【感想】研究をデザインする(立命館大学大学院先端総合学術研究科トークイベント)
何かに興味を持っても、ゴールがはっきりしていなくて、全部途中で終わっていることが多い。部屋を見渡せば、読みかけの本ばかりだ。かじりついてでもやり通したいほど好きなものが無いのかもしれない。ブログでも感想文でも、何か書ければいいのに、とずっと思っている。思っているだけで足踏みしている。
出来事を思い出しながら書く時は迷わないのだから、「思い出す」のと同じ程度に読んだ内容が定着していないのだろうか。足りないのは読解力だろうか、考えをまとめる力だろうか。
そんな風にもやもやしていた時、立命館大学大学院先端総合学術研究科主宰のオンライン・トークイベント「研究をデザインする:三人の方法」(2020年11月17日)があることを知った。
平日昼間開催、ということはターゲットは大学院進学を検討中の学生。私のような社会人は対象外だろうが、大人しく聞いている分にはきっと許されよう。
なにしろここでお話する三人とは、本好きならば知らない人はいない話題本の作者たちだ。
『チョンキンマンションのボスは知っている―アングラ経済の人類学』(春秋社)の小川さやか、『勉強の哲学 増補版』(文春文庫)の千葉雅也、そして『マルジナリアでつかまえて』(本の雑誌社)の山本貴光。これは絶対に聞かなきゃ損です。
「研究をデザインする」人々が、自分の興味を形にしてゆく方法、それを少しでも教えてもらえれば、私のとっ散らかりも、せめて輪郭のある何かに変えることができるかもしれない。そんな期待を込めて視聴した。
三人は「いかにして書くようになったか」の話をはじめた。
印象的だったのは、山本さんが、子供のころ自然言語の前に論理的なプログラム言語で書いていたと言っていたことだ。
「上手くいかないのは全部私の命令の出し方が悪いせい」と聞いて、どんな内容でも丁寧に分かりやすく書く山本さんの秘密を知ったと思った。
よく人は「機械は融通が利かない」と言う。それは人間の方に大いなる「甘え」があるせいで、その甘えを排したところに文章の骨格にもなる厳密なロジックの世界があるのだろう。
悲しいことに自然言語から書きはじめた私たちには、厳密なロジックの世界はぼんやりとしか見えない。例えば私は書く時、声に出して読んだ時の響きを気にしてしまう。しかも気にするからといって、響きの良い文章になっているわけでもない。
このように先に自然言語で書き始めると、自然言語の表面のひらひらした部分だけに注目して書いてしまう。そして軟体動物のような文章になる。自分がどこに行きたいか分かっていないのか、分かっているけれどうまく出来ないのか、その区別さえつかない。
知らないとはなんと恐ろしいことだろう。この恐ろしさを忘れず、何がひらひらで、何が骨格なのかを気を付けて書くようにしたい。…でも気を付けるだけでどうにかなるのだろうか。
そのあとも、この三人はきっと研究にとりかかるための楽しい話をしていたはずなのだけれど、あいにく別のことをしなくてはならなくなった。しばらくしてパソコンの前に戻ると、小川さんが話をしていた。
フィールドワークで現地人と接しているうちに、ずっと親切に対応してくれた現地人が、ある時を境に厳しいツッコミをいれてくるようになるいわゆる「不気味の谷」の話だった。
「まれびと」だった小川さんがどんどん現地人の文化を習得しき、やがて現地人にとって「場を乱す人」に変わる境目だと私は推測する。「そこからが研究の美味しいところ」と言いきる小川さんは研究者としての好奇心が強い人だなと感心した。
この小川さんの話で印象的だったのが、自分の興味を探る方法だった。
やりたいことを300~500個ぐらいノートに手書きで挙げていき、「ふさふさした木」のようにグループ分けしていくと、今自分がどういうところに興味があるかがわかると言う。
つまり私のように、やってみたいことがたった1個、目の前を通り過ぎただけで、それに飛びついていたら、ふさふさした木にはたどり着けないのだ。
研究者になる人は、出来事や興味あることを記録して、そこから自分の本当に好きなことを見つけているようだ。そういう仕組みを子供のころから習慣づけている。
私もせめて記録する場所をまとめるなどして、毎日の習慣を変えてゆくのが先決だとわかった。さて、どうやって変えてゆこうか。
■DATA(HPよりコピペしました)
「研究をデザインする:三人の方法」
小川さやか 立命館大学大学院先端総合学術研究科教授
千葉雅也 立命館大学大学院先端総合学術研究科教授
山本貴光 立命館大学大学院先端総合学術研究科講師
日時・場所
2020年11月17日(火) 13:00-15:00
開催方法:Zoomによるオンライン配信
◆一般公開◆ 参加無料、要事前申し込み(定員250名)
開催趣旨
研究とは、どのような営みなのか。いかにして研究テーマを見つけ、調べ、学術的な言葉にし、独創的な研究へとつなげていくのか。このトークイベントでは、異なる専門分野で活躍する3人が、それぞれにとっての研究をデザインする方法を語りあいます。これから研究を始めようと考えている人、研究の過程で壁にぶつかった人、自分とは異なる研究スタイルに関心を持っている人、どなたでも歓迎します。一緒に研究デザインについて考えましょう。
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