見出し画像

最近走りましたか?

走らない 走りたくない 走るの? 走れない 走ろうなんて・・・
最早スポーツとして走ることは・・・・・・ないはずだ。


最近走りましたか?
そう問われて気が付いたのだが、何故ツラい思いをしながら走っていたのだろうと思った。

そう聞いてきたのは相撲取り並みの体格をした同じ職場の友人。意外といっては失礼になるが彼の動きは俊敏だ。だが「君は走れないだろうなあ」と思っているとは本人に言えるはずもない。

しかし振り返れば私も「過去は走っていた」に過ぎず、現在では彼と同類になる。ひょっとすると彼より状態はヒドいかもしれなく「いや、腰と膝がもう限界でさ、走るなんて昔の話だよ」と言い訳に忙しい。


小さい頃は身体が弱く、何度か入院もしていた私は運動が苦手だったし、足が速かった覚えもない。しかし私とスポーツとの関係は小学4年生を境にして劇的に変化することになる。

4年生になった頃、家の近くの公園で父とキャッチボールをした。それより前にキャッチボールの記憶がないから、おそらくこれが父と初めてのキャッチボールだったのだろう。
2~3メートル離れた先から、父がソフトボールを下から軽く投げる。私の左手にはちゃんとグラブがあるのだが、やってきたボールをグラブではなく、顔面で受ける。そんな始まりだった。
今から思うとなんと反射神経の鈍いことかと思う。そしてそれから毎日のように父の特訓が始まったのだ。

特訓の甲斐あってか、元々の素質が開花したのか (私的には元々の素質と思いたい) 、6年生になる頃には中高生や大人に混じって野球ができるまでになった。我ながらスゴい進歩を経て中学生を迎える。

普通であればそのまま野球部に所属して野球漬けの日々となるのだろうが、何故か陸上部に入った。
特に理由はなかったはずだが、走ることはスポーツの原点であると教えられていたこと、父が学生時代に陸上の短距離選手であったことが頭の中にあったからかもしれない。

因みに我が子も陸上部で学生時代を過ごし、今はとある陸上部の顧問などをしているから縁というのは不思議なものだ。


目立った成績もほとんどないまま3年間続けられたのは、ひとえに先輩諸氏、同輩、後輩たちといるのが楽しかったからだが、ひとつ面白いエピソードをご紹介しよう。
同じクラブの短距離選手で、どんなに頑張っても勝てない同輩がいた。
ある日、リクレーションの一環で陸上部がラグビーをすることになった。何故ラグビーなのかは不明だが、誰かが言い出したのだろう。
くだんの短距離選手は相手チームとなったのだが、私がボールを持って走ると真正面から彼が向かってくる。走力からするとすぐに捕まってしまうのだが、以外にもフェイントですぐに抜けてしまったのだ。
思うに彼は真っ直ぐ走るのはとても早いが、きっと障害物競走などは苦手なのだろう。

高校でも陸上部をと思ったが、どうにも馴染めそうもない雰囲気だったので、私の運動部人生はここで幕を下ろす。


次に運動らしい運動をするのは35歳を過ぎてからだ。
この間の約20年、草野球の助っ人に呼ばれる程度の運動しかしなかった。
我が事としてはこの間に結婚し子供も生まれているのだが、その子が3つか4つの頃、妻の勧めで小学生でのスキー教室以来のスキーを始める。当然うまく滑れるはずはなく、初年度は散々な出来だった。
基本的に冬のスポーツであるスキーはシーズンに数回程度行くだけだからそんなに上達するわけもないのだが、2年目が終わる頃にはショートスキーを履き、ストックも持たずに滑っていたのだから驚きだ。
これはマズい、自慢話のようになってしまった。
しかしこれも20数年後、妻が妻で無くなったことで止めてしまった。

少し期間は重複するのだが、まだ元妻が妻であった時代、50歳は過ぎていたが、子供に騙されてマラソンを始めた。
騙されたというのは語弊があるかもしれないが、勝手に申し込まれて、この日が本番だといわれてもなぁ。

結局この日を境に夫婦揃ってフルマラソンに向けて練習することになる。
大会は秋たけなわの頃だが、夏を制する者はレースを制するという言葉に乗せられ、暑い中頑張って練習したものだ。
その甲斐あってか制限時間内に完走することができた。そして充実感を得た。そしてこの日からマラソンにのめり込むようになる。

でも自分の実力を過信することはなく、制限時間の長い大会を探し、エントリーし完走する。あくまで完走するために走るだけだ。
沿道の方々の熱い応援に少し張り切ってみたり、沿道の方々とハイタッチしながら走ったり、疲れたら少し歩いてみたり、何よりもエイドステーションでは立ち止まって食べたり飲んだり。
楽しかったなぁ。

同じ都道府県の大会には出ないというルールを決め、2府8県に渡りレースを続けてきた。もちろんすべて完走だ。
しかし、いつの頃からか若い頃に痛めたことのある腰と両膝が悲鳴を上げるようになり、遂にジョギングそのものを断念してしまう。

最近は横断歩道を渡っている時に信号が点滅しだしたりすると、急いで渡ろうとするのだが走っているというよりは、ただ急いでいるという感じで、それも気持ちだけがいているというのが正解のようだ。

このまま老いていくのかと思うとやりきれないなぁ。


2件目の参加となります。
小牧幸助様 よろしくお願いいたします。

#シロクマ文芸部 #走らない  ♯走りたくない ♯走るの? ♯走れない ♯走ろうなんて ♯スポーツ ♯相撲取り ♯俊敏 ♯腰と膝が限界 ♯昔の話 ♯入院 ♯苦手 ♯劇的 ♯変化 ♯キャッチボール ♯顔面で受ける ♯特訓 ♯素質 ♯開花 ♯進歩 ♯野球部 ♯陸上部 ♯エピソード ♯ラグビー ♯フェイント ♯障害物競走 ♯スキー ♯フルマラソン ♯夏を制する者はレースを制する ♯完走 ♯充実感 ♯エイドステーション ♯ジョギング ♯断念 ♯横断歩道 ♯老い