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メイドの土産(三)

▶あらすじ

独居老人が骨折して入院したことから、住み込みのお手伝いさんを雇うことになった。
さてどんなお手伝いさんかと思ったら、メイド服を着たうら若きお嬢さん。
麻里亜と名乗る菩薩のようなお嬢さんと独居老人との奇妙な同居生活。
洗濯物を気にしたり、散歩に行っては当たる胸を気にしたり。
その生活はまだ始まったばかりだ。
なんか続くみたい。

詳細は以下を⇩⇩⇩

 もう三話になるけど、これ続くのかなぁ…………。

 先日の散歩の一件以来、麻里亜さんの態度が少し変わったような気がするのだけど…………。


『ご主人様、おはようございます。今朝のお目覚めはいかがでしょうか?』

『あぁ麻里亜さん、おはよう。調子は良さそうだよ』

『ご朝食はいかがいたしましょう? 和食になさいますか? それとも洋食になさいますか? 私という手もございますが』

『麻里亜さん、また妄想の世界に入ってるよ』

『一度ご主人さまの御前おんまえで気を許してしまったせいでしょうか、妄想の世界に入るのが容易となってしましました。お許しくださいませ』

『楽しくっていいんだけどね。朝っぱらから刺激が強いのはどうもね』

『ご無礼いたしました。では夜なら?』

『そういうことでもないんだけどね』

『重ね重ね失礼いたしました。どうか解雇だけは』

『前にも言いましたけど、そんなことで解雇などしませんから安心してください』

『ありがとうございますご主人様』

『それで朝食だけど』

『はい』

『麻里亜さんにしようかな』

『しばしお待ちください、身を清めて参ります』

『冗談ですよ』

『私は構いません』

『少し困らせたかっただけですから、洋食にしてください』

『残念ですがそれでよろしいのでございますね』

『朝食だからね』

『ではデザートに私を』

『今日はやけに積極的ですね』

『お恥ずかしい次第でございます』

『それほどまでに?』

『はい』

『私なんかでいいのかな』

『ご主人様がいいんです』

『どうしたらいいんだろ』

『お困りのご様子なのですべてお忘れくださいませ』

『それで済むの?』

『おそらく妄想の世界では悶々とすると思います』

『それはツラいね』

『でもご主人様がどうされたいかが一番重要ですから』

『そう考えてくれるのなら助かるよ』

『やはり夢は叶わないのですね』

『希望を持たせるわけじゃないけど、夢が叶う日も来るかもしれないね』

『そのお言葉を励みに精進させていただきます』

『分かってほしいのは、決してキライだとかイヤだとかってことじゃないんだ』

『はい』

『矜持が邪魔してるんだと思うんだけど、踏ん切りがつかなくてね』

『私はご主人様に雇われ、日々のお仕事を通じ、ご一緒させていただく立場でございます』

『そうだね』

『ですが、過去に例を見ないことですが、ご主人様に恋情を抱いてしまっているのも間違いのないことだと』

『ホントに嬉しいんだよ。だけどもう少しのんびり進めたいんだ』

『ではいずれ?』

『そうでないと収まらないだろ?』

『私のためですか?』

『いや、私のためでもあるんだ』

『ありがとうございます』

『礼を言うのは私かもしれないよ』

『ご主人様をスキになって良かった』

『その言葉で救われる人もきっといるだろうに』

『私がご主人さまに救われたのです』

『そう言ってもらえると私も救われるよ』

『恐れ入ります』

『さて、起きるとするか』

『ではお着替えを』

『まだ自分でできるから朝ご飯を頼むよ』

『え~っ』

『どうしたの?』

『お着替えはメイドの仕事と心得ますが』

『そうかもしれないけど朝ご飯はいつつくるの?』

『お着替えの終わった後に』

『主人の朝ご飯を待たすってことかな?』

『お着替えを手伝いたいばかりに考えが至りませんでした。お許しくださいませ』

『キツイ言い方になってしまったけど自分でできることは自分でするから』

『畏まりました』

『麻里亜さん、ちょっと妄想を押さえようか』

『申し訳ございません』

『では朝食を』

『畏まりました』

 世話を焼いてくれようとしているのはとても有り難いんだけど、妄想と感情が先だってしまってるようだ。
 家政婦の仕事は滞りなくやってくれてるようだけど、度を過ぎることがちょくちょく出てきたなぁ。
 一度キッチリ話し合うべきか、それとも早々にそういう関係になるのがいいのか…………悩むなぁ。

『ご主人様、朝食の準備が整いました』

『ありがとう、今行きます』

『今日のご予定をお伺いしてよろしいですか』

『今日は特に何もないよ』

『では先日の続きのお散歩などいかがでしょうか』

『胸の当たる気持ちのいいやつか』

『おイヤなら離れて歩きますが』

『散歩に行くのは賛成だよ。この間麻里亜さんが言ってたお店はどうだったの?』

『静かな落ち着いたお店でした。メニューも豊富でランチにはぴったりかと』

『お薦めは?』

『そこまで詳しくリサーチはできていませんが、お肉料理が有名なようです』

『そうなんだ。じゃあ今日のランチは決まりだね』

『早速手配いたします』

『よろしく』

『ご注文はお店に行ってからでよろしゅうございますね?』

『そうだね』

『畏まりました』

『最近知ったんだけどアメリカで肉っていえばステーキかハンバーガーってイメージが強いんだけど』

『そうですね』

『ところが圧倒的に鶏肉が食べられてるんだって』

『そうなのですか?』

『ステーキよりも価格が安いということもあるんだろうけど、ヘルシー志向もあるみたいだよ』

『アメリカのイメージが変わる日が来るかもしれませんね』

『そうかもしれないね』

『ではチキンを召し上がる感じですか?』

『メニューを見て決めるよ』

『畏まりました』

メイドの土産がまた一つ増えるかな

つづく?

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