📙星洗い② (加筆中)

①夜。

②世界は、夢をかき集めている。

いろとりどりの夢。いろんな味の、夢。


③出逢うべき星と出逢えた夢は、惑星のみんなが眠っている夜にだけ、[ヒト]の世界へ降りてくる。

案内人により引き逢わされるのだ。宇宙に住まうオキアミ。彼らだ。大役を果たしたオキアミは、ほかよりもエネルギー高く成長する。

そして、ほうき星となってまで惑星へと、くだった《すべてがととのった「かなしみ」》に身をささげる。

大切な約束を、果たせるように。


④そうして、ぐっすりと眠っている、[約束のヒト]のもとへとゆき、ひとしきり周りをゆらゆらとたゆたったのちに、からだの中へと吸い込まれていく。

⑤『ようやく、いっしょになれたね』

流れ星


⑥ある、[ヒト]が いた。

 奇跡を夢みるヒトだった。


⑦その[ヒト]には
 あらゆる[夢]が見えていた。

 金平糖のように、淡く、
 柔らかで、やさしくて、甘い。


⑧たくさんの[夢]のなかで、たった一つ、ほかとは違うものがあった。海辺の砂のように、かたく、密度も高いけれども、ときに、やわらかに寄せる波にさらわれてしまう。それでも、崩れ去ることはなく。また、かたまり。また、さらわれてゆく。


⑨カラリ。ころり。

はるかどこかから、透明な音が聞こえる。その音に呼応するように、その[夢]は 甘い香りを放った。たくさんの[夢]のなかで、特別な、それ。

 

 

⑩『自分は特別な人間だから』

その[夢]にとって、特別な、人間だから。ぼくだけが、きっと。その[夢]の、夢を、叶えてあげられるんだ。



⑪星洗いのじいさんには
 めったに悩みがない。

 毎日。毎日。たくさんの「かなしみ」を洗濯して、宇宙へと送り出し、[約束のヒト]を みつけてゆく 星たちを眺めることで 胸が いっぱいだからだ。

ただ、最近は、珍しく
弱りきってしまった。

⑫なんど洗っても洗っても、ぴかぴかにならない「かなしみ」が出てきたからだ。たったひとつ、こいつだけが、星洗いのじいさんの腕をもってしても、本来の輝きを取り戻せない。

⑬小さく柔らかなヒカリを、ぽわんと灯して。宇宙に送り出すよりも前から灯りを点しつづけている「かなしみ」は、じいさんにとっても、初めてのことだった。

いつもよりも、たくさんのセンタクウオを使い。いつもよりも、たくさんのオキアミを使った。

銀河の砂星も使ってみたけれども、その「かなしみ」は、やわらかに光るだけで、生命力やきらめきを導きだしてやれなかった。


⑭悲しそう。
じいさんには、本当に、そう見えた。

⑮「かなしみ」とは、惑星に住む「ヒト」の心のなかにある[夢]が傷つき、くすみ、泣きたい気持ちや、くやしい気持ちや、諦めの気持ちや、そういった、いやなものが固まってしまったもののことだ。

「かなしみ」に支配されると
 [ヒト]はもろくなってしまう。


⑯じいさんは、あるとき、その「かなしみ」を吸い上げて。宇宙へと逃がしている仕組みに気がついた。誰がやっているんだか。なかなか、粋なことをする。

⑰じいさんは星洗いを始めた。

逃がされてくる「かなしみ」を集め、洗う機械を創りあげた。宇宙をたゆたう、ある性質をもつ魚に [センタクウオ]と名付け、仕事を与えた。もちろんオキアミにも。

⑱『おまえさんほどの頑張り屋には、初めて会ったよ』じいさんは、目が開かなくなるほどに泣いた。

ここまで深い「かなしみ」を
どう 洗ってやれば 善いのか。



⑲その[ヒト]は、高い場所が好きだ。

 

⑳風に吹かれる

見晴らしの良い、たった一人に なれる 場所。想いを巡らせ、考え、膨らませることのできる場所。

いっさいの邪魔が入らず。平和で。幸せで。あたたかで。やわらかく。すべての感情を
【構築的で前向き。そして明るいもの】へと導いた。そんな場所で見つけた《たったひとつ》


㉑これ以上の幸せは
 ないと思えるほどの [ 夢 ] 。

『これは絶対に
 ぼくのために用意されたものだ』

 奇跡だった。


㉒ある朝。

目覚めたら、なにかが 違った。
忘れていた感覚だった。
求めていた感覚だった。

夢を、見ていた。
深い、宇宙の夢だった。


㉓「わたしには 足りないものが ある」

 それは、泣いていた。



㉔「わたしには、足りないものがある。それは、多くの人間は持っている、人間らしさ。ほんの少しの歪み、汚れだ。わたしには、それが、無い。汚れが無くては、生きている資格すら、持てないのだろうか」



㉕しっこくが、ゆらいだ。

[ヒト]は、応えた。


㉖『おれは、きれいなものが、すきだ』



㉗『きれいであることの、なにが、わるいものか』『たくさんの[ 夢 ]を見てきた。きみは 特別であるべきだ』

 [夢]も 応えた。

「多くの人間とは、ちがってしまっても?」



㉘『きみは。だれのために生きている』


㉙「わたしと
  わたしを想ってくれるひとのため」

[夢]は、笑った。

世界が、耀いてみえた。



㉚空は晴れわたり、自由の風が吹きぬけた。

カラン。ころり。と。
ときたま、ひかえめに響く。

歌うように軽やかな。透明な音。
甘い。香り。


㉛夜。

世界は、夢を かき集めている。

いろとりどりの 夢。いろんな 味の、夢。



㉜出逢うべき 場所へ、導くために。

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