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小春のルージュ

真夏の海は盛り上がり、盛大な楽しさの真っ最中だった。そんなビーチに、髪を金色に染めて赤いマイクロビキニを身に着けた大人びた10歳の女の子、小春がやって来た。彼女は派手な赤い口紅を付け、大人の男性を狙うかのようにマイクロビキニ姿で砂浜に立っていた。しかしながら、彼女の思惑とは逆に、声をかけてくる男は一人もおらず、引いた視線ばかりが彼女に浴びせられるのだった。

小春

そんな小春に興味を持った男が一人。真っ黒に日焼けした健康的な青年、和也である。彼は小春に声を掛けた。「あ、お姉さん、ご家族と来てるんですか?入れ違っちゃったとか?」。小春は迷子ではないのだが、男に声をかけてもらったこの機会を逃すまいと、「そうなんですぅ、ちょっと離れちゃってぇ…」と、大人のオンナを演じた受け答えをした。和也は小春が迷子の娘ではないかと思って声をかけたのだが、小春の返答で事情を察知した。この子は大人になりたいのだと。

和也は小春が悪い道にそれないようにとそ知らぬふりをして遊んであげる事にした。優しく、小春を海岸に導き、じゃれあうようにして遊んだ。サーフィンをしたあと、二人は砂浜に座り、海を眺めた。和也は小春の本心を聞き出そうと、彼女に問いかける。「なんで一人で来てたの?」。小春は少し考えてから、素直に本心を明かし、「実は、カッコいいお兄さんに声をかけてもらおうと思って…もうすぐ中学校だし、中学校に行ったら将来の事を考えて受験勉強しないといけないの。遊ぶなら今しかないの」と、涼し気な顔で答えた。和也はからかい半分で、「なんだよ、ナンパ目的かよ。でも、最近の子って忙しいんだね。」と、少し驚いて言うのだった。


小春


小春は実際に特別可愛く、髪型もメイクも今日のためにオシャレにしてきた。和也はそんな彼女と夕陽が沈むまで遊んだ。小春はカッコいい青年である和也をナンパできたことが嬉しくてたまらなかった。そして、和也が自分を子供扱いせず、大人の女性として接してくれるのが嬉しかった。お互いにとって、良い思い出となった。

陽が沈む前に、小春は和也に来週の同じ時間へのデートを申し込んだ。「わかったよ。また遊ぼう。」和也は快く受け入れ、二人は別れた。小春は家路につき、来週のビーチを想像すると、わくわくが止まらなかった。和也もまた、小春との出会いを心地よく感じていた。そう、二人の夏はこれからだった。

[おしまい]

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