ミリしら解説No.16
2024年 流行語大賞ノミネート30語
No.01 アサイーボウル
No.02 アザラシ幼稚園
No.03 インバウン丼
No.04 裏金問題
No.05 界隈
No.06 カスハラ
No.07 コンビニ富士山
No.08 侍タイムスリッパー
No.09 初老ジャパン
No.10 新紙幣
No.11 新ＮＩＳＡ
No.12 ソフト老害
No.13 トクリュウ
No.14 南海トラフ地震臨時情報
No.15 猫ミーム
No.16 はいよろこんで
No.17 ８番出口
No.18 はて？
No.19 ＢｅＲｅａｌ
No.20 被団協
No.21 50-50
No.22 ふてほど
No.23 ＢｌｉｎｇーＢａｎｇ－Ｂａｎｇ－Ｂｏｒｎ
No.24 ブレイキン
No.25 ホワイト案件
No.26 マイナ保険証一本化
No.27 名言が残せなかった
No.28 もうええでしょう
No.29 やばい、かっこよすぎる俺
No.30 令和の米騒動
第三弾は『はいよろこんで』
皆さんは三助という職業をご存知だろうか？
ひょっとするとやってもらったことあるよという方もいらっしゃるかもしれない。
三助とは、江戸時代中頃から現代における日本の銭湯で働いていた、男性労働者のことであり、釜焚きや下足番、または入浴客の背中を流すなど、銭湯における様々なサービスに従事する者のことをいう。
ちなみに現在「三助」という言葉は、職業的差別表現にあたるとして放送禁止用語となっている。
当時の風呂屋には男女の区別がなく、相手の裸を見たり見られたりの世界であったという。因みににお触りは禁止だったそうだ。
また、安土桃山の頃より江戸時代初期まで風呂屋には湯女という垢すりや背中洗いのサービスを男女問わずする女性がいた。
しかし、彼女らの仕事は次第に性的サービスへと移行していったため禁止とならざるを得なかった。互いに裸同然の状態で背中を洗ったりするのだから、当然の成り行きとも言える。
なぜ女性はダメになり、男性はOKなのかは疑問であるが、代わって登場したのが湯女同様男女問わずに垢すりや背中などの洗いのサービスを行うのが三助である。
浴室で三助が行う、客の身体を洗ったり垢すりなどの接客を「流し」という。
記録に残っている最後の三助は東京都荒川区東日暮里の「斉藤湯」に一人いたのだが、高齢を理由に2013年12月29日をもって「流し」を終了した。
三助には厳しい序列関係があり、まずは釜焚きの材料を集めてくる外回りから始まり、下足番、釜焚きを経て流しに参加するようになって初めて三助と名乗ることができるようになる。
この間10年を要するとされ、三助となればそれなりの収入も得られるようになり、長年勤めた者は雇用主に代わり番台を勤めることもあった。
お客は全裸、三助は褌一丁の姿。
客によってはイタズラを仕掛けたくなるほどのこともあるだろう。逆に客側からイタズラを仕掛けられることもあっただろう。
しかし、三助は浴場なのに欲情してはいけないという不文律を課せられる。それができない者は一流の三助になれない。心頭滅却すれば火もまた涼しの心境だろうか。
三助からのイタズラは減らすことができても、客からのイタズラは制限がない。まして男前の三助であればその度合いは増すというものだ。
「ちょっと、そこの三ちゃん、背中流しておくれよ？」
「へい、少々お待ちを」
「それからちょっと手を怪我しちまってさ、前の方もお願いできるかい？」
「へいよろこんで」
これが語源とされている。
時代は江戸末期。場所は浅草にあった「六角屋」という銭湯。そこに三助として従事した源蔵の発した言葉であると公衆浴場史に記録されている。
今回の流行語大賞にノミネートされた「はいよろこんで」は、ここまで遡ることができる由緒正しき言葉なのだ。
大賞は逃したが、今後も語り継がれていくべき言葉であると筆者は確信している。
元社会部記者 三羽 烏
Ariana Grande / popular
赤かな？ 白もいいかも？ 紅白って目出度いよね