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Development of postural adjustments during reaching in typically developing infants from 4 to 18 months

van Balen, Lieke C., Linze Jaap Dijkstra, and Mijna Hadders-Algra. "Development of postural adjustments during reaching in typically developing infants from 4 to 18 months." Experimental brain research 220.2 (2012): 109-119.

【要旨】

乳児期における姿勢コントロールの発達に関する知識,とりわけ姿勢筋の協調の発達についての知識は限られている.本研究ではサポートのある座位で姿勢コントロールの発達を評価することが目的である.11人の定型発達児が本研究に参加し,4,6,10,そして18カ月での評価を行った.腕の長さに小さなおもちゃを示してリーチング運動を引き出し,その間に上肢の複数箇所,頸部と体幹筋群が表面筋電図を用いて記録された.モデル化されたコンピュータのアルゴリズムにより相動的な筋活動の開始を検出した.結果はサポートのある座位でのリーチングにおける姿勢筋活動は非常に多様であることを示した.方向特異的な姿勢活動は早期より一貫性を示すことなく現れており,100%には到達しないものの10-18カ月で増加する.全ての年齢での活性化の支配的なパターンは「完全なパターンcomplete pattern)」であり,全ての方向特異的な筋群が動員されていた.4カ月児では,わずかばかりトップダウンに動員する傾向が見られ,これは徐々にボトムアップの動員に取り代わられた.4カ月から18カ月の間,サポートのある座位でのリーチングという生態学的な課題における姿勢コントロールの主な特徴はバリエーションである.4カ月以降で既に乳児は-バリエーションの中で-手の課題に適切な筋の動員戦略を選択することがいくらか可能となる.

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【私見】

動員の方向がトップダウンからボトムアップに移行する原因として,4カ月児では空間で頭位を保持することが大切であり,頭部が姿勢コントロールの重要な参照枠となっているのではないかと著者は考えているようです.図にあるように4カ月児はすべてトップダウンの動員となっています.6カ月からボトムアップの動員が出現し,18カ月では支配的な動員方法はボトムアップとなっています.6カ月からボトムアップの動員に移行する理由として,コントロールの焦点が支持基底面,つまり下部体幹へと移るからではないかと著者は推測しています.

これはVan der Fitsが指摘したように,6カ月以降でそれまでの定型的な姿勢調節から課題特異的な姿勢調節へと移行することと関連があるように思います.ちなみに,Van der Fitsはこの移行に関連する項目として腰椎部からの固有受容感覚,もしくは腎臓部にあるグラビセプター(graviceptor)による感覚情報の仲介を示唆しています.

臨床を考えてみると脳性麻痺を伴うお子さんは頭部や肩周囲を「固めて」姿勢をコントロールする様子がよく見られます.卵が先か鶏が先かの話になりますが,頭頸部を固めると支持面からの情報を取り入れる余裕はなくなりますし,支持面からの情報を取り入れないと必然的に頭頸部を固める姿勢戦略となってしまいます.姿勢を考えるときは全身を,体節と体節の関係を見る必要がありそうですね.

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