沖縄で暮らす。西原町に住む、沖縄移住女子が語る「子育てのリアル」
今日の沖縄は最高気温28℃。そよ風が舞い込む室内は心地よく、外は汗ばむ陽気だ。「暑い…」思わず口に出た言葉を連れて、買い物をしにスーパーへ行くと、週末のせいか混雑していた。
三密とも言える「KALD(カルディ)」の入り口では、ほんの少しだけ列ができ、列の先頭に待機するスタッフが、順番に買い物カゴを来店客に渡しては時間差で誘導していた。
きっと店内は、一筆書きのように一方通行の散策ルートを設けているのだろう。遠目から見ても、人と人が店内で出会い頭にすれ違う光景を全く見かけなかったからだ。
清々しく空は澄み渡り、そろそろクーラーが必要な季節になってきたな。「ああ、やっぱり暑い…」目を細めて空を見上げると、燦々と太陽の光が降り注いでいた。
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沖縄出身のウチナンチューたちと沖縄移住したナイチャーたちが、2019年に「沖縄で暮らすこと」を題材に記事を執筆しました。
ビフォーコロナの沖縄で暮らす記憶。改めて「暮らしのあり方」を考え直すヒントになったら幸いです。楽しく読める暮らしのエッセイに新たに編集を加えて、noteでお届けします。
Produced by OKINAWA GRIT
[1点だけ補足]この記事は、2019年7月に公開したものです。
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皆様はじめまして。関西出身、沖縄でほそぼそとライター業などをしつつ暮らしているマイコと申します。今回ご縁があり、『沖縄の子育てと暮らし』をテーマにコラムを書かせてもらうことになりました。よろしくお願いいたします。
<WRITER/マイコ>
私が沖縄移住した理由
気がつけば、沖縄移住歴も15年以上。七難隠してくれていたはずの色の白さはどこへやら。毎年夏になれば、腕は左右で全く色が違う運転焼け、足の甲にはくっきりと島ぞうり(=ビーチサンダル)焼けを浮かび上がらせております。
実は移住者よりも、沖縄出身の女性のほうが日焼けに気を使っていることが多く、「すぐに黒くなるから!」と日焼け止めはもちろん、日傘にサングラス、アームカバーを欠かさない友人もいるほどです。
そんな私が、20代半ばで沖縄移住した理由は、簡単に言ってしまえばいわゆる『沖縄病』を患ったからに他なりません。幼少期からずっと関西育ち。沖縄には縁もゆかりもなく、大学生時代に旅行で初めて訪れた沖縄で出会った風景、文化、食べ物、音楽...そのすべてにすっかり魅了されました。
大学卒業後、関西で就職したITベンチャー企業では、深夜〜明け方まで日々の激務をこなしつつ、GWや年末年始の長期休暇になれば、必ず沖縄を訪れて細胞の隅々まで沖縄成分をたっぷりチャージする、という生活を2年、3年と送るうちに、ふと思ってしまったのです。
「沖縄に住みたい…」
今でこそ格安航空会社や、LINE、Facebookといった無料通信アプリの登場で、リモートワークや場所にとらわれない働き方が一般的になり、移住に対するハードルが随分と下がったように感じます。
当時は移住といえば、それこそ人生の一大転機であり、賭けともいえるほどの大きな出来事だったように思います。実際、親や友人にもかなり驚かれました。
しかし、幸運なことに当時の私の仕事は、パソコンとインターネット回線があれば、なんとかなる。「これ、もしかしたら沖縄に住みながら今の仕事を続けることが可能なのでは...?」という考えが頭をよぎったが最後。
もういてもたってもいられず、ダメ元で勤務先の社長に「沖縄に住みながら仕事をしたい!」と熱い想いをプレゼンしてみたところ、なんとあっさり「いいんじゃない?」との返事。ベンチャー企業を立ち上げるだけあって考えが柔軟な方でした。
意外とあっけなく、仕事の心配をしなくてもいい幸運な方法で沖縄に移住できることになったのです。移住の数年後にはその会社を退職しましたが、私のわがままに快く協力してくれた社長と同僚たちには、今でも感謝しています。
沖縄移住したはいいけれど仕事がない、給料が安い、といった話は昔も今もよく耳にします。沖縄に限らずこれから移住を考えている方は、何かしら手に職をつけることをおすすめします。現地企業に就職して働くにしても、これからの人生を通して必ず武器になるはずです。
育児をしやすい環境が嬉しい「沖縄の子育て事情」
移住の数年後、同じく本土出身の移住者である夫と出会い結婚。現在、5歳になる長男との3人暮らしです。本章では、沖縄での子育て事情について、私の視点からご紹介させてもらいます。
1. 沖縄は子ども連れにとっても優しい
沖縄は今でも3〜4人兄弟は当たり前という、子だくさんな地域柄もあり、子どもに優しい人が多く、子育てしやすい環境が整っていると感じます。
スーパーマーケットで買い物をしていても、店員さんがニコニコと見守ってくれたり、話しかけてくれたり。また、飲食店では、キッズチェアや子ども用のプラスチック食器が用意され、絵本や小さなおもちゃが置いてあったりと、子連れで利用しやすい場所が多いのです。
特に県民のソウルフードである沖縄そば屋は、子連れでも安心して訪れることができる飲食店の代表格。食べやすいように麺を短くカットできる、麺カッターを貸し出す店もありました。また、ゴーヤーチャンプルーなどの定食類が食べられる、いわゆるうちなー食堂も、広々とした座敷席があり、子連れにフレンドリーな店が多いです。
初めての育児に奮闘中、息子がまだ乳児だった頃、座敷に寝転がせながら外食できるだけでも、気分転換になったことを覚えています。
また、無料で遊べる広々とした公園が多いのも沖縄の魅力。
遊具類が充実して、年齢別にエリアが分かれている公園や、クールダウンのために一定時間ごとにミストを噴射する公園も。近隣の米軍基地関係のファミリー、海外からの子連れ観光客も公園を訪れるので、ちょっとした異文化交流ができるのも沖縄ならではの魅力でしょう。
我が家の息子も、Hello、Thank you、Good-bye、你好、謝謝ぐらいの挨拶は言えるようになりました。
そして、もうひとつ。無料で遊べるスポットといえば、海です。
独身の頃は、岩場など魚影が濃い場所でのシュノーケリング専門。クラゲ除けネットがついた人工ビーチで泳ぐなんて、想像もしませんでした。
しかし、子どもを海で遊ばせるようになり、そのありがたさが身に沁みるようになりました。住んでいる家から海が近いこともあり、保育園帰りにちょっと海で遊ばせる、なんてこともできるのが沖縄暮らしの醍醐味です。
但し、日中はもちろん、夕方でも紫外線が強く、露出の多い水着だけで泳がせるのは危険。長袖ラッシュガードやつばのある帽子で日焼け対策をしっかりと行いましょう。大人も同様です。
2. 西原町は、ほどよい田舎で住み心地よし
次に、私が住んでいる西原町を紹介します。
沖縄本島の東海岸側なのに「なぜ西原なのか」。
西原町は、かつて琉球王国時代の中心地として栄えた首里の北側に位置しており、沖縄の方言で「北はニシ」と発音することに由来しているのだそう。ちなみに西はイリ、南はフェー、東はアガリと発音します。
町を代表する見どころといえば、国指定の史跡・内間御殿(うちまうどぅん)ぐらい。おそらく県外からの観光客がわざわざ訪れることはないであろう地味な町。
ですが、大型ショッピングモールや広い公園、ビーチもあり、那覇までのアクセスも良いとあって生活に不便はありません。特に子育てをしながら暮らすのにゴミゴミせず、ほどよい田舎感が個人的にとても気に入っています。
沖縄といえば車社会のため、朝夕の通勤ラッシュの時間帯には、かなり渋滞する地域が多いのですが、西原町内では坂田交差点付近が多少渋滞するものの、そこさえ通過すればほぼ流れはスムーズ。
私も通勤のため西原町から那覇市内まで通い、ドアトゥドアで約25分。関西に住んでいた頃は、雨の日の通学や通勤は心の底から憂鬱でしたが、今や通勤ストレスはゼロ。好きな音楽やラジオを聴きながらの通勤ドライブを楽しんでいます。
また現在、お隣の与那原町(よなばるちょう)の海側に、大型MICE施設の建設が計画されており、沖縄自動車道の南風原北インターから西原〜与那原を結ぶ新しいバイパスが建設中。
このバイパスが開通すると沖縄自動車道へのアクセスがぐっと良くなり、那覇空港や本島北部やんばるへも行きやすくなり、さらに利便性が上がりそうです。
3. 沖縄の独特な保育園事情とは!?
お子様がいる方なら気になる保育園事情について。
我が家は共働きのため、息子を0歳から保育園に通わせています。子どもの数が多い沖縄では東京や大阪などの都心部同様、全国的に見ても待機児童数が多く厳しい状況が続いています。
もし小さなお子さん連れでの移住を検討中の方は、沖縄県のウェブサイトで各市町村別保育所入所待機児童数をチェックし、競争率の比較的低い地域を狙うのもひとつの方法です。
沖縄の保育園事情で最も驚いたのは、5歳児クラスがない保育園が多いこと。私が育った地域では、幼稚園から小学校に上がるか、保育園から小学校に上がるかのどちらかでした。沖縄では5歳児クラスがない保育園に通う児童は、保育園を卒園後、1年間だけ幼稚園に通ってから小学校に入学するのが一般的なんだそうです。
その理由は、戦後沖縄がアメリカに統治されていた時代に、就学前教育が盛んだったアメリカ流の教育方針を取り入れた名残だと言われています。
息子が通う保育園には、5歳児クラスがあり、その定員は現在の4歳児クラスの約半分。ちょうどその瀬戸際の年齢の子どもがいる保護者たちは、申込み願書を提出する時期が近づくと、幼稚園に行かせるか、継続して保育園に通わせるか、選択を迫られるのです。(我が家も目下、悩み中)
ただ、県内でも地域によって多少の違いはあると思います。詳細は市町村の窓口に問い合わせてみることをおすすめします。
その他にも、給食やおやつの献立に、タコライスや沖縄そば、クーブイリチー、サーターアンダギーなどの沖縄料理が取り入れられて、運動会の演目ではエイサーが定番。
紙おむつのことをメーカー関係なく「パンパース」と呼んだり、外遊び用に島ぞうり(ビーチサンダル)が必須だったりと、未知なる沖縄独自の保育園文化に出会うたび、驚くとともに面白いなあと関心してしまいます。
我が家がお気に入りの公園3選
毎週末に行っていると言っても過言ではない、我が家のお気に入りの公園3つをご紹介します。
1. 楽しいイベント企画、雨天ならキッズルームで!沖縄県総合運動公園(沖縄市)
沖縄県総合運動公園、通称・県総(けんそう)。
東海岸の海に隣接した広大な敷地の中に、遊具広場、ボート池、レンタサイクル、オートキャンプ場、レクリエーションプール、スポーツ施設などが集まり、一日中遊べてしまうスポットです。
餅つきや焼き芋など、季節に応じたイベントが開催されて、中には流しスパゲッティとか、ユニークな企画も。母の日にはエプロン、父の日にはネクタイ、七夕には浴衣など、指定された衣装を着用することで、ボートやレンタサイクルが無料になる企画もあります。
園内の掲示やFacebookをチェックしてお得に利用しましょう。
郷土館という建物内にある室内キッズルームは、雨の日でも安心。広々としたパーティールームを1時間1,000円でレンタル可能です。オートキャンプ場は、GWや夏休みにはすぐに予約が埋まるほどの人気なので、早めの予約をおすすめします。
2. 親子ともに嬉しい立体トランポリン遊具!県営中城公園(中城村)
世界遺産・中城城跡に隣接した、広大な敷地に広がる県営中城公園。
2013年オープンと比較的新しい公園です。名物は立体トランポリン遊具。大きなトランポリンの下の空間はネット遊具になっており、立体的に上下移動しながら思いっきり身体を動かして遊べます。
また、遊具の下が大きな日陰だから、下の子をベビーカーで休憩させながら、上の子を思いきり遊ばせることも可能なのが嬉しいポイントです。
園内を流れる小さな川では、シリケンイモリやエビ、オタマジャクシなどの生き物を見学できます。100円ショップで売っている魚用のアミと飼育ケース(虫かご)を用意して行けば、じっくり観察できます。観察後は、持ち帰らずにリリースして帰るようにしましょう。
3. 平和や命についても学べる、沖縄県平和祈念公園(糸満市)
最後は糸満市にある沖縄県平和祈念公園。こちらは紹介した2カ所とは少し趣が異なり、単なる遊具のある公園ではありません。
園内には沖縄戦の写真や遺品などを展示した平和祈念資料館、沖縄戦で亡くなった人々の名前が刻まれた平和の礎があり、子どもを遊ばせながら命の大切さについて考えることができる公園。乗り物好きなら、カートに乗って広大な園内をぐるりと巡ってみるのもおすすめです。
エリアごとに分かれた遊具広場の楽しさと、沖縄平和祈念堂の裏辺りに位置する美ら蝶園も隠れた名物スポット。ハウスの中では、日本最大級の大きさを誇る蝶・オオゴマダラが優雅に舞う姿を間近に観察できます。
遊具遊びの後に、ぜひ立ち寄ってみてください。
いつまで経っても沖縄病は治りそうにない
沖縄に15年以上暮らして家族も持ち、沖縄の方から「もうすっかりウチナーンチュさぁ」と言ってもらえるようになりましたが、やはり根っこの部分では自分は他所の人間だということを忘れたことはありません。
それだけ沖縄には深い歴史があり、独自の文化があります。尊敬の気持ちを持って住まわせていただいているという感謝の気持ちを忘れずに、これからも沖縄での暮らしと子育てを家族と楽しんでいきたいと思います。
何年暮らしても、この沖縄病は治りそうにありません。
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2019年7月執筆
文・撮影:マイコ 編集:みやねえ