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金魚の難病 松かさ病について

金魚の病気「松かさ病」はこれまで原因不明の難病とされており、発症したらほぼ助からないと言われてきました。

私は数年前、ある治療法を考え出し松かさ病を完治させた事があります。その当時に分かった事、そしてその後の経験によりさらに分かった事をここにまとめたいと思います。

松かさ病

まず、松かさ病について、松かさ病はその名の通り魚の鱗が松ぼっくりのように開く病気です。原因は主にエロモナス ハイドロフィラという細菌の感染によって起こると言われています。
発症すると鱗が開き身体が少しずつ膨らみ始めます。進行すると目が飛び出し、転覆病も併発し底に沈みます。長くて数ヶ月その間も少しずつ膨らみ続け、最終的に死に至ります。薬での治療もなかなか結果の出ないとても治療の困難な病気です。

松かさ病の考察

松かさ病の観察、そして様々な治療法とその有効性などを踏まえて以下のような考えに至りました。

1.原因

抗生剤を与えても症状が思ったように改善しない事、死に至るまで時間がかかる事、細菌が発見されたりされなかったりすることから、原因は細菌とは他にあるのではないかと考え、この症状を『浮腫』として捉え仮説を立てました。鱗が立つのも、目が飛び出してくるのもまた、水が溜まる事が原因であることは知られています。

脊椎動物において浮腫の原因は主に3つ
1.塩分の取り過ぎ
2.リンパ節の詰まり
3.タンパク質不足

1.について淡水魚においては原因としては考えられない。2.は放射線治療などによりリンパ節が傷つけられる事により起こる症状なのでこちらも考えられません。

では3.について。これは血液中のタンパク質である血清アルブミンの濃度が下がる事で、細胞内やその周りの水分が排出しにくくなり浮腫むというもの。血清アルブミンは血管内で水や老廃物を運ぶ役割をしています。それが減少する事で、水や老廃物を細胞から取り除く事が困難となります。

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2.タンパク質不足

血清アルブミン濃度の低下はタンパク質不足によって引き起こされます。
ではタンパク質不足はどうして起きるのか?
単純に餌不足も考えられるのだけれども、タンパク質の吸収の仕組みを少し調べてみると、
タンパク質は消化酵素によってアミノ酸に分解され、腸から吸収されまた必要なタンパク質に再構築される。
腸で吸収される際、アミノ酸やビタミンなどの水溶性の栄養素はそのままでは腸壁を通過する事は出来ず、ナトリウムと結合する事で通過する事が出来る。
タンパク質の吸収においてナトリウム、つまり塩は必須なのです。

3.塩不足

確かに、長期間塩を全く与えない状態でいると松かさ病は発症し易い。
若い金魚は比較的短期間に何倍にも成長します。身体の塩分濃度を一定に維持するならば、身体が大きくなった分の塩が必要となります。
塩水浴をすると病気の治りが良くなると言われています。周囲の塩分濃度を身体の塩分濃度に近づける事で身体に浸透してくる水の量を抑え、排出による身体の負担を減らす理由で行われますが、実はこのタイミングで塩不足が改善され栄養素の吸収が改善され、結果傷ついた組織が修復されやすくなり、また免疫があがり回復しているとも考えられます。
実際に普段から飼育水に塩を少し入れておくと免疫力はずいぶんとあがり、トラブルはだいぶ減ります。

さらに塩は消化酵素の材料になるため、これが不足すると消化不良を起こし易くなります。ビタミンやアミノ酸を腸で吸収する際に必要なナトリウムはこの消化酵素から調達されるため、塩不足はやはりタンパク質の消化吸収を妨げます。

4.ビタミン

ビタミンはタンパク質の吸収において重要で、ビタミン類は簡単に言うとタンパク質の代謝を高めます。タンパク質の吸収や再構築を助けます。

5.細菌感染

松かさ病の原因だと言われている細菌感染ですが、これも大いに関係あると考えます。細菌に感染すると魚は粘液を過剰に分泌し、また傷ついた粘膜や皮膚組織を修復しなければならず、これに多くのタンパク質が消費されます。つまり、細菌感染は松かさ病発症のトリガーとなっており、これによりタンパク質不足が加速し、浮腫の症状が出てくるのではないかと考えられます。

薬浴をするだけで治る事があるのは、早い段階で細菌が取り除かれる事によりタンパク質の消費が抑えられ、さらに塩水浴も平行して行われる事が多いため、このタイミングで塩不足も解消されるからであると考えられます。魚のコンディションが比較的良ければ、この後餌を与えるだけで症状が改善される事があります。

6.松かさ病のメカニズム

以上の事から松かさ病のメカニズムをまとめると、まず塩不足によりタンパク質不足に陥っており、免疫が落ち細菌に感染し易くなっている。ここで細菌に感染するとさらに多くのタンパク質を消費し、血液中の血清アルブミン濃度が下がり身体の水分の排出が困難となる。淡水魚は身体の塩分濃度が周囲の水よりも高いため、身体に外部の水がどんどん浸透してきます。水がうまく排出できないと身体に溜まります。

最終的な死因ですが、これは末期になると毛細血管が破れ赤斑ができてくる事から、組織の修復が出来ない事による臓器不善か主要な血管が破れる事で死に至ると考えられます。

7.治療法

治療法はまず塩と薬を入れて薬浴、殺菌が終了したらタンパク質、ビタミンを与えます。松かさ病の治療に成功した人の多くが餌をきちんと与えています。
タンパク質の消費量を吸収量が上回ったときに水が排出され始め、回復へと向かっていきます。

私の金魚の場合タンパク質を意識して与えても効果があまり見られなかったので、ここで人間用の必須アミノ酸サプリメントを与える事にしました。アミノ酸はタンパク質がすでに分解された状態で消化する必要なく、とても効率的に吸収できます。
まず身体が膨らむのが止まり、ひと月程で身体の余分な水がきれいに抜けました。ある日水面に空気を吸いに来ると、浮き袋に空気が入り一気に泳ぎ始めました。

昔から言われている、塩を入れると治る、青水に入れると治る、ココア浴をすると治る。これらは実は塩不足を改善し、青水やココアは植物性のタンパク質や食物繊維を多く含んでおり、腸の調子を整えながら効率よくタンパク質が摂取できているから治るのだと思います。


詳しい治療法は「松かさ病の治し方」に書いていますので、参考にしてみてください。

少しでも参考になれば幸いです。





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