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姪っ子物語 その一

第一章 家出

「なんだぁ家出しただとぉ? 何やってんだオメエはよぉ」

「だって一緒に住んでないんだもん」

「じゃあなんで知ってんだ」

「LINEが来たの 家出するけど心配しないでって」

「そんな書き方されりゃ心配するだろ普通」

「だから連絡したんじゃないの」

「ちょっと待て、なんで俺に連絡?」

「オジサマに会いに行くって書いてあったから」

「オジサマ?」

「私の周りにオジサマと呼べるのアニキくらいだから」

「それを先に言えよぉ」

「どう思う?」

「どうって、俺の家知ってんのかよ」

「私も知らないのにどうやって教えんのよ」

「そりゃそうだわな」

「でも京都ってだけは教えた」

「ちょっと待て、隣の町内みたいに言ってるけど、京都に来たら俺に会えると思ってんじゃねえよな?」

「世間知らずだからねぇ」

「そんなレベルの話じゃねえぞ」

「だよね 私もすぐそっち行くから」

「オメエは来なくていい」

「どうして」

「娘っ子だってバカじゃねぇ 俺に会いたいなら娘っ子なりに考えるだろ」

「だけど」

「オメエは家にいて連絡待て 緊急がないとも限らねぇからな」

「私も行きたいよ」

「俺が家で待てって言ってんだけど聞けねぇのか」

「わ、分かった」

「おい、ちょっと確認するぞ」

「うん」

「娘っ子は一人暮らしだったよな?」

「そうだよ」

「誰かと同棲ってことはねぇよな」

「そんな話は聞いてないわ」

「じゃあ家出ってなんだよ」

「あっ‼︎」

「あっじゃねぇぞ。まさかそっちの生活捨ててこっちへ向かったってのか?」

「確かめてみる」

「それから写真と特徴送ってくれ」

「知らなかったっけ?」

「オメエの顔も知らねぇよ」

「そうだっけ? じゃあ私の写真も送っとくね」

「余計なことすんじゃねぇ」

「じゃあ特徴ね」

「あぁ」

「私に似て美人でね、それから手先が器用で、料理も上手だし、おっぱいはアニキ好みだと思うわよ。アニキには勿体ないわね」

「何言ってんだオメエ」

「オジサマんとこに行くってことはそうなんじゃないの?」

「俺にその気はねぇぞ」

「娘も気の毒よねぇ 惚れた男に相手にされないなんてさ」

「バカ言ってんじゃねぇぞ んで娘っ子いくつだ?」

「23だったかな」

「仕事は?」

「してない」

「金は?」

「私より持ってる」

「なんで?」

「死んだジイちゃんの遺産 一生困らないくらいはあるんじゃない?」

「てことはカモがネギしょってくるってことか?」

「相手してやるんならそういうことでしょうね」

「チェ、で、何時ごろそっち出たと思う?」

「LINEの時間は1時間ほど前」

「それは証拠になんねぇなぁ」

「でも娘の性格を考えるとそんなに違わないと思うわよ」

「そこは母親の言うことを信じるか それでそっちからこっちまでどれくらい時間がかかる?」

「新幹線なら3時間 車なら7時間 飛行機なら乗ってるだけの時間が1時間くらいかな?」

「新幹線や高速が繋がってるのに、飛行機は賢明な選択とはいえねぇな 前後の移動もあるしな で どっちが濃厚だ?」

「娘は免許持ってないの」

「それを先に言えよぉ てことは駅だな」

「駅で張るの? 動員かける? 刑事ドラマみたいね」

「アホかオメエは」

「1人で見張るの?」

「駅で呼び出ししてもらえばいいだろ だが念のため動員はかけるか」

「面白くなりそうね」

「喜んでんじゃねぇよ 娘が家出してんだぞ じゃあ写真頼んだぞ」

「私のもね」

「ああ 修正してないやつを頼むぜ」

「おっぱいも写ってるのがいい?」

「娘っ子のか?」

「私のだよ」

「オメエ真面目にやれよ」

「アハハ じゃあお願いしますね」

「おぅ任せろ」

「おぅ俺だぁ ちょいと頼みがあるんだが今暇か?」

「アニキのためなら用があっても駆け付けますよ」

「すまねぇな」

「それで俺は何をすれば?」

「人探しだ 人を集めてくれるか?」

「何人くらい必要ですか?」

「適当でいい 場所は京都駅 ターゲットは若いお姉ちゃんだ 家出だってさ」

「アニキとどんな関係か聞いていいすか?」

「ちぃと訳ありでな 俺の姪っ子みたいなもんなんだが 一度も逢ったことはねぇ 別嬪さんだそうだが母親から保護願いが出てる」

「わかりました 何時にどこに行けばいいっすか?」

「俺は今から向かうが 多分1〜2時間は余裕がありそうだ」

「了解っす 適当に時間見て駆け付けます」

「俺んとこに写真が送られてくることになってるからそれ回してくれ」

さてと、どんな娘っ子がやってくるんだか。
逢ったこともねぇし、顔も知らねぇ。
話したこともねぇ娘っ子がなんで俺んとこへ来るんだ?
たまたま母親の莉子とSNSで親しくなっただけじゃねぇか。
その母親でさえ、顔も本名も知らねぇし、たまたまそこに居合わせた娘っ子と簡単な短文のやり取りしただけだぜ。
もちろん俺の顔も知らねぇだろうしなぁ。
今頃生涯何度目かのモテ期の到来かい?ってそういう話じゃねぇよな

オッ写真が来た。
確かにいい女だねぇ、ドンピシャ俺の好み。
カモネギかぁ…………。
この写真、応援の連中にばら撒く時に俺の姪っ子だって釘差しとかないとな。

つづく


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