味加減 火加減 時間加減
※ 今年の3月にTwitterで呟いた内容を膨らませたものです
属人化を排除しよう、という言葉が自職場で毎日のように叫ばれていた時期がありました。某超大企業の情報システム部門で勤務していた頃です。
確かに、日常的に発生するオペレーションにおいて、属人的な対応が存在するのはよろしくないとは思いますが、それが部門の主たるアジェンダとして声高に叫ばれている状況には少し違和感を覚えました。(まあそうなる理由があったわけですけど)
実際のところ、どのような仕事であっても、アウトプットは人によって微妙な差が出ると思っています。
私が好きな漫画家の野崎ふみこさんの作品で『たまこ食堂』という料理漫画があるのですが、その3巻 P.67 にこのようなフレーズが登場します。
「味加減 火加減 時間加減 レシピにない部分は人が出る 作った人間の情が出る 美味しいは「気持ち」が作るんだ 食べてくれる人を想って作らない料理がイマイチなのはそこだよ 情の厚い奴の料理は旨い」
とても素敵なフレーズです。
言われてみれば私も、家族に作る料理と、自分ひとりに作る料理では、同じものを作る場合でも雲泥の差がある気がします(笑)
レシピ = 業務マニュアルと読み替えると、いくら日常的なオペレーションであっても、いくらマニュアルがバチバチに整備された業務であっても、やはり仕事をする人の「情」がどこかで出るんだろうな、と思っています。
料理ならさておき、組織の日常的なオペレーション(経費入力とか購買発注とか)で「情」による差が出るとは思いません(出たとしても大きな意味を持つとは思いません)が、その人の良さ、つまり属人的要素が積極的に出ても良い、むしろ出るべき仕事の領域はあると思っていますし、だからこそ組織は良い人材を求めて必死に採用活動をするのでしょう。
私の尊敬するオルガノの原田篤史さんが、SNSにこのような言葉を投稿されていました。
「オペレーションの非属人化と、企画の積極的属人化の両立」
企画、つまり新しい何かを生み出すような仕事は、積極的に属人化してもいい、ということなんだと思います。
IT部門に勤務する自分の仕事に置き換えたとき、「食べてくれる人の相手のことを想う」とは、何だろう?と考えます。それはおそらく、自社のビジネスの理解と、事業部のメンバーが日頃抱えている苦労や課題への理解に他ならないのではないでしょうか。
コーポレート部門の職能スペシャリスト(人事、経理、法務、ITなど)は、自社ビジネスに興味がなくても、ある程度仕事ができてしまうというのは事実です。しかし、興味と理解があるなしでは、絶対にアウトプットに差が出るはずです。
さあ、私が自組織で日々生み出すアウトプットは、美味しく召し上がっていただけているのでしょうか?気づけば、IT部門での仕事が20年を超えようとしています。模索の日々は続きますが、ビジネスを主語にすることを忘れず、私なりの「味加減 火加減 時間加減」を模索していきたいと思います。