霧の朝【シロクマ文芸部】
霧の朝なのだろう。
気付くと霧の中に立っていた。
ここがどこなのか、どうやってここまで来たのか…………わからない。
どうやって帰ればいいのか…………わからない。
こんなに深い霧の中では下手に動かない方がいいと聞いたことがある。
もうしばらく霧が晴れるまでこの場にいよう。
いや、平地に見えるから少しぐらい動いても危険はないだろう。
向うの方が少し明るくなってきた。
朝陽が昇ってきたのだろうか。
朝陽に向ってとぼとぼ歩いていると、徐々に霧が晴れてきた。
だが…………。
「お義父さん、勝手に出歩いたらダメでしょ」
「ママ~、怖かったよ~」
「ハイハイ、帰りましょうね」
僕はママと手を繋いでおうちに帰る。
ママの手はとても暖かくて僕と同じくらいの大きさなんだ。
ふと気付くとママではない人と手を繋いで歩いている。
そう言えばお義父さんと言ってた。
ということは息子の奥さん、つまり義理の娘と手を繋いでいるのか。
また勝手に出歩いてしまったということか?
「ママ~、お腹空いたぁ。早く帰ろーよ~」
「そうね、何が食べたい?」
「う~んとねぇ、おっぱい!!」
「ママはおっぱい出ないわよ」
「じゃあハンバーグ」
「今夜はカレーなのよ」
「そっちがいい!!」
つい最近おっぱいを吸った記憶がある。
あれは吸ったとはいわないのか?
舐めまわしたというべきか?
妙な声も聞こえた気がしたが…………。
そもそもこの娘だったのだろうか…………。
小牧幸助さま
久し振りに参加させていただきます。
今回は脳血管性認知症(まだらボケ)を描いてみました。
お納めいただければ幸いです。