ふぉれすとどわあふ pao2
カンナさまの②落とし物に挑戦します。
辺境の地pao星で森の雑貨屋さん「ふぉれすとどわあふ」を営むドワーフのミユは、コーヒーもどきの仕上がり具合にイマイチ納得していません。
地球では絶滅してしまったコーヒー豆が何とかならないかとコーヒーもどきを改良してみたり、あちこちに尋ねたりしていました。
そんな時、仲良くしているエルフのフランから耳よりの情報がもたらされました。
「銀河の離れに星の欠片を集める掃除機を持ってる魔女がいるんだけど、その魔女が大昔からの珍しいモノや今じゃ手に入らないモノをたくさん持っているって聞いたことがあるよ。中には盗難品や落とし物も入ってるって話なんだけどね。それからその魔女はコーヒーが好きだとも聞いたことがある。そこに行けば本物のコーヒー豆が手に入るんじゃないかな」
「フラン、その話はホント?」
「僕が確かめたわけじゃないから真偽のほどは自信がないよ。でも僕が信頼している人からの話だから嘘ではないと思うんだ。いやあちょっと待って自信なくなってきたなぁ。あの人冗談も好きだからなぁ」
「フラン、ひょっとしてその魔女ってすっご~くキレイな人?」
「僕は会ったことがないけど妙齢の美女だと聞いてるよ。僕には関係ないけどスタイルもいいんだって」
「多分私その魔女に会ったことあるよ」
「なんだ知ってる情報だったのか。それは失敬した」
「違うの、コーヒー豆を持ってるかもしれない魔女としては知らなかった。ただ別のことで会いに行ったんだ」
「会いに行ったの? わざわざ?」
「そう船に乗ってね」
「面識があるのなら聞いてみればいいんじゃないの?」
「確か連絡先も聞いたんだよね。どこいったかなぁ。アッあった」
ミユは妙齢の美女である魔女の住まいを訪れました。
「こんにちは、お久しぶりです魔女さん。ミユです」
「ああ、ミチちゃんか、よく来たね」
「ミユです、ちょっとお願いがあってきました」
「ああ、ミルちゃん、お願いってなんだい」
「ミユですってば、ちゃんと覚えてくださいよ」
「お前は自分の名前を魔女に覚えられるのがイヤじゃないのか」
「どうして?」
「名前が一番短い呪じゃからな」
「呪?」
「お前を縛るための呪文だ」
「魔女さんにはそんな趣味があるんですか? 残念ですけど私にはそんな趣味はありませんから」
「その縛るではないわ。じゃがそれも楽しそうじゃな ヒヒヒヒ」
妙齢の美女がヒヒヒと笑うさまは恐怖感さえ覚えるのだが、ミユにいたっては全然平気らしい。
「いやいや魔女さん。そもそもミユは愛称ですから。ホントの名前はもっとずっと長いんです、教えませんけどね。それよりお願いなんですけれど、魔女さんはコーヒーがお好きと聞きました。ひょっとしてコーヒー豆をお持ちですか? もしお持ちなら分けてくれませんかねぇ?」
「あたしがコーヒー好きなのは本当じゃ。数少ないがコーヒー豆を持ってるのもな。じゃがお前に分けてやる理由がないのぉ」
「理由ならあります」
「ほぉどんな?」
「私が地球にいる頃、毎日コーヒーを飲んでました。大好きなんです。今はPao星で雑貨店をしていますが、あそこにはコーヒーもどきしかないんです。それでもあの星の人たちは美味しいって飲んでくれます。できればホントの味を知ってほしいんです。私も本物を飲みたいし」
「気持ちは分かるが、あたしに何のメリットもないのぉ」
「確かにこちらの希望ばかりで魔女さんのメリットは何もありませんね」
「お前がコーヒーの栽培をしてコーヒー豆を増やし、毎年一定の量をあたしに持ってくると約束するんなら少し分けてやらんでもないぞ」
「コーヒー豆の栽培やります。やらせてください。適した土地かどうかは分かりませんが絶対成功させます」
「お前、魔女と約束することがどういうことか分かってるんじゃろうな」
「全然分かってませんけど、コーヒー豆がもらえるんなら何でもいいです」
「じゃったら最初はほんの少しだけ分けてやろう。上手くいくようならもう少し分けてやってもよいがな。良いか、毎年一定の量をあたしに届けるんじゃぞ、約束したからな。それから星の欠片が少し足らんようじゃ、まだどこかに落ちたままなのかもしれんな。何か話を聞いたら知らせておくれ」
本物のコーヒー豆をもらったミユちゃんはコーヒー畑を作り、栽培に勤しみます。紆余曲折ありながら栽培が安定した頃から、Pao星だけじゃなく近隣の星からもコーヒーを飲みに来る方が増えたのでした。
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