「古き良き街」ニューオーリンズが故郷のカクテル
こんにちは。東京日比谷OKUROJI内にあります、MIXOLOGY HERITAGE(ミクソロジーヘリテージ) バーテンダーの角田健太です!
明けましておめでとうございます! 本年もどうぞよろしくお願い致します。
皆様、年末年始はいかが過ごされたでしょうか。カウントダウンイベントやお仕事、実家に帰省し年越しなど…。いろんな過ごし方があると思います。僕の年越しは実家に帰り家族でボードーゲームをやりながら年越しをしました。なんて平和。
家族や故郷が恋しくなる年末年始ですが、故郷と言えばこのカクテルを忘れてはいけません。ご紹介いたします。【Vieux Carre】
【Vieux Carre】 ビューカレ
ビューカレとは【古き広場】と言う意味で、アメリカ・ルイジアナ州ニューオーリンズのフランス植民地街の街並みを残したフレンチクォーターの別名。発祥は1930年代、フレンチクォーターの歴史あるホテル[Hotel Monteleone](ホテルモンテレオーネ)のメインバー「カルーセルバー」で産声を上げます。上記写真はカルーセルバーで、カルーセルとはフランス語で「メリーゴーラウンド」。確かに、メリーゴーラウンドのような見た目をしているバーですが、なんと実際に回るのです…!! とてもゆっくりではありますが、まさにカルーセルなバーなんです。
このニューオーリンズはアメリカンクラシックカクテルの聖地と言っても過言ではない場所。サゼラック、ラモスジンフィズ、ハリケーン、アメリカンアブサンなどアメリカのカクテル史を語る上では外せない地域なのです。
このビューカレの発祥を追うには1840年前後まで話は遡ります。
ルイジアナ州・ニューオーリンズは17世紀後半にフランス探検家達により開拓され、1682年にフランス王ルイ14世に因んでルイジアナと名付けられました。
1840年代と言うと、フランス植民地からアメリカに返還され奴隷市場が活発となっていた時代です。そのニューオーリンズ・フレンチクォーターにてフランスにルーツを持つ【アントワーヌ・ペイショー氏】が薬局を営んでおりました。
その薬局ではペイショー氏が作った薬酒「ペイショーズ・ビター」を売るために苦心しておりました。フランスにルーツを持つペイショー氏はブランデーにビターズを混ぜることを閃き、数滴垂らしたミックスドリンクを振る舞い評判を呼んでいました。
そして同時期フレンチクォーター
ペイショー氏の薬局の近くに実業家テイラー氏がコーヒーハウスをオープン。コーヒーハウスと言っても、現在のパブのようなものでお酒も提供していました。テイラー氏は「Sazerac de forge et fils」(サゼラック ド フォル エ フィル)と言うブランデーの正規輸入業者で、ペイショー氏のミックスドリンクの人気にあやかり、サゼラックブランデーにペイショーズを垂らした新たなミックスドリンクとして人気を博し、後のクラシックカクテル【サゼラック】の前身となるカクテルが誕生しますが、このカクテルに触れるのはまた別のお話。
1860年代に入りヨーロッパでは害虫フィロキセラが大流行。フランスの2/3と言われる葡萄畑が壊滅しその影響でコニャックの生産がストップしサゼラックは作れなくなっていきました。
なんとかして作れないものかと考え、サゼラックは地元のアメリカンライウイスキーへとベースが変わっていきます。コニャックの輸入が再開した後もライウイスキーベースが定着していきました。
時は流れ、1886年。同地域にホテルモンテレオーネが開業。
1930年代に入り同ホテルのカルーセルバーのチーフバーテンダーがビューカレを考案。
レシピは
○コニャック 20ml
○ライウイスキー 20ml
○スイートベルモット 20ml
○ベネディクティンDOM 1tsp
○ペイショーズビター 2dash
○アンゴスチュラビター 2dash
ロックグラスに全てを注ぎ、よくスワリング。氷を入れゆっくりとステア。
お気づきでしょうか。
コニャックにライウイスキーも入っているのです!!
今までお話ししたカクテルの歴史。その要素全てが織り込まれた歴史の上に成り立つカクテルなのです。
この話を聞くだけビューカレへの愛が間違いなく変わります。一般の方からプロのバーテンダーの方まで、たくさんの方がこの記事を見てくださっていることと思います。
ぜひ、アメリカンクラシックのカクテルを間違えることなく伝えていきましょう。
ここでプロのワンポイントアドバイス。
本来のレシピには含まれてはいませんが、サゼラックカクテルのようにオレンジピールを絞りいれることで格段にカクテルがレベルアップ。
オレンジの爽やかな香りとビューカレの華やかでしっかりとした味わいが絶妙に絡み合い、気分はフレンチクォーター。
コロナが再び猛威を震い出した今、まぶたの裏のショートトリップへ出かけてみてはいかがでしょうか?
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