変革はいち個人の狂気から始まる
結論はタイトルの通りなのですけど、色々と書きます。
複数の組織で、さまざまな変革プロジェクトを見てきました。業務プロセスの変革、システム刷新、人事制度刷新、などなど。成功するものもあれば、失敗するものもあり。残念ながら後者のほうが圧倒的に多いです…。
成功したプロジェクト、もしくは成功とは言わずとも少なからず成果を出したプロジェクトに共通して言える要因は、スタート時点から「狂気」とも言える圧倒的な情熱を持ったメンバーがひとり居るかどうか。それに尽きます。
だいたいの大規模なプロジェクトは、大層な大義名分と、想定される素晴らしい効果を記載した企画書で、経営会議の承認を得て、予算や人員を投入して大々的にスタートします。でも失敗することは多々あります。そこには「狂気」を持ったメンバーが居ないからです。
※ 狂気の人が不在でも、うまくいくプロジェクトはあるのかもしれませんが、私はそういう例をほとんど見たことがありません。小規模でゴールが明確なものなら別ですが。
ここで私が「狂気」と呼ぶのには意味があります。単にロジカルで整理された企画書を作る人とは異なります(それなら社外のコンサルでもできる)。そのプロジェクトの主査に任命された、役員クラスの立場のある方(でも定例会議に出て報告を聞くだけの人)とも異なります。具体的には下記のような人です。
・組織の中の人であり、モロに利害関係者である
・変革の必要性を圧倒的な情熱で訴える
・誰もが嫌がる火中の栗を積極的に拾い、誰も開けなかったパンドラの箱を積極的に開ける
・噴出した問題を、部下や外注に振るのではなく、超具体的なレベルで自分で解消しにかかる(例・自分で現場ヒアリングして自分で業務マニュアルのプロトを作って検証する)
・対抗勢力と積極的に対話し、最終的に全ての利害関係者のハブになる
・ラストワンマイルを大切にする(説明会の資料やアナウンス内容などにこだわる)
・死ぬほど働ける体力と気力がある
・係長・課長クラスで発言力がそれなりにある (これはオプション。だけどちょっと役職がないと立ち回り上しんどいことが多い。)
そんな奴いないだろ、と思われるかもしれませんが、成功したプロジェクトのメンバーをよく見てください。目立たないかもしれませんが、必ず上記に近い人がいます。
こんなことを進んでやるなんて、ちょっと変わってるのかもしれません。でも理屈じゃなく、論理を超えたところで「自分はこの変革が絶対に必要だと思ってるし、何が何でもやる」と思っている人は、こうなります。まさに狂気です。
あなたの組織に、これから始まろうとしている、もしくは進行中のプロジェクトはありますか。そこにはこんな空気が漂っていませんか。
「これ、やらなきゃいけないのは分かるけど…面倒くさいよな…この問題誰も片付けたくないよな…自分に回ってこないようにうまく立ち回らなきゃ…あー、次回経営会議までに、少しは進捗してるように見せないとマズイよな…主査のXXさん、うまく説明できるのかな…」
こんな空気になり始めると、プロジェクトは敗色濃厚になります。おそらく狂気の人が不在なのでしょう。
では、どうしたらいいのか。
<経営層、マネージャー、リーダーの方>
組織をよ〜く見てください。
役職、部門、担当業務のプロジェクトとの関連性にはあまりこだわらず、人物として従業員をよく見てください。圧倒的な情熱を秘めた人がどこかにいるはずです。その人に声をかけ、思い切って権限を場所を与えてみてください。きっと何かが起きます。
<メンバーの方>
進んで狂気の人になる必要はありません(笑) 敗色濃厚そうなプロジェクトからは、一旦距離を置いて巻き込まれないようにするのも手です。
ただ、プロジェクトの目的に納得感があり、自分がなんとかしてやる、という情熱を持ちながら、まだ一歩を踏み出せずにいる方。そして体力と気力に自信のある方。いまこそ狂気を発揮する (日本語おかしい) ときかもしれませんよ。リーダーに一度相談してみてはどうでしょうか。自分にやらせてくださいと。
私も過去を振り返ると「ああ、あのとき自分は狂気の人だったんだろうな」と思うことがあります。めちゃくちゃ大変でしたが、終わってみるとこの上ない達成感が得られました。自分から「なろう」と思って狂気の人になることはあまり無い気がします。対象のプロジェクトの目的に対する圧倒的な情熱、そして与えられた権限と場所が、自然とその人を狂気の人にするのだと思います。
…長くなってしまいましたので、以下については次の機会に。
これがその組織を見限る原因にもなるわけですが…。
(1) 狂気は伝染して仲間を増やすのか?それとも、狂気の人は「うっわ〜近寄らないでおこう…」と扱われ、ずっと孤独なのか?
(2) 狂気の人は組織内で正しく評価されるのか?