家は最後の逃げ場でありたい。

しがない契約社員だったが、新築のマイホームを購入した。家にこだわりを持つのは他でもない、自分に「実家」と呼べるものがないからだ。

親の代では、田舎での賃貸生活だったので、「この家は後、解体するから」や、「老朽化もしてきたし、後は貸さないことにした」と言われれば、もちろん出ていかなければならない。

もし、子供達が結婚して離婚して、帰ってくる実家がなければ、どうするだろうか？都会に出て、疲れてしまっても安心して帰ってこれる実家がなければどう感じるだろうか？

…いてもたってもいられなかった。母親は「失礼だ、あたしがいる場所が実家だろう」というけど、なんかそういう問題ではない気がする。

家さえあればとりあえずなんとかなってる人達もいっぱい見てきた。だからといってそこが居心地のいい場所でなければ意味がない。

あたしは正直、学生時代は家に帰りたくないことが多かった。いつも母親が機嫌悪そうに小言を言ってきたり、父親ともめてたりしていたから。

学校にも居場所がない。家にも帰りたくない。こんな思いは子供たちにはさせたくない。ほんと、帰りたくない家なんて家じゃない。みんな外に行くと外で出来る限りの力で頑張っているのを知ってる。

家は自分をさらけ出して休めるところでなければ意味がない。とつくづく思っている。

大人だけであれば、どこに暮らしたっていい。毎日モヤシと豆腐で構わない。あたし自身はまぁ、屋根と壁がついてて、トイレがあればなんとかなるだろぐらいの感覚だ。

ただあたしの子供たちにはちゃんと何かあったときに帰ってこれる、安らげる環境を多少無理してでも提供したかった。

なんて偉そうなことを言っているが、今現在住宅ローンの返済に苦しめられている。

あまりの財政難に小言を言う母親に一緒に住んでもらい、援助をしてもらっている。

「家は休む場所だよ」と母に言うと、「じゃあ家事は誰がやるのや‼」とまたグチグチ言われてしまうけど。

それでもあたしは極力笑顔で機嫌良さそうにいる。だって母親が機嫌悪そうにしている家になんて誰も帰ってきたくない。知ってる。

そんな努力のかいあって、息子には「やっぱり家が一番落ち着く」といってもらえる。

それだけで今日も笑顔でいられる。