マニラで見る遠い夕日
朝日と共に目覚めて、朝ごはんを食べてからふたりで市場へ買い出し。戻ってきてライアンはパソコンに向かい仕事、その脇で私はバケツに水を張って洗濯、床掃き水拭き。空いた時間に絵を描くのがその頃の日課でした。
そして夕方にはふたりで外にでて、夕日を眺める。
一度だけ、近くに設置されていた水タンクに勝手に登ったことがあります。梯子も踏み場も細いワイヤーで、錆びついていてグラグラ。途中で後悔しましたが、なんとなく変な勇気が湧いててっ辺まで来てみると…。
…太陽でここまで空が真っ赤になるのかというぐらいの鮮やかさ。見下ろすと道路にはオレンジ色の街燈が付き始め、空との対称が美しい。ボロボロの家と家のあいだにはたくさんの家庭の音が聞こえ、夕方だというのに、空も大地も埃っぽいのに圧倒的なエネルギーに満ちていました。
そこで話したことは全く覚えていません。30分ぐらいはそこに座って夕日が沈むのを眺めていました。すると、
『クヤー(兄さん)!クヤーッ!』
と呼ばれる声がします。下を見てみたら
たくさんの野次馬と自治体のパトロール車が3台も来ていて私たちを見上げていたのです。懐中電灯で照らされ、そこで初めて血の気が引くのを感じました。
Nokiaのガラゲーでその写真を撮ったんですが、誤って削除してしまったのが悔やまれます。その水タンクも、撤去されてもう跡形もありません。
これがマニラの最初のアパートで一緒に暮らし始めたときの話。ライアンはすでに英語の先生をしていたけれど、私は無職。友達もいなかったし金銭的にキツい時期が続きましたが楽しかった。
マニラの夕日はきれいです。