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3/29(月) 月の歌姫 ~DIVA of the LUNA -spin-off-~

月の歌姫 ~DIVA of the LUNA -spin-off-~

 僕は一つの星。キラキラと輝いて夜空を飾るのさ。空はとても広い。どこまでも、遠いところまで広がっている。だから、僕一人の光では全然足りないのさ。

 闇は本当に真っ暗。何も見えないし、何も感じられない。他の星の光さえ、届かない。僕は怖かった。この広い真っ暗な世界に、一人取り残された気がして。そんなときに君は現れたのさ。

 その星は他の星とは違った。とても大きくて、優しくて、暖かい、まるで僕を包み込んでくれるような、そんな光だ。その星から綺麗な歌が聴こえてくる。「大丈夫。あなたは一人じゃない。私が側にいるから」そんな風に僕に歌いかける。

 その星は僕の真っ暗な世界を照らしてくれた。今まで気づかなかったたくさんの他の星たちに出会った。とても幸せだった。暖かかった。

 僕はとても嬉しかった。君に出会えたことが、君が世界を広げてくれたことが、君の光でたくさんの他の星たちに出会えたことが。

 ある日、そんな僕たちの世界が大きく変わってしまう。夜空にたくさんの雲が生まれた。雲は僕たちの光を遮った。あんなに近くにいた君もみんなも遠く離れてしまった。僕はまた一人になった。暗い日々が再び始まった。

 もう、たくさんの星たちと語り合えないかもしれない。暗い日々が永遠に続くかもしれない。君に会えないかもしれない。そんな恐怖が僕を襲った。そして、僕は考えるのをやめてしまう。もう、なかったことにしよう。僕は最初から一人だった。それでいいんだと。

 長い月日が経った。君の暖かさを思い出すのも少なくなってしまった。もうあの日々が昔の話のように感じる。そんな僕に一枚の手紙が届いた。

「来年で、私が生まれて10年になります。それを記念して夜空で大きなコンサートを開きます。だけど、広い夜空を飾るには私の光だけでは足りません。銀河一輝くコンサートにするために力を貸してください」

 僕の光はとても小さい。当然、君の光なんかと比べたら米粒にもならない。だけど、少しでも力になれるなら、力になりたい。そう思った。

 コンサート当日。夜空にはたくさんの星たちが集まった。雲が出る前に出会った星たちとはそれは久しぶりだった。君の光に導かれ、新しい星たちもやってきた。僕よりも大きな星でさえ、彼らを知らないと言った。君は前よりももっともっと大きくなって、たくさんの星を集めたのさ。

 さぁ、幕が開ける。君は白いドレスを纏い僕の目の前で歌い始める。空気が変わるこの感じ、懐かしいな。一つ一つの星に語りかけるように、一つ一つの星を愛でるように、一つ一つの星に届けるように、大切に、大事に歌いかける。星たちはそれに応えるように光り出す。僕も同じだった。とても小さな光かもしれない、もしかしたら君には届かないかもしれない、それでも僕は心からコンサートを楽しんだ。

 僕は少しあの頃のことを忘れていた。楽しかった日、笑いあった日、涙を流した日、背中を押された日。そんな日々を思い出しながら、僕は静かに涙を流す。あの頃と変わらない、だけど大きくなったその光に包まれながら。

 夜空は、主人公の君とたくさんの星たちの光でこれまでにないほど輝いた。その輝きは、きっと遠くの銀河まで届いたことでしょう。コンサートは大成功で幕を閉じた。

 大きな星は僕に語る。「彼女は本当に大きくなったよ。だけど、大きくなってもこうやって僕たちのことを大切に想ってくれている、その心がとても嬉しいよね」その顔は笑っていた。

 そんな、素敵な星のお姫様を、星たちはこう呼んだのさ。"DIVA of the LUNA"

 コンサートの後、4つの星たちがダンジョンを彷徨ったのは、また別のお話。










あとがき

#DOL2022  お疲れ様でした。封印していても仕方がないので今更ながら『月の歌姫 ~DIVA of the LUNA -spin-off-~』を公開しようと思います。封印していても仕方がないとか、この間の話なのに今更とかおかしな挨拶だな、と思った人もいるかもですが、作家みわと↑のテンプレ挨拶なので許してください。作家みわと↑としての作品もこれで4作品目です。多くの古いおたくたちが伝説だったと語るニコスマ学芸会を題材にした小説風レポートが私の処女作でした。読み返してみるととても稚拙な文章で修正したいと思ってしまう箇所がたくさんありますが、当時の楽しかった記憶(本文中のあの頃)が思い起こされます。コンサートが成功して本当によかったです。夏、秋ごろからの準備はずっと大変だったと思います。また、足のケガや直前の地震等不安になることもたくさんあったと思います。しかし、当日は全くそれを感じさせない完成度でした。プロ意識といいますか、本当に尊敬します。「星の舟」から始まったコンサートは、とても涙なしには見られないものでした。「moon」や「skyscape」、アンコールの「YUME日和」に、主題歌の「DIVA of the LUNA」等々、思い出すだけで胸が熱くなります。(ダンジョンを抜けた後、ぷりすけさんが「ライブ音源がCD音源化できたらいいのに」と言っていました)そんな中今回私が注目したのはやはり台本、お手紙でしょうか。会場で台本を聞いたことが今回の作品に影響したことに間違いありません。素敵な台本、お手紙でした。衣装もかわいかったですよね。細かいところまでしっかりデザインされていて、つきのんらしい衣装でした。とても似合ってたよ。グッズ展開も幅広く行われ、会場でるぅなんさんと「かわいいかわいい」と見ていました。私自身、イベント参加が約2年ぶりでしたので、あの頃のおたくとの再会し、新しいおたくとの交流し、そしてつきのんの姿を見られてとても嬉しかったです。
 今回の作品では少し詩っぽいものに挑戦してみました。いかがでしたか?これまでの作品とは一味違うので、もしかしたら苦手と感じた人もいるかもしれませんね。すみません。書き始めたときは所謂、「散文詩」というジャンルにしようと思っていましたが、長くなってしまったのでやっぱり小説なのかもしれませんね。今回は分かりにくい表現が多かったと思うので、この場を借りて解説させていただきたいです。
 本文中の「僕」は私↑のことです。夜空は私の生活環境を表しています。冒頭の闇の表現は私の高校1年生のときの状況を表しています。当時、高校生活が上手くいかず悩んでいたのです。そんなときに出会ったのが本文中の「君」つきのんです。コンサートの主題歌「DIVA of the LUNA」の「ねぇ、この歌を ここで 歌うことで どこかの誰かの背中を押して 勇気づけられる ことができますか?」の歌詞は私の体験と重なる部分があり、初めて聴いたときに感動したのを覚えています。(詳しい話は私の第3作『「月乃とおたくの夢の前奏曲」~「月と星のプレリュード」考察と妄想~』に書いてあります)本文中の「たくさんの他の星たち」等はつきおたのみんなのことです。雲はコロナウイルスのことと、私個人としては受験のことを表しています。私の受験のように、雲と聞いてコロナウイルス以外にも思い当る節がある人がいるかもしれませんね。コンサートの話から夜空は舞台を表すことになります。最後に、大きな星はギュラさんのことです。最後の言葉は少しアレンジしましたが(ギュラさん自身の感想ツイートにも同じ内容が書いてありましたが)、ギュラさんが別れ際に私に言った言葉です。私も同じ風に思います。

 DIVA of the LUNAの成功を祝い、つきのんの更なる活躍を祈っております。

 ありがとう。

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