天真爛漫な彼女とちょっと根暗な僕 3
第三話
幼馴染の杏は学年一の人気者であるのにその自覚が全然ないらしい。それどころか彼女の友人たちに言わせると爆弾発言や衝撃発言が多いそうだ。僕も僕に関係することで何度か耳にしたことがある。
だけど僕が知る限りその大胆な発言が現実になることは今のところない。あくまで知る限りだから知らないところではどうなのか、それを知る術も僕は持たない。少し気になる。
別の日の学校の廊下
何故か僕の真正面を目掛けて杏の友達の安宅さんが前から歩いてくる。
いや杏よりは大きいと思われる胸を揺らしながら突進してくる。
右に避けると彼女も右に、左に避けると彼女も左に。僕の正面は譲らない。
安宅さんは何をしたいんだろう。このままだとぶつかるぞ。
「何で避けるのよ」
「普通避けませんか?」
「避けてほしくなかったな」
「僕とぶつかりたかったのですか?」
「ぶつかるだけじゃダメなのよ」
「どうしたかったのです?」
「竹本君に抱きつきたかったのよ」
「良く分かりませんがそんな遊びが流行ってるとか? それとも抱きつくのは安宅さんの趣味?」
「後ろからがダメなら前からはどうかなって」
「どうかなってどういうことですか?」
「だから梨香が男性の反応が見たいんだって」
「あなたたちは変態ですか」
何か執念のようなものを感じるが何故僕が的にされてるんだ? 勘弁してほしい。
「それから私の胸のことも聞きたかったし」
「私の胸って?」
「梨香が後ろから抱きついた時、わずかな時間で胸の特性を言い当てたらしいじゃない。形と大きさはちょうどいいとか、乳首がツンと上を向いてるとか。私の特性も見てほしいっていうか、触ってほしいっていうか、教えてほしいなって思って」
ちょうどいい? 乳首がツン? 見てほしい? 触ってほしい? 教えてほしい?
安宅さんも危ない人だったのか?
「ずいぶん大きな誤解があるようですが僕は胸のスペシャリストじゃありませんよ」
「梨香がそう言ってたから。それに杏チャンと梨香だけじゃ片手落ちっていうか、ズルいっていうか」
「どこがズルいんですか」
「梨香には細かく語ったそうじゃないの。私も仲間に入れてほしいなって」
「それって何の仲間なんですか」
「なんだろうね。乳仲間?」
なんだそのネーミング。
だけど吉川さんから話が広まって我も我もとなったらどうする?
そうして乳仲間が増えてって僕は胸のスペシャリストになってしまったらどうする?
「話しは元へ戻るけど竹本君に何か変化あった?」
「抱きつかれてもいないし、ぶつかってもいないのに変化などあるはずがないでしょ」
「何だつまんない、じゃあ抱きつかせてよ」
また別の感触を楽しめるかもしれない。
「香織、私のカッチンに何してんのよ?」
僕はいつから杏のモノになったんだ?
「杏チャン、減るものじゃないんだから、少しくらいいいでしょ?」
「カッチンに抱きついていいのは私だけなの」
そんなことはないと思うんだけどなぁ。
「竹本君は杏チャンでは反応しないんだよね?」
「しょっちゅう後ろから抱きつかれてますが反応はありませんね。ただ、前から抱きつかれたことはないので返答に困ります」
「カッチン真面目に答えなくていいから。前からでも後ろからでも上からでも下からでも後でしてあげるから黙ってて」
「杏チャン、それって爆弾発言だよ」
前からは分かるが、上からや下からの意味が分からん。
「杏、上からと下からってどういう意味だ?」
「カッチン、今それ重要?」
僕にとっては結構重要だと思うんだけど。
「香織と話してるから後にしてくれる? 後でゆっくり説明してあげるから」
「香織どうしたの? 何かあった?」
「アッ梨香、杏チャンが……」
杏と安宅さん、それに吉川さんまで加わって話し合い (?) はまだ続いている。また杏とその友達に揶揄われたのだろうか。
つづく
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