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裏稼業の女
剣の腕なら兄より上
女だてらと言われても
世の過ちを正すため
飛び込んだのが裏稼業
悪逆非道の輩ども
素っ首洗って待ってなさい
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大旦那
今回も上手くいきましたなぁ
当たり前や
ワシが仕込んだんやからなぁ
今夜もササが
美味しゅうございますわ
たんとお飲み
へえおおきに
それで大旦那
今回のワテの取り分は
どれくらいになりまっしゃろ
そうやなぁ
切り餅五つくらいには
なるやろなぁ
そんなにいただけますのか
ほんならとびきりの芸妓揃えて
一席設けなあきまへんな
そんなことせんでええ
あんさんの協力があってこそ
ワシも儲かるっちゅうもんや
それは嬉しいお言葉ですなぁ
変わらずに精進させてもらいまっさ
ああ、そうしておくれ
ちょっと飲み過ぎたやろか
少〜し寒うなってきました
ちょっとご不浄へ
ああ、ゆっくりしといで
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庭の灯篭の灯りが揺れたような気がした
ちょっと風が出てきたんかなぁ
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父を殺害しその役職を奪い、仕立て上げられた仇を兄に追わせ、残された母と私は親類縁者からの援助もなく、自らの労苦によりなんとか糊口を凌いでいたが、母が病に倒れ、私も女衒に捕まりそうになった。
体術を含め武術には自信があったので、その場を逃げ出し事なきを得たのだが、仇討ちを成し遂げた兄が手傷を負い、実家付近まで戻るも力付き亡くなったことさえ数日後に知ることとなる。
それからそこそこの時を経、その元凶を作った輩が判明したのはつい先日のこと。
まずは絵図面を書いたヤツ、そしてその片棒を担いだヤツ。
蔵に収まる証文類と千両箱はいただくとして、殺めてから家屋敷に火を放つか、火を放ってから殺めるか。
恨み言の一つもいうなら後者となるが、一つでは済みそうもなく、言ったとて詮ないこと。
バッサリと殺ってやるから、紅蓮の炎に焼かれておしまい。
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焼け跡からは二体の焼死体が見つかった。大店の主人が亡くなったこともあり火付盗賊改が出張ったが、酒の席での火の不始末との決着をみた。
不思議なのはその酒の席の夜、見知らぬ女性が番頭や奉公人たちの家を訪れ、普段の何倍もの金子を渡し、解雇を通告されていたことだったが、阿漕な稼ぎ方をしていただけに惜しむ声などはなく、ザマアミロなどの罵倒する声が聞こえてくるほどだった。
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残るはこの件の大元、父の命と職を奪ったあやつ。
さてどうやって仕留めるか。
この物語は上記の『水火社天神天満宮』の続きになります。
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