大学編入記2-大学に入ったら魔王になった話-
ひょんなことから大学に入ったら魔王になってしまった私は、そもそもなぜこの大学に入ったかについて考え始めました。
高校一年生の時の志望大学は東京外国語大学でした。英語が得意であったし、地元を離れて都会に行ってみたい気持ちもあったからです。ところが、先生に「あなたは国語と英語ができて数学ができないんだから、数学を伸ばして旧帝大学を目指しなさい」と言われてしまいます。旧帝大の受験には文系でも数学が必要なのです。「総合大学の方が良い、旧帝大に行けば安定だ」とか何とか言われた気がします。どうしてでしょうね。なぜこんなことを言われたか、明日まで考えといてください。そしたら何かが見えてくるはずです。まあ高校の方針的にも旧帝大及び他の総合大学の入試に向けた指導を中心としていたので、全体的な成績が悪くなかった私に旧帝大を勧めたのでしょう。
特に志望大学について明確な意志はなかったので、当時の私は志望校を旧帝大に定めました。結果としては数学が全く伸びないままセンター試験と大学の試験を受けて撃沈したという次第です。今となっては、そのまま突き進んだ私も押し通した先生も狂っていたとしか思えません。狂気の沙汰です。私立大学を一切受験せず、第一志望を旧帝大、第二志望を地元の国立大にしていたので、撃沈した後ずるずると第二志望の大学に通い始め、じわじわと魔王になっていったわけです。しかしこの間、浪人して第一志望の大学を受け直したいと思ったことは一度もなかったのです。そして気付きました。
「第一志望の大学、志望してなかった説」
つまり、私は先生に流されるまま受験する大学を決めたただけであり、行きたいという思いはあまりなかったのです。では、第二志望の大学はどうでしょうか。これも「他に行きたい大学もないし地元の大学でいいや」と適当に決めてしまった結果でした。魔王はこの事実に今更気付いて驚愕しました。
・・・気付いたただけでは魔王化は止まりません。人間に戻るために始めに考えたことは環境に適応することです。第一志望ではない大学で楽しくやっていける人はいますし、私の周りにもそう見える人は少なからずいました。しかし、結局のところ大学には馴染めず、魔王化は進行していき、授業に対する不満が溜まっていったのです。
具体的な状況として、人文学部の一年生は人文系の分野の基礎科目を取ることが必修だったのですが、この基礎科目が基礎ではなかったと思います。歴史学入門や言語学入門というような「入門」の授業でも、結局はその教授の専門分野に偏った授業でした。その分野に興味がなくても必修だから受講しなければなりませんし、教授側もその事情を知っているので、かなり適当な講義もありました。
例えば、テキストは不要で、教授が大きな講義室で小さい声で90分喋り続ける。それを全く聞かなくても先輩から過去問を入手できれば良い成績が取れる。というようなものです。実際、テストは過去問とほぼ同じ内容だったのですぐに解けました。先生が早く終わった人は退出していいと言った瞬間に、過去問を先輩から入手したであろう比較的チャラそうな生徒たちが教室から出て行きました。ところが、いつも最前列でノートを一所懸命に取って授業後には質問をしていた真面目そうな男子生徒は、まだ頭を抱えてほとんど白紙の答案用紙に向き合っていました。そんな彼を見て何だか悲しくなったのをとても良く覚えています。真面目な生徒が解けずに不真面目な生徒が解けるテストなんて、馬鹿らしいとは思いませんか。
大学の教授には生徒に責任を持って教える義務があると考えています。大学生は、生徒から見て明らかにやる気のない教授の授業の単位を取るため、またガイダンス(※編入記1参照)のように形骸化した授業を受けるために大学に来て学費を払っているのではありません。私にはそのような必修の基礎科目の授業を受ける必要性が見出せませんでした。もちろん生徒の学びに貢献した場合もあるでしょうが、教授が形式的に教え、多くの生徒が仕方なく受講する必修の講義に何の意味があるのでしょうか。
このような疑問を抱いていたのは魔王だけではなかったようで、先輩たちも軒並み口を揃えて「一年生の時の授業はつまらないけど、二年生になってから面白くなるよ!」と言っていました。魔王としては「それ何の問題解決にもなってないじゃん」と思える解答でした。お前も魔王にしてやろうか。魔王的には何かもうこの大学に適応することは無理そうだったので、脱出することを試み始めます。
次回:留学と編入をしたくなってきた魔王
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