みやゆゆの適当コラム 12/24
神山雄一郎が辞めた。
正直言って、2010年くらいから競輪を見始めた私は神山に特に思い入れはない。全盛期は吉岡稔真と覇を競った1990年代。2000年代半ばからは一般的な追い込み選手となっており、「かつての日本一」というくらいの認識しかないのが偽らざる印象だ。
とはいえ、競輪界においてその存在はあまりに大きい。「史上最も偉大な競輪選手5選」という動画が投稿されたなら、まず間違いなく中野浩一と共に取り上げられるだろう。
そして、「【なぜ?】競輪界の七不思議」という動画があったなら、まず真っ先に取り上げられるトピックが「神山雄一郎はKEIRINグランプリを勝ったことがない」のはずだ。競輪界であらゆる栄光を手にしてきた神山も、終ぞグランプリ優勝の栄冠に与ることはできなかった。
競輪といえば神山雄一郎、神山雄一郎といえば競輪。そんな印象を持つ20年、30年来のファンも多いのではないか。
ところで、神山は来年からA級陥落が決まっていた。そこまでは実に35年に渡り、S級で戦ってきた。引退の理由の一つは間違いなく、このA級陥落だろう。
競輪でS級とA級の差は果てしなく大きい。S級にいればG3(記念開催)に出場できるし、基本昼開催とナイター開催だけ走っていれば良い。
しかし、一度A級に落ちればモーニング、ミッドナイトを走らされる。もちろん、記念にも出場できない。相撲における十両と幕下といって差し支えないだろう。20年以上に渡りトップを走ってきた今、A級に落ちてまで現役を続けるモチベーションを保つのは極めて困難なはずだ。
しかし、同時期(1990年代後半~)のライバルだった小嶋敬二は極めて元気に走っている。最近A級に二度程陥落したが、いずれもパワフルな捲りを打って優勝を量産し、来年からS級復帰を決めている。小嶋ができるなら神山だって、という気がしないでもない。そんなことを言っても仕方ないことではあるが。
現に、ここ1~2年の神山の走りは急激に衰えていた。前には離れ、追走しても差せず後ろから食われるレースの連続。その衰えを最も実感していたのは、他でもない神山本人だろう。この状態で走っても。そう感じた上での決断だったのは想像に難くない。頂点を極めた者の感覚は、頂点に立たないと分からないのは当然のことだ。
最近、歳を取った者を何でもかんでも「レジェンド」呼びしてもてはやす風潮が続く。それ自体間違っていることではないが、「レジェンド」とはこのくらいの実績を積んだ者にのみ相応しい称号であることは、皆が覚えておかなければならない。