星降る夜
夜空には無数の星が瞬いていた。エルフの森の奥深く、静かな温泉が佇む。周囲は木々に囲まれ、温泉の湯気が幻想的に立ち上っていた。その温泉に、二人のエルフの女性が浸かっていた。
一人はリリス、200年以上前に夫を亡くした未亡人エルフ。彼女の金色の髪は夜空と調和し、透き通るような肌には歳月を感じさせない美しさがあった。
もう一人はセリーヌ、ずっと独身の女エルフ。彼女の金色の髪は星の光を反射し、青い瞳には好奇心と冒険心が溢れていた。
リリスは静かに湯に浸かりながら、夜空を見上げていた。長い年月を一人で過ごし、彼女の心には深い孤独が刻まれていた。
「セリーヌ、私はもう一人でいるのが辛いわ」とリリスはぽつりと呟いた。
セリーヌは驚きながらも、リリスの顔を見つめた。
「リリス、あなたがそんなことを言うなんて初めて聞いたわ。でも、気持ちはわかる。私もそろそろ独身を卒業したいと思っているの。」
リリスはセリーヌの言葉に耳を傾けながら、自分の思いを口にした。
「長い間、夫の思い出に縛られていたけれど、もう一度誰かと共に過ごしたいと思うようになったの。だけど、エルフの村には新しい出会いが少なすぎるわ。」
セリーヌは微笑んで、リリスの肩に手を置いた。
「それなら、人間の街に行ってみるのはどうかしら？あそこなら、たくさんの出会いがあるわ。」
リリスは一瞬驚いた表情を見せたが、次第にその提案に興味を持ち始めた。
「人間の街か…。確かに、私たちの村とは違う新しい世界が広がっているかもしれないわね。」
セリーヌは楽しそうに笑った。
「そうよ、リリス！新しい冒険が私たちを待っているわ。出発の準備をしましょう。」
二人のエルフは温泉から上がり、旅の準備を始めた。リリスは夫の思い出の品をひとつだけ持ち、セリーヌは冒険心に満ちた眼差しで出発の準備を整えた。
数日後、彼女たちは人間の街にたどり着いた。街はエルフの村とは全く異なり、賑やかな市場や人々の喧騒が広がっていた。リリスとセリーヌは互いに助け合いながら、新しい環境に慣れていった。
ある日、リリスは市場で偶然、若い人間の男性と出会った。彼の名前はエリオットと言い、彼もまた孤独を感じていた。リリスとエリオットは徐々に親しくなり、お互いの孤独を埋め合うようになっていった。
一方、セリーヌは町の図書館で出会った学者の男性、アランと意気投合した。彼の知識と優しさに惹かれ、セリーヌもまた新しい愛を見つけたのだった。
リリスとセリーヌは新しいパートナーとの生活を楽しみながらも、互いの友情を大切にし続けた。星降る夜、二人は温泉で語り合った日々を思い出しながら、これからの新しい冒険に胸を躍らせていた。
「リリス、私たちの旅はまだ始まったばかりね」とセリーヌは笑顔で言った。
「そうね、セリーヌ。新しい出会いと冒険が私たちを待っているわ」とリリスも微笑んだ。
星降る夜、森の温泉での語らいが、二人のエルフの新しい人生の始まりを告げていた。
[おしまい]