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ハチミツは|シロクマ文芸部

『ハチミツは辛いんだろ?』

『うちのママは塩辛いって言ってたよ』

『うちの母ちゃんはものすごく甘いって言ってたぞ』

『それってチョコと一緒じゃないの?』

『チョコ?』

『うちのママは辛いって言ってたよ』

『うちのママはしょっぱいって言ってたように思う』

『うちの母ちゃんも辛いって言ってたかな』

『だってママがカレーを作るときに入れてたからやっぱり辛いんだよ』

『それってどんなチョコ?』

『カレーに入れてたのは小さい板みたいなチョコだったよ。それをパキッと割って入れてたのを見たんだ』

『私が見たチョコはロケットみたいな形だったわよ』

『俺んちは傘みたいなチョコだったぞ』

『僕のところは棒のチョコだったよ』

『いろんな形があるんだな』

『色もいろいろあるみたいよ』

『味は全部辛いのかなぁ』

『甘くて美味しいのもあればいいのにね』

『この間テレビ見てたらバレンタインのチョコのお話があってお姉さんやおばさんがいっぱいいたわよ』

『大人になると辛いのも大丈夫になるって言うしな』

『人に贈るとか、自分のために買うって人もいたな』

『どんだけ辛いのが好きなんだよ』

『誰か一度食べてみない?』

『悪い、俺、辛いのが苦手なんだ』

『僕もきっとダメだと思う』

『僕は食べられると思うけどできれば食べたくない』

『男の子は全滅ってわけね。仕方ないから私が試してみる。みんなお小遣い持ってる?それを出し合って一つのチョコ買おうよ。それをみんなの前で私が食べるってどう?』

みんなでお小遣いを出し合って近所のスーパーでチョコを買った。

『じゃあ食べるわね』

『辛かったら吐き出してもいいからな』

『そんなことしないわよ』

『我慢しなくていいからさ』

『ありがと』

女の子はひと欠けのチョコを口に入れた。

『どうだ?』

『辛い?』

『どうなの?』

『やっぱり辛いわ。きっとあなたたちにはまだ無理ね』

『俺も食べてみようかなぁ』

『やめといた方がいいと思うわよ』

『そんなに?』

『だから残りのチョコは私が責任持って食べるわね』

『無理しなくていいよ』

『だってみんなのお小遣いで買ったのよ。無駄にできないでしょ』

『それはそうだけど』

『私も全部食べる自信はないから、ママに頼んで今度のカレーに入れてもらうわ』

『それがいいよ』

『これではっきりしたな』

『そうチョコは辛いのよ』

『子供には無理ってことだな』

『今日はいい勉強になったな』

『じゃあ今日はこれで解散』

『また明日ね』


女の子だけ大人の階段を一段登ったようだ。

昔はチョコも高級品だったからか、それとも虫歯予防か、チョコは辛いから子供は食べられませんという風潮があった。
何て時代だったのだろう。

ちょっと待てハチミツは振りだけかよ。

小牧幸助さま 参加させていただきます
よろしくお願いいたします

Vanessa Perea  /  My Romance

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