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古事記百景 その二十二

大国主誕生

故其櫛名田比売以カレソノクシナガヒメヲモテ
久美度邇起而クミドニオコシテ
所生神名ウミマセルカミノミナハ
謂八嶋士奴美神ヤシマジヌミノカミトイフ。…自士下三字以音下效此…
又娶大山津見神之女マタオオヤマツミノカミノムスメ
名神大市比売ナハカムオホイチヒメニミアヒテ
生子ウミマセルミコ
大年神オホトシノカミ
次宇迦之御魂神ツギニウカノミタマノカミヲウミタマヒキ。…二柱宇迦二字以音…

兄八嶋士奴美神ミアニヤシマジヌミノカミ
娶大山津見神之女オホヤマツミノカミノムスメ
名木花知流比売ナハコノハナチルヒメミアヒテ。…自知以下二字以音…
生子ウミマセルミコ
布波能母遲久奴須奴神フハノモヂクヌスヌノカミ
此神コノカミ
娶淤迦美神之女オカミノカミノムスメ
名日河比売ナハヒカハヒメニミアヒテ
生子ウミマセルミコ
深淵之水夜禮花神フカフチノミヅヤレハナノカミ。…夜禮二字以音…
此神コノカミ
娶天之都度閇知泥神アメノツドヘチネノカミニミアヒテ。…自都下五字以音…
生子ウミマセルミコ
淤美豆奴神オミツヌノカミ。…此神名以音…
此神コノカミ
娶布怒豆怒神之女フヌヅヌノカミノムスメ。…此神名以音…
名布帝耳神ナハフテミミノカミニミアヒテ。…布帝二字以音…
生子ウミマセルミコ
天之冬衣神アメノフユキヌノカミ
此神コノカミ
娶刺国大神之女サシクニオホノカミノムスメ
名刺国若比売ナハサシクニワカヒメニミアヒテ
生子ウミマセルミコ
大国主神オホクニヌシノカミ
亦名謂大穴牟遲神マタノミナハオホナムヂノカミトマヲシ。…牟遲二字以音…
亦名謂葦原色許男神マタノミナハアシハラトコヲノカミトマヲシ。…色許二字以音…
亦名謂八千矛神マタノミナハヤチホコノカミトマヲシ
亦名謂宇都志国玉神マタノミナハウツシクニタマノカミトマヲス。…宇都志三字以音…
并有五名アワセテミナイツツアリ


櫛名田比売クシナダヒメ速須佐之男命ハヤサスラオノミコトの間に八島士奴美神ヤシマジヌミノカミをお生みになりました。

又、大山津見神オオヤマツミノカミの娘の神大市比売カムオオイチヒメ速須佐之男命ハヤサスラオノミコトの間に大年神オオトシノカミ宇迦之御魂神ウカノミタマノカミの二柱の神をお生みになりました。

なお、八島士奴美神ヤシマジヌミノカミ大山津見神オオヤマツミノカミの娘の木花知流此売コノハナチルヒメを娶られ、布波能母遅久奴須奴神フハノモジクヌスヌノカミがお生まれになりました。

布波能母遅久奴須奴神フハノモジクヌスヌノカミ淤迦美神オカミノカミの娘の日河比売ヒカワヒメを娶られ、深淵之水夜礼花神フカフチノミズヤレハナノカミがお生まれになりました。

深淵之水夜礼花神フカフチノミズヤレハナノカミ天之都度閉知泥神アメノツドヘチネノカミを娶られ、淤美豆奴神おみずぬのかみがお生まれになりました。

淤美豆奴神おみずぬのかみ布怒豆怒神ふのずののかみの娘の布帝耳上神ふてみみのかみを娶られ、天之冬衣神あめのふゆきぬのかみがお生まれになりました。

天之冬衣神あめのふゆきぬのかみ刺国大神さしくにおおのかみの娘の刺国若比売さしくにわかひめを娶られ、大国主神おおくにぬしのかみがお生まれになりました、またの名を大穴牟遅神おおなむぢのかみ、またの名を葦原色許男神あしはらしこおのかみ、またの名を八千矛神やちほこのかみ、またの名を宇都志国玉神うつしくにたまのかみと五つのお名前をお持ちです。


※大国主神は速須佐之男命から数えて七代目になります。


「太安万侶です。今回は速須佐之男君と大国主君に来てもらいました。まず須佐之男君は今どこにいるの?」
「須賀の宮にいますよ」

「前回も聞いたけど、那岐君の了解はもらえたのかな?」
「多賀とのやり取りなんで少し時間はかかってますけど概ね了解の方向で」「もしも了解が得られないなら、母上のところへ行くのかな?」

「安万侶さんが余計なこと言うから、あれ以来妻の機嫌が悪いんですよね」
「いやあ、それは自業自得じゃないの?」
「独断専行が僕の持ち味ですから」

「だからそういうところだって言ったと思うんだけど」
「でも、生まれてからずっとこのスタイルなんで、今さら変えようとは思わないですよ」
「それももう終わりかな?」

「どういうことですか?」
「世代交代が進むんじゃないの?」
「七代も後の末裔では世代交代と言わないでしょ」

「大国主君は今後をどう考えてるのかな?」
「どうもこうも、私は生まれたばかりで、しかも私には大勢の兄がいるんですよ。どうして私が注目されるのかよく分かりませんよ」
「でもしばらくは君を中心にした物語が展開されることになっているけれど」

「先程チラッと原本を見せてもらいましたが、出来過ぎじゃないですか?」「自分ではそう思ってるんだね」
「先程も言いましたけど、大勢の兄たちがいる中で、荷物持ちや小間使い程度に使われている私に大きなことが成せるとは思えないんですよね。それにこれも先程言いましたけど生まれたばかりなんですから」
「先の話は余りバラさない方がいいかもね」
「ああ、すみません。でも、それしか話すことがないんですよ。生まれたばかりなので。それに遥か昔に過ぎた話なのでしょ? 先の話じゃないですよね」
「言い方が悪かったかな。読んでくださる方に配慮してネタバレは控えたいなと思ってるということだよ。だから協力してくれるかな?」
「そういうことなら」

「じゃあ質問形式にしようか。まず須佐之男君に対してどんな印象を持っていますか?」
「ご先祖ですね」
「それだけ?」
「逸話も含め細かい話は色々あるんでしょうけど、七代も前のご先祖ですよ」

「でも須佐之男君だよ」
「確かに有名ではあるんでしょうけど、じゃあ聞きますが安万侶さんは七代前のご先祖のことを考えたことはありますか?」
「ウチのご先祖は有名じゃないけど確かに七代も前となると人物像なんか以前に名前すら知らないね」

「いくら有名でも私からすれば遥か昔のご先祖なんですから、ああそんなものかって感じですよ」
「でも接点はあるんだよね」

「そうなんですよね、接点ができてしまうんですよね」
「そこから先はネタバレになるから」
「こういう話って結構難しいものなんですね」

「今回は本文の内容が単純明快で短かったからね」
「そう、誰と誰が結婚して誰が生まれたってだけですもんね」
「膨らませようがないんだよね」
「今日初めて聞いた名の先祖もありましたよ」

「名と言えば、多くの名前を持ってるね」
「別に自分で名乗った訳じゃないですから」
「誰かにつけられた綽名のようなものなのかな?」
「まあ、それに近いですよ」
「今後の活躍に期待していますね。須佐之男君も元気でね」

「僕、最初にちょこっと話しただけなんだけど、これでオーケーなの?」
「何か話したいことあったの?」
「特にあるわけじゃないけど、これで終わるんなら何で呼ばれたのかなって」
「確かにそうだね。コーディネーターは何を目論んで君を呼んだんだろうね」
「僕に分かるわけないでしょ」
「それじゃあちょっと質問させてもらおうかな。櫛名田比売は八俣遠呂智から救った・・・」
「それ前回質問しましたよ」
「だったら・・・今日は終わりにしようか。お二人ともどうもありがとうございました」
「そんなぁ」


※お詫び※
 毎週月曜日は『訊く者』を掲載していましたが、
 今週間違って『古事記百景』を掲載してしまいました。
 来週からは元に戻しますのでご容赦を。


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