類体論と平方剰余相互法則
素数は因数分解で辿り着く基本的な整数である。それで、素数は二つの整数の「乗法」では表せない。
しかし、素数は二つの整数の「加法」として表すことはできる。
→(例)5=1+4=2+3, 7=2+5=3+4, 11=3+8=4+7=5+6
<「4n+1」型の素数は無限個>
「素数は無限個ある」ことは古代ギリシャ時代から知られているので、
「二つの整数和の型」によって素数を分類することが試みられた。
その試みの中から「ディリクレの算術級数定理」が発見された。
それは、aとbが互いに素である自然数とすると、・・・
「『an+b』型の素数は無限個存在する」というものである。
例えば、「a=4, b=1」とすると、「4n+1」型の素数が無限個存在することであり、「a=4, b=3」であれば「4n+3」型の素数が無限個存在することを意味している。
<素数pを整数和で表す>
ここで「an=x, b=y」とすると、素数pは「p=x+y」と
整数和で表すことになる。
<素数pを平方数和で表す>
そして、「p=x^2+y^2」と整数の平方和にできる素数を求め、
その型が「4n+1」であることを発見したのがフェルマーである。
<素数pの型と二次形式>
その後、素数pの型が、「p≡1, 3 mod 8」の場合には、次のような二次形式を満たすことが発見される。
→ p=x^2+2y^2
そして、素数の型とそれに対応する二次形式が、次のように明らかになる。
→ p=x^2+3y^2 ・・・「p≡1,3,7 mod 12」
→ p=x^2+5y^2 ・・・「p≡1,9 mod 20」
→ 2p=x^2+5y^2 ・・・「p≡3,7 mod 20」
→ p=x^2+6y^2 ・・・「p≡1,7 mod 24」
・・・ ・・・・・
どうして、このようなことが分かるのか?
素数の型と二次形式が対応するという不思議さに迫りたい。
< フェルマーの二平方和の定理>
まずは、フェルマーが発見した「p≡1 mod 4」という奇素数の型が、
二次形式「p=x^2+y^2」に対応するという定理を証明したい。
二つの整数の平方和で表せる奇素数p(「p=x^2+y^2」)は、
すべて「p≡1 mod 4」型であることを示すことはたやすい。
xとyが、同時に偶数、奇数になるとpは偶数になるので、
それはあり得ないので、「x=2m」、「y=2m+1」として
一般性を失わない。
すると、p=x^2+y^2=(2m)^2+(2n+1)^2=4m^2+4n^2+4n+1
であるから、pは「p≡1 mod 4」となることは明らかである。
<「逆」の証明>
証明の続きはその「逆の証明」をすることである。
すなわち、「p≡1 mod 4」を満たすpは、すべて整数x、yの平方和(「p=x^2+y^2」)に表すことができる。
このことを示すことである。
<ステップ①>
そのステップ①が、「p≡1 mod 4」➡(−1/p)=(+1)、
すなわち「x^2≡−1 mod p」を満たすxが存在することを証明する。
(そのxはpより小さい値:sで「s^2=−1」である。)
例えば、「p=5≡1 mod 4」とすると「x^2≡−1 mod 5」を満たす
(5より小さい)xが存在する。→(x=2,3)
→ 2^2=4≡−1 mod 5, 3^2=9≡−1 mod 5
<平方剰余>
なお、「x^2≡−1 mod p」を満たすxが存在することを
「−1はpを法として「平方剰余」と言い、ルジャンドル記号で
「(−1/p)=(+1)」と表す。
「平方非剰余」の場合の値は「−1」である。
(次式は平方剰余相互法則の第一補充法則という)
この第一補充法則を証明する「ステップ①」は後述することにして、まずは、「p≡−1 mod 4」を満たす全ての素数pは「整数の平方和」にできることを証明する。
<「p≡−1 mod 4」なら「p=x^2+y^2」>
平方剰余相互法則第一補充法則により
(−1)の累乗部分は「『(4n+1)−1』/2=2n」となり、
ルジャンドル記号の値は「+1」であるから
「x^2≡−1 mod p」は整数解をもつことが分かる。
その整数解の一つをsとすると、sはpより小さく
「s^2≡−1 mod p」である。
そのsと、整数x、yを用いて「x+sy」を考える。
(ただし、xとyは√pより小さい値とする。)
すると、「x+sy」の個数は「√p×√p=p」個より多い。
例えば、「p=5≡1 mod 4」だとする。
すると、「s^2≡−1」となるsは必ず存在する。(s=2,3)
そして、√5より小さい値のxとyの対は、次のような
「3×3=9」個である。
→ 0+0, 0+1s, 0+2s , 1+0, 1+1s, 1+2s, 2+0, 2+s, 2+2s
これらは「mod 5」で分類すると、「0,1,2,3,4」のいずれかと合同で、
互いに合同なものが存在するはずである。
その二つを「(a+bs)≡(c+ds) mod 5」とする。
それで、移行すると、(a−c)+(b−d)s≡0 mod 5
ここで、(a−c)=X, (b−d)=Yとすると、X+sY≡0 mod 5
もちろん、(a−c)=X, (b−d)=Yは「0」ではない。
(したがって、「a、b」も「0」ではない。)
ここで、(X−sY)を両辺に掛けると、
→ X^2−s^2Y^2≡0 mod5
そして、「s^2=−1」を代入すると、
X^2+Y^2≡0 mod 5
つまり、X^2+Y^2=5k (kは1または2または・・・)
ただし、1≦X≦2, 1≦Y≦2であるから「k=1」と分かり
「X^2+Y^2=5」に辿り着く。
なお、「s=2」の場合の9個の整数は次のとおりである。
→ 0+0, 0+1s, 0+2s , 1+0, 1+1s, 1+2s, 2+0, 2+s, 2+2s
→ 0, 2, 4, 1, 3, 5, 2, 4, 6
→ 0, 2, 4, 1, 3, 0, 2, 4, 1 ( mod 5)
それで、(2+2s)≡(1+0s) mod 5
→ (2−1)+(2−0)s≡0 mod 5
→ (1+2s)≡0 mod 5
両辺に(1−2s)を掛けると、1^2−s^22^2≡0 mod 5
ここで「s^2≡−1」を代入すると「1^2+2^2=5」となる。
同様の議論が「mod 5」ではなく「mod p」として成り立つので「X^2+Y^2=p」となることが証明できる。
<「p≡1,3 mod 8」と「p=x^2+2y^2」の対応>
さて、平方剰余相互法則第一補充法則の証明をせずに既知のものとして証明を進めてきた。その理由は、奇素数pが二つの整数によって「p=x^2+2y^2」と表せることと、「p≡1,3 mod 8」が対応している
ことを証明することと重なるからである。
<「p=x^2+2y^2」を仮定すると>
まず、xは奇数でなければならないので「x=2n+1」とする。
すると、p=(2n+1)^2+2y^2=4n^2+4n+1+2y^2=2(2n^2+2n+y^2)+1
であるから「p≡1 mod 2」
(場合に分けて)、yが偶数ならば「y=2m」とおくと、
「p=4n^2+4n+1+8m^2」なので「p≡1 mod 4」となる。
yが奇数なら「y=2m+1」とおくと、pは次のようになる。
→ p=4n^2+4n+1+8m^2+8m+2=4(n^2+n+2m^2+2m)+3
つまり、「p≡3 mod 4」
したがって、中国平方剰余公式により、「p≡1,3 mod 8」が対応する
ことが分かる。
<「逆」の証明>
証明の続きはフェルマーの二平方和の定理と同じで、
「逆」を証明することである。
つまり、「p≡1,3 mod 8」なら、「x^2≡−2 mod p」が解をもつ
ことを示すことが「ステップ①」になる。
ルジャンドル記号では(−2/p)=(+1)を示すことである。
例えば、「p=11≡3 mod 8」ならば「x^2≡−2 mod 11」は解をもつ。
→ x=3, 8
→(−2/11)=(+1)
あるいは、「p=17≡1 mod 8」ならば「x^2≡−2 mod 17」は解をもつ。→x=7, 10
→(−2/17)=(+1)
pの値が小さければ、上のように求めることができるが、pの値が大きくなると難しくなる。
その時は、次式に示した第一補充法則と第二補充法則によって求めることができる。
例えば、(−2/17)=(−1/17)×(2/17)=(−1)^8×(−1)^36=(+1)
ここから先の証明は省略するが、素数の型と二次形式と平方剰余相互法則が対応していることは明らかである。
<三つの概念が対応する>
素数の型と二次形式と平方剰余が次のように対応している。「p=x^2+y^2」・・「p≡1 mod 4」・・・「x^2≡−1 mod p」 「p=x^2+2y^2」・・「p≡1,3 mod 8」・・「x^2≡−2 mod p」「p=x^2+3y^2」・・「p≡1,3,7 mod 12」・「x^2≡−3 mod p」 「p=x^2+5y^2」・「p≡1,3 ,7,9 mod 20」・「x^2≡−5 mod p」「p=x^2+6y^2」・・「p≡1,7 mod 24」・・「x^2≡−6 mod p」 ・・・ ・・・ ・・・
したがって、証明すべきことは(−a/p)=(−1/p)×(a/p)であり
「平方剰余相互法則」全体なのである。
<課題は「平方剰余相互法則」>
ガウスは平方剰余相互法則の証明を七種発見したという。
また、ガウスはどんな素数pが「p=x^3+y^3」と、三乗和にできるのか、「立方剰余相互法則」にも挑んだという。
また、余談になるが、「素数pが整数和にできる」ことに関連して、「2より大きい偶数は二つの素数和にできる」という「ゴールドバッハ(1690~1764)の予想」も興味深い。
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