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2022年5月1日(日)金子勝子門下生&門下出身生による55周年記念コンサート「音の調べ」
これはタイトルのコンサートに参加した記録ですが、まったくレポではなく、筆者のザルのような記憶をどうにかこうにかひねり出して書き留めた備忘録です。そのあたりをご容赦いただければありがたいです。記事の多くが角野隼斗さんの演奏に関することです。また、感想の都合上「死神」というワードが何度もでてきます。受け付けない方もいらっしゃると思うので、ご承知おきいただければ幸いです。
1.はじめに
2022年5月1日(日)、紀尾井町ホールで行われた「金子勝子門下生&門下出身生による55周年記念コンサート~音の調べ」に出かけてきた。
2.コンサートの概要
◆日時:2022年5月1日(日)開場12:00/開演12:30 終演16:40頃
◆会場:紀尾井ホール
◆出演(演奏順):池田宏樹、小倉巧士、陶山絵梨華、國枝美優、
戸谷博子、今内亜希子、中瀬智也、木室綾乃、今井理子、
竹内麻美、角野未来、山本悠流、村松海渡、田中理恵、
角野隼斗、中谷彩花、大崎結真
◆座席:自由席(2階C4-5に着席)
3.プログラム
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4.着席まで
午前中体調不良(コロナではありません)で、欠席するか角野さんの演奏にギリギリ間に合うように行くか迷ったのだけど、どうにか行けそうになったので当初の予定よりも遅く、それでも開場に間に合うように出発した。メトロに乗りながらまた具合が悪くなったので服薬したらなんとか落ち着いた。現地に着いたのはほぼ開場時刻で、長蛇の列の最後尾に並んで入場。1階席はほぼ埋まっていたので、2階席の左ブロックのセンター寄りの座席を選択。演奏者の姿と横顔、鍵盤とペダルがよく見える、なかなかいい席だと思った。
5.会場内の画像
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6.コンサートの様子
12:30開演。
一人目の池田宏樹さんのシューベルトの「3つの軍隊行進曲」からなんていい音!華麗で力強い行進曲がメロディーや内声を際立たせながら進んでいく。続くみなさんの演奏も、それぞれに個性があって、でも音色やペダリングがとても美しいのが共通しているのが素晴らしい。
ところが自分はさきほど服薬の影響で、集中力が途切れたりすとんと寝落ちしては元に戻ることが何度かあって演奏者のみなさんにとても申し訳なかった。
そんな中でも、今井理子さんのショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」はうっとりするほどの名演。一音一音が軽やかでかつ大切に歌われているのが印象的だった。
また、角野未来さんのドビュッシーの「花火」は、YouTubeにもあげられていますが、生で聴くとその世界観と繊細なテクニックとペダリングのマジックに心奪われて離れられなくなった。
そして15番目。お待ちかねの角野隼斗さんの登場。
ショパンコンクールの時と同じタキシードとタイのいで立ちで、「ショパンのノクターン13番Op.48-1」とサン・サーンス=リストの「死の舞踏S.555」を演奏。
ノクターンは生で2回(2020年のサントリーホールでのリサイタルと、2021年6月25日の、今日と同じ紀尾井ホールでのオールショパンリサイタル)でも聴き、ショパンコンクールでも予備予選と一次予選の2度奏でられた曲。コンクールやその後の経験からどれほど変わっているか楽しみに聴いた。
最初の一音目から変わっていた。音の深さ、長さ、流れ、響き、行方、すべてがより手の中に入って成熟して根付いているのを感じた。なんという音楽の力、心すべてを浄化するような、静かな部分内省的な中間部、光が届く部分、心深く嘆く部分、曲の世界がストーリーのように変わっていく、ショパンコンクールの時も素晴らしかったけれど、さらに確固たる力や自信や心の強さを感じたのは、わたしだけではないと思う。
そして死の舞踏。これは配信やCDなどで何度もいたけれど、生で聴くのは今日が初めて。2020年6月の亀井聖矢さんとの2台ピアノコンサートでの死の舞踏に心を奪われて演奏日から何日も意識がもうろうとした。さらに2020年12月のサントリーホール配信ライブの際に、角野隼斗さんが終演後「リスト弾きながら、なぜだか笑いが止まらなかった..... 楽しいを通り越して、たぶん狂ってた 最高の夜だ」とつぶやいた、伝説の死の舞踏。さあ、それらを上回る死の舞踏がやってくる!と期待マシマシで見入った。
ストリーミング公演、ありがとうございました。リスト弾きながら、なぜだか笑いが止まらなかった..... 楽しいを通り越して、たぶん狂ってた 最高の夜だ#角野隼斗サントリー pic.twitter.com/2P1qaUPe1D
— 角野隼斗 - かてぃん (@880hz) December 13, 2020
ああ!最初の時計が鳴る一音目から怖い!ぼーんぼーんとどんどん怖さが増す。配信も怖かったけど、生演奏は何重も輪をかけて怖い!サン・サーンスが霊感を得たというカザリスの詩には、「死神が墓石の上でバイオリンで舞踏の調べを奏でる」とあるが、まさに(以下、私的な解釈です)死神となった角野隼斗さんが冷たく熱く誘うように、おいでおいでをしている。怖いけれど抗うことができない、行っちゃダメだとわかっていても、死神と共に舞踏会に行きたくなる。こんな死神なら、心臓を取られても頸動脈を鷲掴みにされてもかまわないと思ってしまう。事程左様に怖さマシマシで、ピアノが舞踏会の会場でオケが鳴るように魅惑的な演奏マシマシで誘って(襲って)くるから、わたしはずっと心魅かれながら震えていた。そして自制できないほど高揚し、同時に凍りついていた。にわとりが鳴いて朝を告げても、「はい、おしまい」と、しれっと曲が終わっても、震えながら痺れながら曲の世界から逃れられなかった。鍵盤の上でカチカチ鳴る爪の音もまるで骸骨が骨が踊りながらカチカチ鳴っているよう。素晴らしい物語を作り出す力。素晴らしいエンターテインメント。
ところでこの曲を演奏する際に角野隼斗さんはいろいろアレンジや即興を加えることが多いけれど、今日は原曲にほぼ忠実に、エンディングだけサン・サーンス的に終わっていた。大勢の出演者の一人として登場するクラシックのコンサートの主旨に合わせたのだろうと思った。またいくつかミスタッチがああったように感じた。前日のブルーノート東京では指に絆創膏をたくさん巻いていた。どうか指や体に負荷なく、ずっといい音楽をされて欲しいと願う。きっと大丈夫だと思う。
そんなわけで、角野隼斗さんの演奏後はしばらく正気ではなかった。大崎さんのラフマニノフの「鐘」の、陰鬱だがず~んと美しく音色で我に返った。ドラマチックで豊かで心に響く音楽。これからもっと聴かせていただきたいと思った。
最後に金子先生が舞台に現れてのご挨拶。
門下生のみなさんやお世話になった方々への感謝にあふれる言葉。金子先生のセミナーを受講したことがあるが、その際も常にパワーにあふれながらむ優しくあたたかく謙虚なお人柄にふれて、金子先生のような先生だからこそ、演奏力も人間力も優れたお弟子さんが育つのだと感じている。
16:40頃に終演。
7.おわりに
時々寝落ちしそうになったり心を連れ去られたりのコンサートだったが、終始そこにはいい音楽が鳴り響いていた。これほどのピアニストのみなさんを育て上げられた金子先生の素晴らしさをあらためて感じ、角野隼斗さんはじめピアニストのみなさんに出会わせてくれた先生に心から感謝したい。
帰りは雨が強くなっていたが、冷たさを感じることなく豊かな心持ちで帰路につくことができた。
いいゴールデンウィークの1日、自分のバースデー・イヴの1日をありがとうございました。
(以上です。読んでいただきありがとうございました)