悲しみのステージに咲く花
彼女の名前は優子。地方都市にある地下ライブハウス、いかにも古びた会場で、彼女はほぼ毎日のようにステージに立っていた。優子の歌声は、どこか儚げで、それでいて力強さも感じさせる独特なものだった。彼女の姿はステージのスポットライトの中で輝き、彼女を追いかける視線は自然と吸い寄せられる。しかし、彼女の人気は一部の熱心なファンにとどまり、世間に広がることはなかった。
僕、翔太はその一人だった。優子の歌に心を奪われ、毎回彼女のライブに足を運んでいた。グッズも欠かさず購入し、応援することが唯一の楽しみだった。彼女の歌う姿を見るたびに、その純粋な情熱と、何かを訴えかけるような瞳に惹かれていった。だが、それでも彼女が大きな舞台に立つことはなく、いつも同じような観客と共に狭いステージに立ち続けていた。
そんな日々が続く中、優子はある日、新たな収入源を見つけた。それは、彼女の身体を撮影させるというものだった。最初はステージ上での写真撮影がメインだったが、次第に撮影内容は過激になり、やがて露出度の高い衣装での撮影会がメインとなっていった。カメラマンたちは欲望のまなざしで、優子の身体をまるで商品を撮るかのようにシャッターを切り、その光景を見るたびに僕の心は痛んだ。
撮影会の日、優子はいつも通り笑顔を浮かべていたが、その目には明らかな悲しみが宿っていた。その姿を見た僕は、どうしても声をかけずにはいられなかった。撮影会が終わった後、控室に向かい、彼女に声をかけた。「優子、大丈夫か?」僕の問いかけに、彼女は一瞬戸惑ったような表情を見せたが、次の瞬間、彼女は僕に飛びつき、泣き始めた。
優子の涙は止まらなかった。僕はただ彼女を抱きしめ、言葉をかけることができなかった。彼女の肩は震え、嗚咽が響き渡る。時間が経つにつれ、僕たちは自然と唇を重ね合わせることとなった。そして、唇をむさぼりながら互いに服を脱がせ、そのままソファーに倒れこんだ。それはお互いに慰め合う行為であり、逃げ場を求めた一時の安らぎだった。
翌朝、彼女は無言で起き上がり、僕の隣で身支度を整えていた。そして、彼女は静かに口を開いた。「昨夜のことだけど、お金を払ってもらわないと困るの。これは、そういう商売だから。」
その言葉を聞いた時、僕の胸に重い感情が押し寄せた。そうか、これはビジネスだったんだ。彼女はただの地下アイドルではなく、彼女の時間と身体はすでに商品となっていたんだと、僕は理解した。そして、無言で財布を取り出し、彼女にお金を手渡した。優子はそのお金を受け取り、微笑んだが、その笑顔はどこか悲しげで、どこか冷たかった。
それでも僕は、優子のステージに通い続けた。彼女が笑顔を見せる瞬間、そしてその歌声に触れる瞬間は、僕にとって何よりも幸せだった。そして、彼女の新たな「ステージ」、夜の仕事にも足を運ぶようになった。そこでお金を払い、彼女を間近で見て、その身体に触れ、一夜を共にできることに、僕はある種の満足感を感じていた。
優子との関係がどうなっていくのか、僕には予測がつかなかった。だが、今はただ、彼女が笑顔を取り戻すその瞬間を信じて、そばで見守ることが僕にできる唯一のことだと思っていた。そして、彼女の笑顔が本物になる日が来ることを、心のどこかで願い続けている。
[おしまい]