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運動発達:Embodied,Embedded,Encultured,Enabling(Motor Development: Embodied, Embedded, Enculturated, and Enabling).

Adolph KE, Hoch JE. Motor Development: Embodied, Embedded, Enculturated, and Enabling. Annu Rev Psychol. 2019 Jan 4;70:141-164. doi: 10.1146/annurev-psych-010418-102836. Epub 2018 Sep 26. PMID: 30256718; PMCID: PMC6320716.


【要旨】

運動発達と精神心理の発達は本来的には関連しているものの,研究者は普通これらを別のものとして考えている.このレビューでは乳児の運動発達で見られる4つの重要な特徴を紹介し、運動スキルの獲得には基本的な心理機能が必要であり,同時にスキルの獲得は精神心理機能に影響を与えていることを示す.(a)運動発達とは身体化されたものである(embodied):行為の機会は目下の身体状況に依存している.(b)運動発達は環境の中に埋め込まれている(embedded):環境における多様性が行為の可能性を作りだすこともあれば制約することもある.(c)運動発達は文化に根づいたものである (encultured):社会的・文化的な影響が運動行為を形づくっている.(d)運動発達とは何かを可能にすることである(enabling):新しい運動スキルの獲得が探索と学習の機会をつくり出し,それにより様々な精神心理領域にまでわたる発達のカスケードが開始される.それぞれの特徴に関して,乳児の身体や環境,経験の変化が行為の柔軟性を必然的に引き起こし,それが精神心理の発達にとっても必要不可欠であることを示す.さらに,運動発達が精神心理の発達を研究するのに理想的なモデルであることを示していく.

【本文一部抜粋】

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このレビューは100年にもわたる乳児の運動発達の研究を網羅しようというものではない.そうではなく,運動スキルの発達が心理学にとって必要不可欠なものであることを示そうとしているのだ.動きの学習には基本的な心理機能が必要であり,それは土台となる文化の価値観を反映しており,多くの心理学領域において学習や成長を促進している.サブタイトルにもあるように,運動とは身体化されたものであり(embodied),埋め込まれたものであり(embedded),文化に根づいたものであり(encultured),可能化するものである(enabling) (図).頭韻を気にせず言い換えれば,運動は目下の身体状況により制約を受けていて,行為の可能性を無数に提供する環境の中で起こるもので,社会的影響や文化特有の育児習慣により形作られている.さらに言えば,新しい運動スキルは学習の新しい機会を生みだし,もともとの成果からはるか遠く離れた領域までつながる発達の連鎖が開始されるのである.



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