接吻代行業
接吻代行なんて奇妙な仕事があるとは思ってなかった。
軽くおでこや頬にキス、唇へのキス、さらにディープなキスまでそのレベルに応じて金額も変化する。
今回の依頼者はさらに上の『状況に応じて変化を求められるマルチタスク型』をご所望だそうだ。一番金額が高いのは間違いないのだが、こちらも依頼者の意図を汲み積極的に攻めることも考慮しないといけなくなるのでなかなか厄介だ。
依頼者になぜ接吻代行に申し込まれたのか話を聞くと、お相手の方の口の匂いが我慢できないとのことだった。
一度きりならいいだろう。
だが結婚する予定だという。
じゃあ代行の１回はあまり意味がないんじゃないのか？
「こちらは終身契約ってございます？ 年間三百万くらいでどうかしら？」
「はぁ？」
「一生彼とキスしたくないのよ」
キスが必要かもとされる、おはよう、おやすみ、行ってらっしゃい、お帰り、夜の営みなどなど。その場でキスするだけ。それが三百万。悪い話ではなさそうだ。
「喜んで」
(410文字)
Creedence Clearwater Revival / Proud Mary
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