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フルートカフェ第四回 「レパートリーを育てよう🌱 ジャズフルーティストの譜面整理術」

フルートファンの皆様、こんにちは ♪ フルートの事、音楽の事を様々な角度から探求するシリーズ「フルートカフェ」へようこそ。生命の息吹を伝えるフルートの音色と共に、無意識の世界に広がる壮大な冒険へ一緒に参りましょう!

このシリーズはスタンドFMとYoutubeと両方でも配信しています。

▶️ スタンドFM

突然ですが、皆様、譜面の整理は好きですか? 
譜面は音の世界でコミニュケーションと取るための、特急チケットです。ジャズの分野で扱う譜面は、必要最低限の情報が書かれた「リードシート」を中心に扱います。この少ない情報量が書かれた紙でも、曲数が溜まってくると、整理しないと割と早い段階で収集がつかなくなります。

譜面を整理するメリット

・思いついた情報にすぐにアクセスして、効率的にプログラムを組む事ができる。
・部屋が散らからない
・準備の時間が短くて済む
・音楽の内容が整理できる
・時間を空けて、整理された情報を見る事によってより理解を深めたり、新しい発見、思いもしない組み合わせなどが見つかる。
・どこに何があるか理解している事で、場所にとらわれない生活ができる。

譜面を整理するデメリット

・整理した事によって脳が満足して、譜面自体の存在を忘れてしまう事がある。

最高の整理が出来た、と思った時は、何かリマインダーになるようなトリガーを仕掛けておく事がおすすめです。

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譜面を整理する事が得意な人

私は譜面の整理が大好きです!私の場合は二拠点生活をしているので、何がどこにあるのか把握するためにも、譜面の整理は必須項目です。

譜面を整理する事が苦手な人
譜面を整理できるからといって、音楽の中身が必ず良くなる訳ではありません。

譜面の整理が苦手、もしくは、全く出来ない大物ミュージシャンを何人か知っています。地層のようになっている紙の束から、どうやっているのか全くわからないけど、ぞの中から必要な一枚をさっと出すタイプの人。譜めくりが全くしにくい段組みやページレイアウトになっていても全く気にしない人。そもそも判別できないレベルの手書きの譜面の人。しかし、どの方も音楽の中身は素晴らしく、共演する事に喜びしかありません。という訳で、譜面の整理術以前に、自分に合ったアウトプットの方法を知っていると言う事が、一番大切だと思います。
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リードシートの特性

ジャズの譜面の整理の場合は、リードシートの特性を理解する事が重要です。リードシートとは、ジャズの形式の中で使われる譜面の種類で、一枚、もしくはできる限り少ない枚数の中で、

・曲の構成
・メロディー
・アドリブの元となる和音の進行

などの情報が記されています。 クラシックの譜面と違って、きちんとした出版社がファクトチェックをして正確な情報が記載されている、と言う保証もなく、(出版社から発売されているものは別として) リードシートを作成した人が独自の解釈で書いている可能性が高いので、オリジナルの音源と照らし合わせて本当に正しいと思う情報が書いてあるか、他の人に見せた時に、構成が瞬時に判読できるようなレイアウトになっているか、などチェックして、そうでない場合は自分で書き直します。

ジャズは、世界各地の民俗音楽同様、口伝の要素が多かったり、目よりも耳からの情報のスピードを重視するので、瞬時に情報を判別できるよう、基本的にリードシートは最初から音源を聴きながら自作する事をおすすめします。リードシートは必要な情報を瞬時に思い出すためのメモ書き、と言う位置付けです。最初から耳で聞いた事を譜面やコードネームに落とし込むのが難しいと言う場合は、市販の譜面を、音源を聴きながら自分が演奏しやすいように書き直す事をおすすめします。

繰り返しますが、ジャズは瞬時に判断する要素が多いので、耳からの情報を中心に取り組む事がベストで、そのためにも判断基準となる曲の構成や旋律と和音を体感として把握しておく事が重要で、自分に合ったリードシート作りはその最初の段階としてとても有効です。
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リードシートの整理方法

・作曲家で整理する

ジャズはとてもクリエイティブな音楽。その創造性に没頭するあまり、自分の演奏している曲が「カバー曲」だという事を忘れてしまう事があります。アドリブのクリエイティビティに注目が行きがちで、スタンダードと言われている曲の作曲家に対してクラシックほどの敬意が払われていない、と言うのは、音楽の内容に対してバランスがよろしくないです。

もちろん、一番良いのは作曲家が実際に自分で演奏を行う、「自作自演」です。自作自演という言葉は、一昔前は、ネガティブな意味で使われる事が多い印象でしたが、本来は素晴らしいポジティブでクリエイティブな喜びが詰まった言葉です。 ジャズは実際の演奏家が演奏される曲を書いている事も多いので、その視点で整理していくと、音楽の中身への理解も深まります。

日本のジャズ界は、一時期、音楽家の自作自演よりも「スタンダード」がもてはやされる暗黒時代がありました。私も活動をはじめたばかりの頃、スタンダードの作曲者も分からないような人たちに、上部のイメージだけで「この曲を演奏しなければ、ウチには出演させない」などと言われる事もありました。実際、その人たちは最初の1フレーズだけきいて、あとは全然お話して音楽は聞いていない事が多く、ジャズ界隈でそういうお店が少なからずあった事、私を含め、ミュージシャンがその流れに迎合した事で、リスナーと一緒に成長するチャンスを失った事は、本当にもったいない事だと思います。音楽業界全体がオンラインでの活動量が増えるに従って、著作権の問題もあり、「オリジナル」の重要性がやっと認識されるようになってきました。

ただ、ジャズのスタンダード曲を真剣に学んだ時期があるという事は自分の糧になっています。音楽が発展した土台をしっかり学ぶ事は、決して無駄にはならないし、これから学んでみたい、という方も、やってみたい気持ちがあったら、是非取り組む事をお勧めします。

曲に向き合う時は、作曲家が降臨してくるぐらい真剣に向き合います。ジャズの場合は曲の元々の作曲家とは別に、アレンジをした人や、有名になった元となる演奏をした人のエネルギーもできる限り呼び寄せて、それを自分の中で消化して、自分に合う形に変換してアウトプットします。

この作業のためにも、まずは曲を作曲家別に整理する事をおすすめします。こうすると、作曲家が意図している事、時代背景も含め、自分の中で全体像の咀嚼をして、現代にアウトプットする最高の方法を探す事もできるし、作曲家同士を比べる事で音楽の理解がより深まります。

・ムードで整理する

話は変わるのですが、ミュージシャンのファイナンス事情はどうなっているのか、気になる人も多いと思います。ライブ活動の他に、それぞれの特性によって、レコーディングや、レッスンなど、複数の収入源を持つ人が多いですが、私がメインで関わっているのは、高級ホテルのラウンジでの演奏です。ホテルによってミュージックチャージを取るところから、サービス料に含まれるところまで様々。内容もほぼライブのようなステージから、BGMに近いものまで様々ですが、意外ににBGM的な現場でも、臨機応変に対応する事が多いので、とてもクリエイティブな現場だと感じています。いつ行ってもクオリティの高い生演奏が展開される空間というのはラグジュアリーで、私も大好きな空間です。コロナで残念ながら今は激減していますが、多い時は、昼夜掛け持ちで、1日に40分×10ステージ演奏する日もありました。

毎回同じ曲を演奏すれば楽なのですが、ジャズミュージシャンの性で、毎回同じだと飽きてしまう、というのがあって、結局全てのステージ違う曲を演奏する事が多かったです。そうすると必然的にレパートリーは増えていきいます。40分ステージ、DUOだったら6曲ぐらい、これが10ステージ分ですから、一日60曲。月の1/3はホテル演奏をやっていた時もあるので、その時に蓄えたレパートリー数は相当の数になります。

その日の天気や、いらっしゃるお客様の雰囲気に合わせて、臨機応変にレパートリーの中からチョイスしていく事になるので、必然的にレパートリーが整理されていきました。その中でも私が特に心がけていたのが、「ムード」で整理するという事です。音楽は自由自在に様々なムードを生み出す事ができます。ラウンジ自体が大枠の内装から一つひとつの調度品まで、丁寧に設計されていますが、その最後の仕上げをするのが生演奏で作り出すムードです。 楽しい気分になるアップテンポの曲、内面に向き合うようなムーディな曲、軽く聞き流せるポップな曲、落ち着いたバラード、古き良き時代を演出するスタンダードや、現代的な洗練された雰囲気をもつコンテンポラリーなものなど、演出したいムードに合わせて曲を整理しておくと、プログラムを組み立てる時に役に立ちます。

・季節ごと、テーマに分けて整理する

日本の伝統的な雅楽の世界では、季節ごとに一つの調を演奏しています。季節ごとに決まった調があるという事です。厳密には「調性」の解釈は雅楽と西洋の音楽では異なるのですが、五線紙で表される楽譜を使う西洋の音楽でも春・夏・秋・冬 それぞれの季節に合う曲が多くあります。季節の感覚と、音の感覚は密接に結びついている、という事ですね。 自分のレパートリーを季節に結びつけて整理してみると面白い発見があると思います。

・調(Key)で分ける

五線紙で表される西洋の音楽の場合、12の調を均等にマスターする事はとても重要になります。キーの変化でかなりバリエーションも出るし、全ての調、満遍なく網羅するためにも、長調、単調含めて、全てのキーのレパートリーが揃うように整理していくと、対応能力が飛躍的にアップするでしょう!西洋のフルートは12の調が効率よく演奏できるように設計されているので、最初の段階から12の調均等に練習する事をお勧めします。

----------------------------------------------------------------------------紙かデジタルか?

最後に譜面の整理を紙で行うか、デジタルで行うか、という選択肢がありますね。私は活動を始めた頃はデジタルの選択肢はなかったので、最初は紙でしたが、できる所からデジタルに移行しています。i PadとNote Shelfというアプリを使って、プログラム毎に整理できるので、かなり便利です!

紙には紙の良さがあるし、デジタルだけで完結するのは今の所難しいので、状況に合わせて変化できる幅を持たせて、自分なりにルールを決めて整理していくと良いと思います。そうすると、音楽の幅が興味の大きさに応じてどんどん広がって、効率的に情報を取り込んで、思いついた瞬間に新しい事ができるようになります。

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レパートリーを育てる喜び

譜面を整理する事で自分のレパートリーの全体像が把握できるので、そこから自分のレパートリーを育てる事ができます。少しずつ貯めたレパートリーは一生の宝物、大きな財産です。是非、パーソナライズした譜面の整理を通して、美しい整理の世界を楽しんでください。

では、今回のフルートカフェはこの辺で。

またお会いしましょう!

では、また次回のフルートカフェでお会いしましょう。
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