今朝の京都は曇り空です。1日を通しては曇りのち雨の予報です。午前7時の気温は18℃。日中は24℃予報です。雨の降り出しはおやつの時間前後から、夜はしっかり降る予報です。
「荼枳尼天は元々インドの神様『ダーキニー』といいますのや。他にも荼吉尼天、吒祇尼天、吒幾尼天などと書かれることもあるそうどす。ダーキニーは紀元前には性の神様として崇められてましたんや。インドの後期密教では性的要素が相当強くなり、密教修行者の性的パートナーの役割をも担っていたということどす。神話ではカーリーの眷属として描かれ、夜に尸林 (中世インドの墓地・葬儀場・処刑場) で人肉を食べるという夜叉や羅刹などの存在やったそうどすわ」
「性の神で人肉を喰らう夜叉ですか。荼枳尼天はずいぶん複雑な人生を歩んでおられるようだ」
「ではなぜ夜叉や羅刹が天部の仏様として崇めらるようになったのか、それは大黒さんに説得されたからやといいます。大黒さんは『生きた人の肉を食べるのを止めなさい。その変わり死んだ人の肉なら食べても構わない』と説得するんどす。でも彼女は『生きた人の心臓には『人黄』という生命力の源があり、それを食べないと生きていけない。死んだ人の肉や心臓は、鬼神が先に食べてしまうから私は食べることができない』と訴えます。大黒さんは『ではお前に一つ能力を授けよう。人間は誰でも絶対に死ぬ、だがいつ死ぬのかは誰にも分からない。お前には半年前に人の死が分かる能力を授けよう。お前は半年間その人間を護りなさい。そして亡くなると同時に心臓や肉を喰らえば良い』と。この提案を受け入れた彼女は、この能力に感謝し徐々に仏法に帰依するようにならはります。そして最終的には人の肉を喰らうことを止めて、仏の守護を役割とする天部の神とならはるんどす」
「見事な転身ですね。『心臓を食べないと生きていけない』と言っていたのに、それすらも止めて見事に神になるのですね。天晴じゃないですか」
「中国の仏典では荼枳尼天の天は付けへんのやて。荼枳尼天と記すのは日本だけやということどすわ。荼枳尼天が天部の神にならはってからは、身分の貴賤や貧富に関係なく、どんな人の願いも聞き届けられるさかい、老若男女問わず人気を博したということどす。でも一度信仰してしまうと、その信仰は捨てることがでけしまへん。信仰を捨てると荼枳尼天は祟るといわれてるそうどす。ひょっとすると、荼枳尼天の信仰を捨てんと、他の神さんを新たに信仰しゃはっても、なんぞ面倒があるかもしれまへんなぁ」
「よくお調べですね。勉強になります」
「おおきに。はいコーヒーどうぞ」
「ありがとうございます。ああこの香り、生き返ります」
「よっぽどコーヒーがお好きなんどすなぁ」
「そうですね。一日に何杯飲むでしょうか、少なくともお酒より多いですよ」
「なんや詰まらん、この後お酒でもと思ってましたのに」
「いえいえ、コーヒーと荼枳尼天の話で充分です」
「そうどすか?」
「質問してもよろしいですか?」
「へえ、どうぞ」
「荼枳尼天が天部の神になった経緯は分かりましたが、どうして稲荷神と習合することになったのでしょう?」
「焦ったらあきまへん、これからどすがな」
「すみません。このような話しのできる方が結構少なくて、今日はホントに楽しいです」
「それはよろしおした」
「話の途中で申し訳ない、厚かましいですがもう一杯コーヒーいただけますか?」
「へえどうぞ」
「話の腰を折って申し訳ない、良かったら続きをどうぞ」
「古来よりお狐さんは、古墳に巣穴を作り、塚に巣穴を作り、時には屍肉を喰らい、人が死ぬ時を知り、人の精気を奪うといわれてきたんどす。また、お稲荷さんは豊穣の神であり、豊饒の作物を天敵から守るためにお狐さんがいらっしゃる。これでお稲荷さんとお狐さんが繋がりますやろ? 一方で荼枳尼天は白狐に跨がる天女の姿で表されることが多く、稲荷権現、飯綱権現と一緒やと思われてます。閻魔天曼荼羅では、荼枳尼天が白狐に跨がる天女として描かれてるそうどす。ちょっと陳腐に感じますけど、お狐さん繋がりで、お稲荷さんと荼枳尼天が一緒にならはるわけどす。元々ダーキニーが豊穣を司る農耕神どしたから、習合には大きく貢献してるんやと思いまっせ。こうして稲荷神と荼枳尼天は習合し、神社でも寺院でも稲荷が祀られるようになるということどす」
「なるほど。若干苦しい言い訳のような気もしますが、これですべてが繋がったということですね」
「そうどすなぁ」
「稲荷神は戦勝の神とちゃいますけど、荼枳尼天には剣や鎌などを持つ姿が一部に描かれてることで、古来より様々な祈願をする方々がぎょうさんいてはりましたんや。豊川稲荷の辺りでは信長はん、秀吉はん、家康はんと天下統一に向かった方々も、荼枳尼天に祈願に訪れはったのは有名な話どす」
「基本的には商売の神なのに、荼枳尼天の影響力はそれほど大きいということですか?」
「そういうことでっしゃろなぁ」
「それで明治の廃仏毀釈で分離したと……」
「その前に、山名はんと細川はんの戦がありますのや」
「応仁の乱ですね」
「そうどす。あんさんも歴史好きを自任してはるくらいやから、ようご存じどすなぁ」
「実は通り一遍の勉強だけで、それほどでもないんです」
「そうは見えまへんけどなぁ」
「ありがとうございます」
「山名はんと細川はんの戦は、どっちが勝たはんのやろ」
「どっちが勝たはっても、都がこの有様、どないもなりまへんやろ」
「なんや知らんけど、戦は洛中から洛外に移ったようどっせ」
「洛中にはこれ以上燃えるもんがありまへんしな」
「今年は祇園さんの御霊会も、お稲荷さんのお祭りもあらへんのやて」
「食べるのも一苦労やのに、お祭りどころやありまへんやろ」
「そらそうどすわなぁ」
「お稲荷さんもひどい有様やと聞きましたえ」
「都には神社もお寺も残ってまへんのやろ」
「えらいことになりましたなぁ」
都雀たちは、こんな時でも集まってワイワイガヤガヤ。
逞しささえ感じますね。
つづく
◆新規掲載の企画 (紹介は初日のみ)
11/4 23:59まで
11/30まで
11/30まで
12/25まで
12/31まで
◆近々最終日を迎える企画 (今日+7日)
11/2夜まで
11/3まで 朗読者と作品の募集
11/4 23:59まで
◆最終日までしばらく時間のある企画 (今日+30日)
11/10まで
11/13まで
11/17まで
11/30まで
11/30まで
11/30まで
◆最終日までずいぶん時間のある企画 (今日+30日以上)
12/22まで
12/25まで
12/31まで
2025/1/31まで
2025/7/5まで
◆期限なし企画が新しい順に並んでいます。
※投稿された日付より15日間で削除されます。ただし、削除されてもイベントが終わったわけではありませんのでお間違いなく。
11/15で削除します。
11/8で削除します。
こちらのイベントは終了しました
都々逸会場にご投稿いただいた方々の作品です
たくさんの方々の作品は読むだけでも楽しいです
ホントにありがとうございました
11/8 22:00~
11/16 22:10~
1曲目は U2 の I Still Haven't Found What I'm Looking For 。
2曲目は SIMON & GARFUNKEL の Bridge Over Troubled Water 。
3曲目は RAY CHARLES の Georgia On My Mind 。
リクエストの受付は終了しました。
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