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モーツァルティン誕生!/2023年9月9日(土)東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団第74回ティアラこうとう定期演奏会 

9月9日。SMAPの32回目のデビュー記念日。FC8810の150人サイン入りプレゼントが届き始めた日。

東京都江東区のティアラこうとうで素敵な演奏会がありました♪

【公演概要】

◆コンサートタイトル
 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第74回ティアラこうとう定期演奏会 
◆公演日時
 2023年9月9日(土)14:15開場 15:00開演
◆会場
 ティアラこうとう 大ホール
◆出演
 指揮:藤岡幸夫
 ピアノ:角野隼斗
 管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【プログラム】

◆献奏:バッハ/管弦楽組曲第3番より“エア”(G線上のアリア)
◆ヴェルディ/歌劇「シチリア島の夕べの祈り」序曲
◆モーツァルト/ピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537「戴冠式」
 (休憩)
◆プロコフィエフ/馬齢音楽「ロメオとジュリエット」組曲より
(藤岡幸夫セレクション)

◆ソリストアンコール
角野隼斗/きらきら星変奏曲

【プレトーク】

14:40より藤岡マエストロによるプレトーク。正装のマエストロがステージ中央に登場。冒頭から角野さんのお話。4年ほど前に(と言われていたが、実際は2021年2月)角野くんと桐生で群馬交響楽団とラフマニノフのピアノコンチェルト2番をやって以来、「角野くんにはモーツァルトが合う」と確信して猛プッシュ。「モーツァルトは弾く人を選ぶ。角野くんはそれに見合うタッチの美しさとスタイルを持っているから。まずは戴冠式からやっていこう」。・・こうしてマエストロ念願の演奏会を行うことに。演奏会前々日、前日のリハーサルはとてもしあわせだったと感激しながら話してらした。

「シチリア島の夕べの祈り」に関してはとにかく楽しんで欲しいと。「ロメオとジュリエット」に関しては一曲ずつストーリーと楽曲のポイントの解説があり、演奏を視聴するのにとてもためになった。

プレトークの最後にマエストロよりアナウンスあり、プログラムの冒頭に過日亡くなられた飯森泰次郎氏の死を悼み、バッハのG線上のアリアの献奏を行う、拍手はせずお願いしたいとのこと。実際にはプレトークを聞かれていない方も多かったようで、ある程度の拍手が起こっていた(ロビーにもお知らせがありました)。

【献奏:バッハ/管弦楽組曲第3番より“エア”】

オケが静かに入場。しかし拍手が起こってしまった。プレトークの後で入場された方も多かったから致し方ないかな。藤岡マエストロは、とてもそーっとステージへ。そうしてはじまったエア(G線上のアリア)は優しさと感謝と祈りに満ちて、オケの一体感を感じました。飯守泰次郎マエストロ、R.I.P。

【ヴェルディ/歌劇「シチリア島の夕べの祈り」序曲】

13世紀にシチリア島を支配していたフランス人に対してシチリアの人々が蜂起してパレルモで虐殺を行った事件(1282年シチリアの晩祷)を題材とした歌劇の序曲。冒頭の低音でフランスへの恨みを歌う声、怒りと重さが伝わってきた。中盤は甘やかで、終盤は激烈な虐殺シーンを思わせる激しい弓の動きと息づかい。心が震えた。かっこいい。

ところで角野さんは去る8月20日にこの歌劇の舞台となったシチリア島のパレルモで開催されたフェスに出演されている。その会場となった中世の城Chiostro Palazzo Steriは「シチリアの晩祷」の際にフランスに替わってシチリアを支配したスペインのアラゴン王国が建国した「シチリア王国」時代の初期に立てられたもので、歴史と音楽のつながりを感じた。

【モーツァルト/ピアノ協奏曲第26番ニ長調K.537「戴冠式」】

正直言って、わたしは数日前からとても緊張していた。失礼と思いつつ、それでもとても緊張していた。角野さんにとって公の場で弾くはじめてのモーツァルトのコンチェルト。わたしは角野さんが弾くモーツァルトを聴いたことがない(※)。かてぃんラボでは楽しんでモーツァルト風の即興を弾かれていたが、ただコンチェルトを弾くだけでもたいへんなのに、カデンツァなどではモーツァルト風とかてぃん風を、モーツァルトへのリスペクトを保ちつつ、絶妙のバランス弾き切らないと形にならない。型なしにならず、どこまで型破りするか、できるか。考えれば考えるほどなすべきこと、できねばならぬことは膨大だ。大丈夫だろうか。・・など、本人じゃないのに手に汗かいたりドキドキしたり。

(※しいてあげるなら、トイピアノで弾かれたトルコ行進曲と、「島本須美 sings ジブリ」CDの「やさしさに包まれたなら」の、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番3楽章にインスパイアされて伴奏アレンジされたものがある)

はたして成果やいかに?!


正装で登場した角野さん。ちょっと痩せたかもしれない。コンマスの戸澤さんらと握手されてから椅子につく。ふっと息をつかれたように感じた。

1楽章のはじまり。あ、冒頭から左手弾いている!
これは自分の持っている楽譜にも小さな音符で書かれているが、弾くピアニスト弾かないピアニストがおられると思う(グルダは弾いている)

そもそもモーツァルトは右手以外ほとんど楽譜に書いていないので(かてぃんラボと藤岡マエストロのプレトークで習った)、とても自由だと角野さんも藤岡マエストロも言われていた。角野さんの自由さがもうここからはじまっている。打楽器とベースを補強しつつ、音色に明るさと華やかさを加えている。

ソロのはじまり。音色の美しさ軽やかさに思わず息をのむ。若い貴族の娘たちが集って「砂糖菓子をどうぞ」と言いながら、笑顔で語らっている。おしろいと香水と羽根扇子と絹のドレス。そんな情景が瞬時に、1楽章の間ずっと浮かぶ。まさにモーツァルトの時代の音色が現代によみがえったような演奏。真珠のようにころころ転がるスケール、アルペジオ。笑うようなトリルや装飾音符。転調の繰り返しのドラマチックさ。うれしかった楽しかったとっても。

カデンツァ。ああ、こうきたか!リハモを幾度も繰り返しているのに、基本軸はモーツァルト。モーツァルトの世界に馴染んでいる。エグミを「ほどよく」感じる心地よさ。ほどよい遊び心。これはモーツァルトも喜ぶに違いない。藤岡マエストロが両手をそろえて角野さんの方に顔を向けながら見ている。オケのみなさんも微笑んでいる。会場内に広がるしあわせな空気。

角野さんは戴冠式のかてぃんラボのラストで、"I'll try to improvise OVER Mozart style”と言われていた(OVERを大文字にしたのは筆者)。これはモーツァルトのスタイルを「超える」というより、工学研究者でもある角野さんがよく言う「巨人の肩の上に立つ」のに近いと感じた。モーツァルトという巨人に謙虚に誠実に一生懸命向かい、そのうえでいまこの時代に生きる自分にできることを加える。あっぱれだと感じた。

あと、とても細かい疑問なのですが、1楽章のカデンツァの冒頭が、ピアノ協奏曲23番の1楽章のカデンツァ(わたしが以前全音の楽譜で弾いたことのある既存のカデンツァ)の冒頭に聴こえたのですが、合ってますか?たまたま似てるだけですか?いつか答えを知りたいです!

2楽章は1楽章と空気と香りを変えて。静かな場所で語らう2人のよう。穏やかでやさしい日の光がふりそそいでしあわせな場所。モーツァルトの2楽章はいいなあとあらためて感じました。

そして2楽章にもカデンツァが!緩徐楽章でカデンツァが弾かれるイメージを持っていなかったので驚きました。でも、18世紀に未来からの希望に満ちた光が差し込むような、素敵なカデンツァでした。モーツァルトさんも「お主やるなあ」と思われたことでしょう!

3楽章。この世の中のしあわせを全部集めたような音色のピアノ。この日の戴冠式(演奏会)に参集した、ティアラこうとうにいたすべての人にしあわせが降り注ぐような、心がわきたつ3楽章でした。オケとのやりとりもお互いがお互いに笑うようにフレーズのキャッチボールをして、素敵な音楽を紡いでいました。3楽章のカデンツァも、戴冠した国王とその家族がバルコニーから民衆に笑顔で応えているような、明るさと未来への希望に満ち溢れていて、自分も自然と笑顔になりました。

音楽っていいなあ!

心からそう感じました。

そしてこの日、モーツァルティン(モーツァルト+かてぃん)が祝福されて誕生しました!

戴冠式おめでとう!誕生おめでとう!

【ソリストアンコール:角野隼斗/きらきら星変奏曲】

アンコールは、たぶん「きらきら星変奏曲」だろうけれど・・でも一筋縄じゃこないはず・・と思っていたら、聴いたことのない調性のきらきら星!戴冠式と同じニ長調で始まりました!まさに「きらきら星 戴冠式ver.」!Level 0はほぼ原曲どおりだったけれど、Level 1,2,はきらきら星と戴冠式のまぜまぜ!さすがのかてぃんアレンジ!そしてLevel 3でト長調に転調し途中からきらきら星変奏曲の原調のハ長調へ!本編とアンコールのつながりを大事にするかてぃんさんらしいアンコール。超絶技巧のLevel 7は、現代の88鍵のピアノを縦横無尽にエネルギー全開で駆け回る、いつもながらハッピーに満ち溢れる演奏。もしモーツァルトがいま生きていたら、88鍵のピアノでどんな曲を作ったろう。思わず空想してしまいました♪

モーツァルトの時代のフォルテピアノの鍵盤はほぼ5オクターブ。この日のカデンツァも、使う鍵盤の範囲を考えて作られているのを感じました。アンコールではLevelが進む毎に使う鍵盤の範囲が広がっている。モーツァルトの様式に則りつつ、現代を生きる角野さんらしいエッセンスも加味された、まさに「improvise over Mozart style」の演奏だったと思います!

戴冠式ver.とは書かれてなかったけれど、まさに戴冠式ver.でした


【プロコフィエフ/馬齢音楽「ロメオとジュリエット」組曲より(藤岡幸夫セレクション)】

冒頭からかっこいい。第1曲の迫りくるオケの厚み、思わず気持ちが高まるクレッシェンドのふくらみ。第5曲ではバイオリンとフルートの美しさに酔った。第6曲のドラマティックな展開、第7曲の味わい深いチェロ(プレトークで藤岡マエストロからおすすめがあった曲)、第9曲の澄み渡るような祈りのような調べ。プロコフィエフの素敵さが心から伝わってきました。これは全曲聴いてみたい!というか、バレエも見てみたい!

献奏があったからか、アンコールはなしで終演しました。


【おまけ】

藤岡マエストロは開演前に時々ロビーに顔を出しておられて、聴衆を喜ばせる術を心得ておられるのを感じました。こういうの大事!

着席後会場係の方から場内撮影NGの指示があり、プレトーク前の場内アナウンスでもそのように言われたのですが、プレトーク後に会場係の方から開演前まで撮影OKに訂正されました。わたしも最初に撮影NGのつぶやきをしていたので、慌てて削除してOKの再投稿をしました。でも撮影OKはありがたかったです。

ホールはキャパ1,228席のほどよい大きさ。座席もほどよいやわらかさが居心地がいい。2階席でも音がよく届く、響きの良いホールでした。また聴きに来たい。

また、わたしの座席は2階上手のカメラ席の隣でした。全体がとても見やすくて、高音域では手の動きも見られて、これからは前方ばかりでなくこういう席も選んでいこうと思いました。

なお、本日の模様は後日「エンター・ザ・ミュージック」にてOAされるそうです。映像に残るのがとてもうれしいし、どんな風にOAされるかとても楽しみです!

開演前に自席より撮影。自席の右隣がカメラ席でした



聴衆は定期会員の方か、ご年配の方が多く、おひとりだけでなく、ご夫婦やご友人とみられる方々も多く見られました。こういう方々に角野さんの素敵さが伝わったならうれしいなあ。みなさん拍手もとてもよくされていて、アンコールでは声も上がっていたので、きっと気に入ってくださったと思います!

角野さんは初のモツコン演奏で「モーツァルトの虜になりました」と。10月の大阪での演奏会ではさらに進化したコンチェルトを弾かれるに違いない。行かれる方、思う存分楽しまれてくださいね!そしてまたモツコン弾いてください!藤岡マエストロ、どうぞよろしくお願いします!

角野さん、マエストロ、東京シティ・フィルのみなさん、素晴らしい音楽をありがとうございました!近いうちにまたの共演の機会を楽しみにしています!

角野さん、モーツァルト好きできっと得意だったんだね!
勝手に心配してごめんね<(_ _)>


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