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シェアハウス【シロクマ文芸部】

月めくりをめくる。次は2023年12月か。遅くなったが冬支度を始めないとな。

俺の暮らすシェアハウスには6部屋あり、それぞれの部屋の扉には月めくりが掲げられている。そしてみんなが過ごすリビングダイニングにも月めくりがあり、合計7つもの月めぐりがあるのだが二つとして同じものはない。
それは単にデザインが違うとか発行しているメーカーが違うとかではない。むしろデザインは統一されているようだが表示されている月が違うのだ。

1号室の田中君は一応学生さんだが若干引きこもりの傾向にあり、リビングへ出てくることはあってもほとんど外へ出ることはない。
毎日暑い暑いと言っては楽しみに取っておいた俺のアイスクリームを勝手に食べたり他人の飲み物を平気で飲んだりする困ったヤツだ。もちろん多少多めにお金は払ってくれるのだがそうじゃないだろって言いたくなる。
ある時買い物に行こうとして、買ってきてほしいものがあったらついでに買ってくるよって言ったら大量に頼まれたのでそれ以来聞かないことにしている。
彼の部屋の月めくりは2022年8月が表示されている。
あれほど暑いと言ってるが今年の方が断然暑いぞ田中君。

2号室の佐藤さんは会社員と自分では言ってるが、よれよれのTシャツといつも同じジーパンで出掛けて行く様は本当かと疑いたくなる。
彼の部屋の月めくりは2024年1月が表示されている。だから佐藤さんは帰ってくるとすぐに冬の衣装を身に纏い部屋に入って行く。寒暖差は激しいだろうね。
彼の言を信じるならば今年は暖冬だということだ。


リビングにある月めくりは世間と同じになっていて次の月も見ることができるが、それぞれの部屋の月めくりはその月が終る3日前にならないと次の月が見れない。しかも12月の次は1月というように順序良く並ぶことはない。
それから表示された月の気候が体感できるのは当たり前で、その部屋ではすべての情報がその部屋の月めくりに合わされる。未来の日付もあるのに一体どういう仕組みなんだろうね。

他の部屋も紹介したいんだけど今日はこれくらいでいいかな? 3日後には俺の部屋は12月になるから支度しなくちゃなんないんだよ。興味が湧いたらまた訪ねてくれればいいから。そうそう、今のところ全部屋入居者がいるけど、大体1年から2年で引っ越していくよ。お金持ちになってね。入居待ちがこの間500人を越えたくらいかな。じゃあまた。
エッ俺? 俺はここの住人でもあり、このシェアハウスの持ち主だよ。


今回もシロクマ文芸部さんの企画に参加させていただきます。
小牧幸助様 よろしくお願いいたします。

#シロクマ文芸部 #月めくり #シェアハウス