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影響を受けた作家の方々【イラストレーター私録】
今回はシンプルに、私が影響を受けた作風、好きな作風を持つ作家の方々をまとめようと思う。
以前の記事でもご紹介した方ももちろんいるが、今の作風に至ってからも好きな作風を見つけて影響を受けたことはたくさんあった。
現段階で思い当たる方々を勝手にご紹介させていただく。
五味太郎さん(絵本作家)
私のイラストを見てくださった方から一番に挙げられる名前が五味太郎さんだ。
代表作『きんぎょがにげた』をはじめとし、数々の絵本で知られるレジェンド絵本作家である。
以前の記事でも書いたが、私がイラストの色でつまずいた時最初に思い当たったのが五味さんの作品だった。
初期の頃から色を真似していたので似ていると思われるのは当然である。
特に私は差し色の入れ方・組み合わせ方が絶妙だと思っている。
どこか日本的ではない大胆さにいつも驚く。
色に加えて、私は子供の頃の将来の夢も絵本作家だったので、絵本に対する考え方にもとても共感している。
五味さんのインタビューなどを読むと、彼は絵本を「子供のためのよみもの」とは考えておらず、面白いと思ったことを自由に、自然に表現されているようだ。
子供のため、大人のため、という枠を超えた「絵本」というひとつの表現として創られた
五味さんの絵本に非常に憧れを持っている。
いつか自分もそんな表現ができたら、と思っている。
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時計、カレンダー、ステッカー…
ピート・モンドリアン(画家)
19世紀末〜20世紀のオランダ出身の画家。
デ・ステイルを代表する作家として知られている。
大学に入ってから作品を始めて知ったのだが、このような絵画(直線的な作品群)があるということが一番の衝撃だった。
私が色面フェチ(?)になったのはこの人の影響が大きい気がしている。
大胆な色面のカッコ良さ。キッパリと洗練されている感じ。
そして何よりこれが油彩で描かれているという「実はアナログ」みたいな背徳感(?!)に、どうしても惹かれた。
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フィリップ・ワイズベッカー(アーティスト)
日本の広告にも数多く起用されているアーティスト。
こちらも学生の時に見て知った作家さんだが、惹かれたポイントはなんと言ってもこの手跡感の残る直線と、歪なパースである。
直線というデジタルチックな要素に、歪んだパースという人間らしさみたいなものが融合した魅力に本当に目が輝いたことを覚えている。
今の切り絵のスタイルの普遍的な特徴である、直線とハッキリした色面×切り絵のアナログ感の組み合わせは彼の作品に強く影響を受けていると言って良いだろう。
亀倉雄策(グラフィックデザイナー)
日本のグラフィックデザイン界を代表するデザイナーの1人だ。
そしてなんといっても自分と同じ新潟県生まれ。
作品に出会ったのは高校生の頃だ。生誕100年を記念し、地元新潟で展覧会が行われていた。
当時はすでに美術系の大学に進むことを意識していただろうという頃だ。
数々の有名なデザインがあるが、やはり一番惹かれたのは1964年の東京オリンピックのロゴである。
考えてみればこれも色面だ。
この堂々たる日の丸の赤、画面の端の絶妙なところまで広がる正円、とにかく美しさに感激した記憶がある。
自分の色面フェチは実はこの頃からすでに始まっていたのかもしれない…
ジョルジュ・ルース(アーティスト、写真家)
廃墟空間を利用した作品を制作しているフランスのアーティスト。
言葉で説明するのが難しいのでぜひ一度作品を検索して見てほしい。
彼の作品を認識したのは、2018年の森美術館の企画展『カタストロフと美術のちから展』である。
(「認識」と表現したのは、過去に美術の教科書とかで見た記憶がある気がしたので。)
来館客としてではない。当時私は森美術館の監視員としてアルバイトで働いていた。
正直、美術館の非常に狭いスペースでは作品の魅力はなかなか分かりにくかったが、写真作品を見てその美しさに感動した。
空間に存在する色面。(また色面。)
ある1点から見た時にしか生まれないその形が、何より純粋な、概念的な色面を表現できている気がして、興奮する。
このような空間を使った表現は私の在学中の作品にも影響を与えた。
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豆腐の上に薬味で模様を描いた。
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立体を撮影し平面構成のように表現
ササキエイコさん(グラフィックデザイナー、イラストレーター、アーティスト)
以前の記事でも取り上げたが、私が切り絵という手法にたどり着くきっかけとなった作家さんである。
コラージュの作品の、静かで鋭い直線を初めて見た時は驚いた。
とにかく今まで見た「線」の中で一番エッジが効いていると思った。
そしてこんな作品を作る作家になりたいと強く思った。
森学さん(イラストレーター、グラフィックデザイナー)
こちらもコラージュの作品が特徴的な作家さんである。
おそらくSNSで個展のお知らせを見つけたのだったか。
メインビジュアルを見てすぐに惹かれ、個展を拝見しに行った。
抽象的なコラージュの平面作品はバランスがよく、こなれていてもちろん素晴らしいのだが、会場にあった立体作品もさらによかった。
白く塗られた木の立体の、辺の部分だけ着色が削られていて、アナログなエッジが空間に浮かび上がっているように見えた。
立体作品に挑戦してみたいと思ったひとつのきっかけになった。
安藤瑠美さん(クリエイター、レタッチャー、フォトグラファー)
建物の平面的な写真が特徴的な作家さんである。
構図の勉強のため、SNSやネットで建築写真を調べている時に出会ったような記憶がある。
初めて見た時「これだ!」となった。
何が「これ」なのかというと、先に述べたジョルジュ・ルースの作品などに憧れていた時、まさに平面に見えるような建物の写真を撮ろうと試みていたことがあったのだ。
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結果、あの卒業研究作品なども生まれたわけだが、私に写真の技術がもっとあったら安藤さんのようなタイプの作品を趣味でも作ってみたかった。
空間・建物が作る直線の美しさがこれでもかと表現されている。
自分がなんとなく頭で想像していた美しさをまさに表現してくれている方がいて、見つけた時は本当に嬉しかった。
建築写真の受賞作品
建築写真の話を少し掘り下げると、安藤瑠美さんの作品に出会う前から建物が作る直線には憧れがあった。
今の自分の作品で、静物を立体的な感じで描いているのは、実は建物を意識するところから始まっている。
特に写真は建物という空間が平面に出力されるので、より線が線として見えるのが美しかった。
加えて写真という表現は構図が重要な要素なので、画面づくりを学ぶ上でも参考にした。
構図に関しては現在もまだまだ発展途上だが…
今の作品は誰かの欠片でできている
以上が大まかに、私が影響を受けたりシンパシーを感じた作家さん達だ。
他にも大好きな作家さんはもちろんいるのだが、自分の作風や考えに関わりそうな方に厳選させていただいた。
今の自分の作品は、多くの要素がこのような素晴らしい作品から来ている。
それでも自分を通して出力すれば、紛れもなく自分の作品になるのだ。
最後になってしまうのだが、今回ご紹介させていただいた作家さんに、敬称を付けている方と略している方がいる。
言うまでもなく、全員のことをとても尊敬している。
これといって明確に区別を付けたわけではない。ごく一般人である私にとって、少し身近に感じられる方には敬称を付け、違和感がある方には付けていない。
あくまで個人的な感覚によるもので、全員に敬意を持っていることをここに記しておく。
一言ずつ簡単にご紹介するつもりが結構長くなってしまった。
私の作品もいつか誰かのこのような並びに現れる日が来るのだろうか。