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『人を動かすマーケティングの新戦略「行動デザイン」の教科書』の要点をまとめてみた

こんにちは。STANDの宮原です。

今回は「モノ発想」ではなく「行動発想」に転換することで、飽和した市場においてこれまで売れな かったモノが売れるようになる、というマーケティングの仕方について述べた本の要約をしていき ます。

1.まずは行動で市場を括り直す
私たちがモノを売るときにやってしまいがちなのが「市場をモノのカテゴリーで規定し、その市場 の中でマーケティングを考える」ということです。筆者は始めにこの考え方を根本から見直す必要 性について説きます。モノであふれた現代において、製品カテゴリーでモノを切り取っているだけ では、差別化も難しく新しい提案の幅も広がりません。そこで、このモノが生活者の日常の中でど んな時間や気分の、どんな行動を捉えるのかを明確に想定し、商品からではなく、お客さんの行 動から売り方を考えます。


例えば、ヨーグルトをお店で探すとき、プリンやシュークリームといったデザートコーナーと横並び に置かれていることが多いです。しかし、ヨーグルトは食後のデザートという捉え方だけでなく、朝 ごはん市場でいうとときにはサラダの代替品であり、ときには飲料の代替品、また間食にはお菓 子の代替品として食べられます。こう考えると、ヨーグルトはシリアル、卵、スープはモノで考える と違うカテゴリーで業界も大きく違いますが、実際にはどれも朝食に登場する食品です。このよう にヨーグルト一つとっても、朝食という行動に対応した「朝食市場」と、間食という行動に対応した 「間食市場」の2パターンがあり、これが行動で市場を括り直すということです。


2.人を動かすために必要なこと

人を動かすために必要なことを知る 人は思ったよりも動かないということ、人が動かない理由を分かっておくことです。人は正しいだ けでも、価格が安いだけでも動きません。 行政指導の「啓発キャンペーン」はあまりうまくいかない傾向にあります。その理由は、その行動 自体が正しいことは分かっていても、多くの場合自分には関係ない「他人ごと」として捉えていま す。自分にとって切実な問題である、という切迫感を感じない限りはなかなか行動に踏み出せな いのです。しかし、ただ「自分ごと化」できただけでも人は動きません。

人が行動しない理由には下記の3つがあります。 ・自分に言われているように思えない ・やるべき行動には見えるが、やりたい行動には見えない ・やりたいと思っても、何か腰が重い人を動かすためには、その人が感じているコスト感(時間的コスト、金銭的コスト、労力など)、リ スク感(人によく思われない、自己肯定感が下がるなど)がどのようなものなのかを見極め、その うえでデザインしていく必要があるのです。


3.リスク感とコスト意識の壁を超える

リスク感やコスト感は、人によっても状況によってもそれぞれですが、まずモノを何かモノを売りた いと考えたときには、なるべく細かくリスクやコストを想定し、それを突破できるような仕組みをつ くっていきます。 まずリスク感についてですが、リスクの感度は人によって異なります。行動にはリスクが伴うの で、危険を察知したときにこれくらいならいける、これくらいならストップと判断する基準が違うのです。
真っ先に新しいことを始める「イノベーター層」はリスク感度が低い人であるいっぽう、いくら 焚きつけてもなかなか動かない人たちは非常にリスク感度が高い人たちといえます。つまり「行 動デザイン」を考える上で、動かそうとしている人たちはどれくらいのリスク感度を持っているの か、何をリスクと感じているのかを理解することがとても大切です。

リスクを超える指標として、「行動ブレーキ」と「行動アクセル」という考え方を示しています。リスク を回避するために行動を控えるのが「行動ブレーキ」、逆に「損したくない」と思わず体が思わず 動いてしまうのが「行動アクセル」です。「行動ブレーキ」を減速させ、「行動アクセル」を加速させ るために、感情をうまく刺激するのがポイントです。

その方法の1つがレーン・チェンジという方法です。「自分のなじみのあるものには、リスクを感じ にくくなる」という特性を利用して、現在自社商品がいるポジションを、別のポジションに置き換え ます。例えば、「携帯音楽プレーヤーでどこでも音楽を聞く行動」(従来レーン)を、「街を、音楽を 聴きながらランニングする行動」(新レーン)に転換することで新しい市場機会をつくるのです。

もう一つ、あげられているのが自然の周期性を活用した「フレーミング」という方法です。人間があ る物事を把握し、記憶するためには脳が覚えやすい枠組み(フレーム)を使うのが効果的なの で、1年のサイクルや、1日の周期に行動を組み込んでいきます。例えば、「冬になったら、冬タイ ヤにしよう」という提案は、脳の中にフレーム化されている「夏服、冬服への衣替え」という体系的 な記憶を活用して、自然にタイヤ交換行動を促しています。モノとして捉えると、本来の正式名称 は「スタットレスタイヤ」ですが、「冬タイヤ」という名前のほうが冬になったら履き替えるという行動 が内包された、行動発想のネーミングで分りやすいです。

またコスト感には下記5つあります。
 ・金銭的コスト
・肉体的コスト
・時間的コスト
・頭脳的コスト
・精神的コスト

人類の歴史上、長い間通貨を使ってきたことから金銭的コストについては考えることが当たり前 になっています。現代では「無料」「割引」などの価格操作だけでは人が動きにくくなっているから こそ、金銭的コスト以外のコストについて改めて考えてみる必要性があります。また、技術の革新 で肉体的コストや時間的コストも大きく削減されつつあります。 いっぽうで現代高騰しているのが、デジタル技術の進展で生まれた情報コスト、これは頭脳的コ ストの代表格です。情報を収集・検索したり、それを分析・評価したり、記憶しておくことで発生す るうけてのコストのことであり、お金、身体、時間、のコストが低くなってきた分、余計に頭脳側の コストが目立つようになりました。 最後の精神的コストは、「他人に気を遣う」「一人で思い悩む」といった心に関するコストで、集団 で身体を動かす機会が減った現代社会で顕在化しているコストになります。

コスト感を下げる方法としては、簡便法があげられます。「経験的に大体正しい」という手がかり だけで簡易に判断して、考えるコストを下げるのです。例えば、「行列ができているお店はだいた い美味しい」(社会的証明)や「大学の先生がお墨付きを出しているのだから、この健康法は正し いだろう」(権威)といった具合です。

4.行動スイッチと行動チャンスを探し出せ

意識は目に見えませんが、行動は目に見えます。「実際に行動しやすい/したくなる環境」を整備 してまず行動を誘発させるべきだというのが行動デザインの基本思想です。

行動スイッチとは、「ある商品や行動が想起される瞬間」という見立てで捉えており、日常のあら ゆる場所に隠されています。「疲れた」「失敗した」「嬉しかった」「不安だ」というさまざまな感情が あるレベルまで高まった瞬間に、ある商品に気持ちが向かい、行動のスイッチが入るのです。

そして、同じ生活場面で複数の行動スイッチが入っても、それが満たされない(手ごろな商品がな い、それを使える状況にない、など)ときは大きな行動チャンスです。例えば、オフィスで働く女性 が「エアコン乾燥」を気にしていて、潤うスキンケアをしたいという行動スイッチが入ったとき、その 行動チャンスを捉えたのが「アロマディフューザー付きの卓上加湿器」です。行動スイッチの観察 から、それが大きく未充足な状況を行動チャンスとして取り出していきます。

5.行動は継続されなきゃ意味がない

行動は起こさせただけでは意味がなく、それを継続維持させるための仕組みも同時に構築する 必要があります。LTV(ライフタイムバリュー:生涯顧客価値)を維持し続けること、つまりブランド をほかにスイッチさせずに、その行動をとにかく継続し続けてもらうことが、これからの成熟社会 のマーケティングの生命線なのです。

ここで押さえておきたいのが、行動習慣を支える支柱です。ある行動から離脱させないために押 さえておくべきチェックポイントのようなものです。この支柱には3つあります。「楽しい」「気持ちが 良い」といった「快感」、「自分に見合った価格である」「自宅や職場から近い・通いやすい」といっ た「近さ/アクセシビリティ」、「今の自分にとって良いもの、意味のあるもの」といった「自己適合 感」を指す「自己効用」の3つです。

習慣行動が変化するタイミングでこの支柱は変化するということも分かっています。習慣行動を 学習期、安定期、離脱期という3つの周期で分けたとき、ステージの移行は人によってバラバラで あるかつ、そのステージによって支柱候補も変わることから、行動を継続させるためには適宜支 柱を刺激するような施策を打つことが必要になります。それができていないと、「何となく違和感を 感じる」という感覚から行動の中止・離脱のきっかけにつながってしまうのです。

以上、モノ発想から行動発想に切り替えたマーケティングの5つのステップをみていきました。本 質的なゴールは「モノを売ること」ではなく、モノを使った先で生活者がどのような行動を取るかで す。そして、そのモノによってどう豊かな未来を実現していくのか、つまりモノを通して行動したさら に先に企業のビジョンが込められるように思います。 販促となると目の前の売りたい商品とその商品が属しているカテゴリーにしか目がいかなくなり がちですが、しっかり行動にまで視野を広げ、行動をデザインすることに意識を向けていきたいで す。

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