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姪っ子物語 その二

第二章 滞在

姪っ子物語 その一はこちら⇩⇩⇩

母親の言い分が正しければ、次かその次くらいの新幹線だろうな。


「オジサマ、タカのオジサマですよね?」

「オメエが莉子の娘っ子か?」

「母さんのいい人のアニキですよね?」

「あいつにはちゃんと旦那、そうだオメエの父ちゃんがいるだろ。母ちゃんのいい人なんて言うんじゃねぇ」

「母さんは父さんの前でも私のいい人って言ってますよ」

「あの野郎。それよりオメエなんで家出なんかした?」

「家出? あっそうか母さんの早とちりね」

「早とちりだぁ?」

「これが母さんに送ったLINE」


『今、家を出ました。オジサマに会いたくなったので行ってきます。心配しないでください』


「家出じゃねぇのか?」

「この文面が家出に見えます?」

「あの野郎」

「でも母さんは本気で家出だと思ってると思うな」

「なら無事着きましたって連絡してやれ」

「勘違いのままでもいいんじゃない?」

「俺は連絡してやれって言ったぞ」

「はーい」


「もしもし母さん、京都に着いたよ、それからオジサマと合流できたから心配しないでね。…………うんそう、うんわかった。…………オジサマ、母さんが代わってって」

「おう俺だ、娘っ子は無事保護したぜ。このまま送り返すか?…………何だってしばらく預かれだって?…………何言ってんだオメエ。オメエのようなおばはんならいざ知らず、こんな年若ぇ娘っ子預かれるはずねぇだろ。間違いでもあったらどうすんだよ?…………何だぁそれが狙いだとぉ、ふざけんじゃねえぞ。…………あぁ分かった、2~3日京都見物させてから送り返せばいいんだな。…………その程度なら問題ねぇだろ。…………あぁじゃあな」

「母さんは何て?」

「2~3日京都見物させてやってくれってさ。ところでオメエ宿は?」

「オジサマんところでいい」

「バカ言ってんじゃねぇぞ」

「オジサマんところがいい」

「どこかホテル用意すっから」

「オジサマんところがいい。それとも私が行くと都合の悪いことでもあるのかなぁ?」

「わかった、じゃあ俺んとこへ来い。俺が別の場所へ行くから」

「それじゃ意味ないでしょ?」

「オメエなぁ、勘弁しろよ」

「オジサマ」

「何だよ」

「そのオメエっていうのやめません? 私にも名前があるんです」

「知ってるよ」

「はいオジサマ、私の名前は?」

「確かミクだよな」

「良くできました。私の名前は未来と書いてミクと読みます」

「だから知ってるって」

「私はオジサマにオメエじゃなくてミクって呼んで欲しいんです」

「分かったよ。だけど寝るのは別々の部屋だぞ」

「今日はそれで我慢します」

「オメエなぁ」

「またオメエって言った」

「そりゃ言うだろ、俺にとっちゃミクよりオメエの方が馴染みがあんだよ」

「オジサマがオメエって言うのは誰にでも使えるからでしょ? だけど私はオジサマに特別扱いしてほしいの。分かってくださるかしら?」

「理解はできるが承服はできん」

「どうして?」

「絶対間違う」

「間違ったっていいんですよオメエじゃなければね。ただし他の女の人の名前だったらその都度ツッコミますからね」

「だからヤだって言ってんじゃねぇか」

「はい、もう諦めてね。それよりオジサマお腹すいたぁ」

「ったく。それで何が食いてぇんだ? 焼肉か? 寿司か? それとも昼間っから料亭でも行くか?」

「お昼ご飯なんだからおばんざいでしょ?」

「おばんざいだぁ? 若い奴らは焼肉か寿司って相場が決まってんじゃねぇのか?」

「私は京都のおばんざいが食べたいの」

「分かったよ。だけどちょっとだけ待ってろ」

「どうしたの?」

「オメ……じゃねぇミクが見つからないと困るから応援頼んでんだ。そいつらに礼だけはしとかないとな」

「おぅ俺だ、見つかったわ。それで頼みがあるんだけど、新幹線の八条口改札まで来てくんねぇか。おぅ待ってるぜ」


おばんざい(御晩菜、お番菜、お晩菜、お万菜)とは、昔から京都の一般家庭で作られてきた惣菜の意味で使われる言葉である。
元来は京都料理に限らず、嘉永二年出版の献立集『年中番菜録』には「民家の食事にて関東は惣菜といい関西にてお雑用という日用の献立を集める。珍しい料理、高価な料理は番菜にならないので除き、女房まかない女の思案に詰まった時の種本とする」とあり、119種の献立を列挙する。
しかし、実際は京都市民はこういう言い方はほとんどせず、単に「おかず」と呼ぶ。
京言葉のように広まったのは、一説には1964年(昭和39年)1月4日から朝日新聞京都支局が「おばんざい」というタイトルの京都の家庭料理を紹介するコラムを連載したことからという。
連載当時もこういう言い方をする地元民はほとんどいなかった。

Wikipediaより


「おぅ淳、悪かったな、こいつが姪っ子のミクだ、2~3日俺んところにいるからなんかあったら頼まぁ。それからこの荷物、俺んところに持っていってくんねえか、お嬢は腹が減ったんだとよ」

「淳さん、ミクです。お手数かけます」

「オッス」

「何照れてんだ? まぁいい。それで今日何人来てくれた?…………そうか礼言っといてくれよ。それから財布預けるから、焼肉でも寿司でも鰻でもおばんざいでも食わしてやってくれ。あとで荷物と一緒に届けてくれればいいから」

「おばんざいっすか?」

「お嬢がご所望でな。京都の昼ごはんはおばんざいなんだそうだ」

「それって旨いんすか?」

「店によって味も種類も違うからなぁ」

「俺もいつか食ってみたいっす」

「そんなに高くねぇぞ。それに昼間は定食みたいになってる店が多いはずだから食ったことあるんじぇねぇか?」

「淳さんもご一緒します?」

「ミク、適当なこと言うんじゃねぇ」

「だってぇ」

「淳には俺が頼んだ用があるんだ。今日応援に来てくれたヤツらを労うとか、オメ……じゃねぇミクの荷物を家まで届けるとかな」

「荷物なら私が自分で持ちます」

「今日はいいんだよ」

「オジサマはお仲間に優しくないのね」

「ミクさん、それは違います。アニキはいつも俺たちのことを考えてくれてますよ。でも今日はミクさんのことで一杯一杯みたいだ」

「淳、テメエ」

「じゃあ明日のお昼はご一緒しません?」

「そりゃいい、若いもん二人でおばんざい食いに行ってこい。ついでに京都観光もしてこいよ」

「オジサマは行かないの?」

「若いもん同士の方がいいだろ?」

「私はオジサマと行きたい」

「俺もアニキと行きたいっす」

「二日も続けておばんざいかぁ? 肉食いてぇんだけどなぁ」

「じゃあ、その次の日はお肉にしましょう」

「昼飯なんざその日の気分で良くねぇか? 何で2日も前から決めてんだぁ」

「そんな日があってもいいでしょ?」

「ったく」

つづく


う〜ん、なんだか3話で終わる気配が見えない。どうしたもんかなぁ?

Ed Sheeran / Under the Tree (from "That Christmas")

第一印象は恐い人とよく言われる。 んだとぉこらぁ(巻き舌で)。 


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