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古事記百景 その九

神生み終盤

次生神名鳥之石楠船神ツギニウミマセルカミノミナハトリノイハクスフネノカミ
亦名謂天鳥船マタノミナハアメノトリフネトマヲス
次生大宜都比売神ツギニオホゲツヒメノカミヲウミマシ。…此神名以音…
次生火之夜芸速男神ツギニヒノヤギハヤヲノカミヲウミマス。…夜芸二字以音…
亦名謂火之炫毘古神マタノミナハヒノカガビコノカミトマヲス
亦名謂火之迦具土神マタノミナハヒノカグツチノカミトマヲス。…迦具二字以音…
因生此子コノミコヲウミマスニヨリ
美蕃登見炙而病臥在ミホトヤカエテヤミコヤセリ。…自美以下三字以音…
多具理邇生神名金山毘古神タグリニナリマセルカミノミナハカナヤマビコノカミ。…自多以下四字以音訓金云迦那下效此…
次金山毘売神ツギニカナヤマビメノカミ
次於屎成神名波邇夜須毘古神ツギニクソニナリマセルカミノミナハハニヤスビコノカミ。…此神名以音…
次波邇夜須毘売神ツギニハニヤスビメノカミ。…此神名亦以音…
次於尿成神名弥都波能売神ツギニユマリニナリマセルカミノミナハミツハノメノカミ
次和久産巣日神ツギニワクムスビノカミ
此神之子謂豊宇氣毘売神コノカミノミコヲトヨウケビメノカミトマヲス。…自宇以下四字以音…
故伊邪那美神者因生火神カレイザナミノカミハヒノカミヲウミマセルニヨリテ
遂神避坐也ツイニカムサリマシヌ
自天鳥船至豊宇氣毘売神并八神アメノトリフネヨリトヨウケビメノカミマデアワセテヤハシラ。)


伊邪那岐神と伊邪那美神の二柱の神が次にお生みになったのは船神ふねのかみ鳥之石楠船神とりのいわくすふねのかみ
またの名を天鳥船神あめのとりふねのかみ
次にお生みになったのは穀物神こくもつのかみ大宜都比売神おおげつひめのかみ
次にお生みになったのは火神ひのかみ火之夜芸速男神ひのやぎはやおのかみ
またの名を火之炫毘古神ひのかがびこのかみ
またの名を火之迦具土神ひのかぐつちのかみ
火之迦具土神を生んだことが原因で、伊邪那美神は陰部ほとに大火傷を負ってしまいます。
伊邪那美神は病床に臥してしまいますが、嘔吐物や糞尿からも神をお生みになられます。
嘔吐物からは金山毘古神かなやまびこのかみ金山毘売神かなやまびめのかみ
くそからは波邇夜須毘古神はにやすびこのかみ波邇夜須毘売神はにやすびめのかみ
尿にょうからは弥都波能売神みつはのめのかみ和久産巣日神わくむすひのかみ
和久産巣日神の子が豊宇気毘売神とようけびめのかみです。
ここに天鳥船神から豊宇気毘売神まで八柱の神がお生まれになりました。
しかし、伊耶那美神は大火傷が原因で、ついにお亡くなりになります。


※大宜都比売神と同名の神が後ほど出てらっしゃいますが、どうやら同じ神
 のようです。
※金山毘古神と金山毘売神は鉱山の神と女神と言われています。
※波邇夜須毘古神と波邇夜須毘売神は土の神と女神と言われています。
※弥都波能売神は水の女神と言われています。
※和久産巣日神は生成の神と言われています。
※豊宇気毘売神は穀物の神と言われており、後に、まだお生まれになってい
 ませんが、天照大御神にお仕えする神です。


「いつも通りの太安万侶です。今回は那岐君と息子の速秋津日子君、大山津見君の男性陣に集まってもらいました。女性陣はお疲れのご様子で今回はお休みです。まずは皆さんお疲れ様でした。那岐君、今回のミッションはどうだった?」
「安万侶、この間の肉ありがとうな。もう口を利くのも億劫なほどに疲れてるけど、あの肉がなかったら死んでたかもしんねえ」
「えっ、肉食わしてもらえるんすか?」
「お前、空気読めよ。母上が亡くなったんだぜ」
「分かったるよ。でも疲れてるし、腹も減ってるし、肉も食いたいじゃん」
「父上は俺たち以上に頑張ってたし、一番落ち込んでるのも父上だと思うぜ」
「俺なんか八柱生まれたところでギブアップだったけど、お前は何柱だ?」
「俺も八柱だ。それが限界だよな。当分やりたくねえし。親父は何柱だ?」
「十七柱だ」
「俺たち二柱の神を合わせても敵わねえ」
「親父もお袋もバケモンだぜ」
「安万侶、このバカ息子たちにも肉食わせてやってくれるか」
「それは構わないよ。じゃあ、奥様も連れてくればいいよ。それで那岐はどうする?」
「俺は那美のことでやらなきゃならないことが色々あるからさ。落ち着いたらご馳走になるよ」
「そうだね、先の楽しみもないとツラいよね」
「そういう訳でもないが、国生み以前からずっと一緒だったからな。うまく言えないけど、ちょっとなんか隙間ができたようでな」
「自分たちの身を削って頑張ってきた結果がこれでは、浮かばれないよね」
「子供たちもたくさんできたから、隠居するかなあ」
「そんな弱気でどうすんのさ、少し休めば元気になるって」
「気力がな」
「親父、十七人も生めばそうなるっしょ」
「バカ息子が、偉そうな口利くんじゃねえ」
「俺たち二神でも敵わないくらい父上がスゴイってことは分かってるけどさ、少しは養生してくれよ」
「那美をちゃんと葬ったら、しばらくのんびりさせてもらうさ」
「もう準備は始めてるの?」
「いやあ、色々手続きが面倒でなあ」
「俺たちが手伝おうか?」
「いや、那美のことはすべて俺がやる。お前たちはお前たちのことをやれ」
「父上のサポート以外に俺たちのやることって何だろ?」
「肉食いか?」
「お前の頭には何が入ってんだ?」
「肉食いじゃなかったら何だ? まさか、神生みじゃねえよな、それだけは勘弁してくれ」
「ホントお前は能天気だな」
 
「怒涛の如く時代を駆け抜けた、伊邪那岐と伊邪那美の二柱の神。今回空しくも奥様の那美さんが亡くなられましたが、二柱の神の思い出話などは別の機会を設けたいと思います。心より、ご冥福をお祈り申し上げます」


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