私のおうちは森の雑貨屋さん その2
お餅を食べよう
季節はまだ冬。雪は少ないけれど寒いのには変わりがありません。
「今日はお客さんが少ないなぁ。やっぱり寒いからかなぁ」
ミユちゃんは暇がとっても苦手。朝もお掃除をしたのに、またお掃除を始めました。
その時、ドアに取り付けられたベルがカランコロンと鳴り、大きなクマさんが入ってきました。
「クマさんどうしたの? この季節に珍しいね。もう冬眠から目覚めちゃったのかしら?」
「冬眠はできなかったんだ。それよりミユ、とりあえず腹が減ってる。なんか食わしてくれ」
「うん、何がいい?」
「腹持ちが良ければ何でもいいぞ」
「じゃあお餅なんてどうかな?」
「お餅?」
「元はお米だから食べられると思うんだけど、人間が蒸して搗いて少量を固めたやつで、焼いても汁に浸けても美味しいんだよ」
「いつだったか人間がペッタンペッタンしてるのを見たことがある。いい匂いだったがあれが食えるのか?」
「そうそれそれ、出来たてじゃないから少し硬くなってるんだけど焼くとプクーって膨れるしとっても柔らかくなるんだよ。汁物に入れても柔らかくて美味しいよ」
「それは楽しみだ。それにしよう」
「少し時間かかるけど我慢できる? 我慢できないのならこれ食べといて。私が作ったバランス栄養食品。新製品なんだ。それからお餅は何個くらい食べられそう?」
「実は森にあまり食料がなくてな、相当腹は減ってるから多くても構わんぞ」
「そうなんだ。じゃあ頑張っちゃおうかな」
「それわたくしも食べられますかしら?」
ヘビさんが天井の梁から垂れ下がり、ミユちゃんに向かい首だけもたげています。
「ああビックリした。ヘビさんこんにちは。あなたもお腹が減ってるの?」
「お恥ずかしいお話ですけれど、そうでございますの。そのお餅とやらはわたくしでも大丈夫かしら?」
「少し多めに出しますから食べてみれば」
「そうさせていただこうかしら」
「じゃあちょっと待っててね。あっヘビさんもお腹減ってたら新製品のバランス栄養食品食べてね」
ミユちゃんが用意をしている間にクマさんとヘビさんが話をしています。
「今年の冬は食い物が異様に少なく感じるんだがな」
「そうなのかしら?」
「結局秋の間に腹一杯にならなくて冬眠もできなかったからな」
「わたくしは冬眠していましたのよ。でも先日とっても暖かい日がありましたでしょ? あの時もう春が来たんだと勘違いして起きてしまいましたの。一度目覚めちゃうとなかなか二度は寝られませんのね」
「それで起きてしまったが食い物がなくて困ったという訳か」
「ご明察ね」
「できたよ〜」
ミユちゃんは用意のできた焼き餅をクマさんとヘビさんの前に並べました。
「熱いから気を付けてね」
クマさんがお餅を食べます。一口かじって引き離そうとするとお餅がビヨーンと伸びます。
「これは面白いな」
クマさんはすっかりお気に入りの様子で何度も何度もビヨーンを繰り返しています。
ヘビさんはそれを羨ましそうに眺めています。
「ヘビさん、私が持っててあげるから、カプッとしてビヨーンしてみる?」
「だからミユちゃん大好きよ」
ヘビさんもカプッとしてビヨーンを繰り返し楽しんでいます。
お餅を食べるだけなのに、大層賑やかな森の雑貨屋さんなのでした。
同じタイミングでいくつかの企画がスタートしますが、どうぞ皆様のお力で森の雑貨屋さん「ふぉれすとどわあふ」の新しい姿を見せてくださいませ。
よろしくお願いいたします。
三羽 烏
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