「BIMで残業時間を減らせたら。作図スピードUP編」~一級建築士を持っているだけの凡人がいきなり設計部になった話♯8
前の記事で「BIM」についてご紹介しました。
(前記事▷「時代はBIMらしい」~一級建築士を持っているだけの凡人がいきなり設計部になった話)
軽くおさらいしておくとBIMとは、1つの建設プロジェクトの情報をまるっと3Dモデルに統合し、設計から工事、管理、運用までを一気通貫でやるよ〜!というものでした。
今回から数回に渡り、
近年の日本の建設業界が目指す
「残業時間短縮」 「生産性向上」
にBIMがどのように貢献できるのか
というのをテーマにシリーズ化してお送りします。
第一弾は、図面作成のスピードアップをピックアップ。
知ってる人も少なくなってきているとは思いますが、昔はドラフター(製図板)を使って鉛筆を持って図面を書いていた時代がありました。
そこにここ数十年で登場したのがCAD。
歴史を調べてみたところ、最初のCADが登場したのが1960年代とのこと。
そこから徐々に進化しながら世に普及していき、1980~1990年代で一般の企業でも使われるようになっていったそうです。
そのときの作図スピードの劇的な向上たるや。
十河信二もびっくり、こりゃ新幹線のごとく世を変える超スピードやわぁて。
そしてそれを上回る、リニア目前の現代。
CADでも充分早いのに、BIMになればもっと早くなる…?
私もBIMを使い始めるまでわかりませんでした。
BIMで作る図面の基本は「3D」。
2DCADのX,Y(縦、横方向)に加え、Z(高さ方向)が登場します。
アルファベットがいっぱい出てきてもうこんがらがりそうです。
線を引くだけじゃなくて高さ方向、更には要素(この線は柱や梁だよという部材ごとの情報▶詳しくは前記事)も入力しなきゃいけないのは時間がかかるんじゃないの?
…と思いますよね。
たしかにその入力が増えることで従来のCADで書く「平面図」よりはわずかばかり時間がかかります。
そう、ポイントは「平面図」だけなら。
ここでお気づきの方も多いと思いますが、「設計図書」は平面図だけでなく「立面図」「断面図」「部材リスト」などなど多くの図面が存在します。
さて今回のハイライトです。
BIMでは、高さ方向を入れて「平面図」を作成すると同時に「立面図」や「断面図」が完成します。
属性情報を入れて「平面図」を作成すると同時に「部材リスト」が完成します。
えーっやばない!?
なんと画期的!!
2DCADでは別々の図面を単独で作成し、リストを作成し、不整合が無いようチェックし……「ここの断面も作って」なんて言われたらもう数時間かかってしまいます。
BIMだったらどこの断面でもホイホイ。
MRIのように建物をどこでも輪切りにできます。
1つのモデルをそのまま平面にしたりリストにしたりしているので不整合も起きません。
BIM=統合モデルと言うだけあって、1つのモデルに情報をモリモリ入れ込むことであっという間に設計図書ができてしまうんですね。
もちろんこれだけの時間短縮をしようと思ったら、操作スキル、テンプレートの活用、またはスペックのあるPCの購入など事前準備には山ほど時間と金がかかります。
これがなかなか国内のBIMが普及しない理由でもあるんですよね。
しかし、長い目で見るとスピードアップ=生産性向上に大きく貢献できることは間違いありません。
作図時間が減ることで、設計者のメイン業務であるより良い建築計画の検討やデザインの構想に多くの時間を割けることに繋がります。
まとめ。
BIMによって作図スピードアップが叶うよ~ということをお伝えできたでしょうか。
かく言う私も、まだまだこの利点を生かしきれていないのが悔しいところです。
こんなコアな記事を読んでくださっている方の中には、そういうもどかしい思いをしている方も多いのではないでしょうか。
しかし今は少し踏ん張り時だと思っています。
きっと優秀だからこそ、最先端のBIMを学んでいる皆さん。
「BIMのおかげでホワイトな建設業になったぜ!」
と言われる日を目標に一緒に頑張りましょう!