらい、実装し、走行してフィードバックのループを重ねて、争ってもらおうという企画にしました。
要件(というか競技規則)といては以下の通りです。
①超音波センサを横と上に取り付けたラジコンカーを真円のコース上を周回してもらう。
②コース周回数は3周以上、周回数は新人で協議の上で決定する。
③コースにはトンネルが存在しており、規定周回走行した後のトンネル通過を検知して停止するまでの時間を争う。
期間中に実施したこと
1か月を週ごとの4つのフェーズに分け、週ごとに以下のことを実施していきました。
1週目
開発ツールのインストールと利用方法、ベースとなるコード中のロジックとパラメータ変更、変更したコードのビルド(マイコンが利用可能な状態に変換する)、ダウンロード(マイコンに書き込む)、ラジコンカーの走行を提供した手順書に沿って習得してもらう。
2週目
センサの使い方を穴埋め形式にした手順書ベースを提供し、どのように利用するか?それをマイコン上で使えるようにするにはどうしたらよいか?を検討してもらう。
検討したものから実際に設計・実装を実施してもらう。
実施した成果物をOJTに説明(レビュー)してもらう。
なお、OJTには参考資料を提供し、新人に対して不明点や相談事について積極的にコミュニケーションをとってもらうよう伝える。
3週目
2週目の状態でコースは走れるようになるので、よりスムースにインコースで走行できるよう、パラメータと走行制御の見直しや、規定周回後のトンネル通過後の停車を検討してもらい、実践してもらう。
4週目
3週目の作業を継続し、新人間で実際作った制御で競争してもらう。
並行して自らが検討・実装した制御の狙いと工夫、結果どうだったかを自分なりに纏めてもらい、簡単に発表してもらう。
競走した結果、上手くいったのか、上手くいかなかった場合はどこが狙いと違ったのか?新人と可能であればOJTで集まり発表・ディスカッションを行う。
コミュニケーションの場の提供のための取り組み
加えて、以下のようなことも実施しました。
毎日朝会を行い、連絡事項とともに各新人の昨日の成果、本日の予定、困りごとを確認する。
朝会のファシリテーターはOJTとサポートメンバで基本的に対面集合形式で実施するが、サポート役の私が長期出張中で遠隔地での作業となってしまったため、週に1度は必ずリモート会議形式で実施。
終業時には日報を書いて提出。(日報のフォーマットのベースは提供するが、各自OJTとも相談し内容の充実を図ってもらう)
新人の業務スペースと、OJTやサポートメンバの居室が離れていることが多いため、新人教育用の情報共有・雑談チャネルをTeams上に作成し、細かいことはどんどんチャットに書き残してもらうように伝えた。
所謂「LINEでやれよ」的なものでもオフィシャルで提供することにより、先輩・上司のギャップを出来る限り低減させるという仕組みの提供しました。
そういったもので、チャットの課題や困りごとを共有し、それをきっかけに対面の場を作り出したり、簡単なリアクションだけでもしてあげたりすることで、どんなに規模の小さいコミュニケーションでもいいので数を増やす機会を作り出たいという意図です。
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実施してみて…
感じたこと、実際に新人にアンケートやインタビューした結果を列挙します。
チャットベースで質問で、緊急性の無いちょっとした課題、疑問は気軽に問い合わせることが出来たと感じていた。
他方、緊急性の高い課題や疑問に対しての反応に少々不安を抱いた。
朝会などを通じて新人の間でコミュニケーションをとる機会が充実した。
また、OJT、サポートメンバとも朝会を通じてコミュニケーションのギャップの低減を感じていた。
一方で、そういう機会がないメンバとのコミュニケーションは希薄なものとなり、物足りなさを感じた。
管理職層が意外と積極的かつカジュアルに声をかけてくれたことが新人にとって好印象と感じていた。
手順書を読みすぎる傾向があった。
このため後半の「自身で検討・設計する」という課題でどうしたらよいか?となり、どう質問していいかがわからなくなってしまった。
いわゆる”報連相”を実施する状況下で、言いたい事はあるのだが頭の中で整理されておらず、自分の思いだけを語ってしまい、背景情報が欠落していたり「結果、知りたいことは何か?」が曖昧なことが発生したりした。
私としては上司との打ち合わせを通じて、以下の狙いをもとに今回の取り組みへの準備をしていました。
コミュニケーションを積極的にとるための仕掛けを提供し、率先して実践して見せること。
そのコミュニケーションというものは一体何なのか?を考える機会を提供すること。
コミュニケーションでも業務でも今のうちに失敗を重ねて振り返りや気付きを得る機会を提供すること。
結果として、多少の不備・課題はあったものの、概ね狙い通りに運営できたのかな?とは思っています。
私なりに考えてみたこと
フィードバックの結果から、想像していた以上に新人が先輩メンバとのコミュニケーションを欲していたこと、管理職層が新人に対して気を遣っていることが印象的でした。
確かに、現場に駆り出されるメンバはやりたい・やるべき事は沢山あるが時間もお金もないという状況ゆえ、それ以外のいわゆる「緊急ではないが、重要なこと」がおろそかになりがちという状況で、そのケアをしてもらっている状況がありました。
たとえば緊急性が高まってきたが、なかなか反応が鈍いようなケースが何件かあり、技術的な質問を「近くにいたという理由だけ」で部長に質問しにいくというエピソードを先輩メンバが聞いて驚いたなんていうエピソードが生まれた利する状況でした。
業務優先なのはある意味では仕方がないことなのですが、一方で「会社員」という今までとは異なる環境に身を置いて、日がそれほど経っていない人間が「気に掛けて貰えていない」と感じてしまうのはあまりに不幸に私は考えています。
ですから、課会で無理矢理にも全員に自己紹介させるコト以外のコミュニケーションの「ゼロをイチにする」機会を提供することが必要だと、今回改めてて実感しました。
ただ、その新人も1年半経過して、上司やお客様と臆せずコミュニケーションをとる姿を見ていると、方向性としてもやってきたこともそこまで間違ってなかったのかな?とは感じつつあります。
…で?
今年は今年でまた上司と昨年の成果と反省点を踏まえ、新人教育を実施しています。
今回は少し変わったものを…ということで、社内技術発表会的なイベントの中での展示に使用されるツールを配属された新人にお任せするという課題で実践しています。
ただ、OJTの中にも得手・不得手な技術領域があり、専門外の分野は特に明確にゴール像やそこに至るアプローチが想像できない状況が発生しています。実際に私も「…大体こんな感じでしょ?出来んじゃないですかね?技術的には…」と言いながら、家に帰って頭抱えているようなことを社会人になって延々とやってきているような気がします。
そんな「雑な業務依頼」が私に依頼された場合、私が困ればいいだけの話で、それが私の存在意義とすら思っているので、私が苦しめばいいのですが、新人やその指導メンバがそれに巻き込まれるのはちょっとな…とは思いました。
そのような事態をなるべく少なくするよう、今までの知見や新たな自らの技術習得の情報整理と情報発信を今後やっていけたらいいかな?と最近は考えています。
専門外や未知の領域に対してどういったアプローチしていくか?そしてそれをどう周囲に伝えていくか?今後はそのあたりに少し力点を置き、またアウトプットの機会を増やせたら…と最近は考えています。
そしてそのアウトプットの一部をここに残せたらいいかな?と考えています。
…あまりにもInstagramにアウトプットの機会を求めすぎてインプット(食事やお酒が)過多になりつつあるので…
今回考えたところはそんな感じです。