脳性麻痺を伴う子どもの視知覚障害:システマティックレビュー(Visual-perceptual impairment in children with cerebral palsy: a systematic review)
ANNE EGO
Developmental Medicine & Child Neurology 2015, 57(Suppl. 2):46-51
【要旨】
目的:視知覚は脳性麻痺(CP)を伴う子どもでしばしば障害される認知機能の一つである.このシステマティックレビューの目的は視知覚障害(VPI)の頻度と,それと患児の特性との関係を評価することである.
方法:84の研究が選択され,うち15が保持された.脳性麻痺を伴う子どもに関して,VPIの割合は40%~50%で視知覚指数は平均で70-90であった.どの研究もCPのタイプ,IQ,運動麻痺の右左,神経眼科学的な結果,もしくは発作の明確な影響については報告していなかった.神経放射線学でみる損傷部位の重症度と視知覚障害との関連はありそうだった.早産の影響は議論の的となっているが,在胎期間の短さは視覚-知覚よりも視覚-運動スキルと関連していた.
解釈:脳性麻痺を伴う子どもの視知覚障害は脳性麻痺という症候群の核となる障害と捉えられるべきである.神経心理学的なテストへのより系統だったアプローチ等の更なる研究が,脳性麻痺の下位グループや視知覚の発達に関する神経心理学的な特徴への特異的なインパクトを探索するために必要である.
【私見】
脳性麻痺を伴う子どもと視知覚障害との関連は広く認識されているものの,今現在わかっていることは非常に限られていることがよくわかりました.正直,「え,こんなにわかっていることが少ないの!?」と思いました.
この原因として著者は用語の統一が不十分なこと,各研究で使われている評価バッテリーがバラバラなこと等をあげています.用語については確かにちょっと混乱している印象はありますね.視覚障害,視知覚障害,視覚認知の障害,視覚-知覚の障害(いわゆる腹側経路の障害),視覚-運動の障害(いわゆる背側経路の障害),認知障害,視覚的注意の障害,,etc.それぞれの用語の守備範囲があいまいで統一されていない気がします.
このシステマティックレビューを読む限り,少なくとも(少ないですが)①脳性麻痺を伴う子どもの約半数が視知覚障害を伴うこと,②損傷部位の重症度と視知覚障害は関連していること,③視覚-知覚(いわゆる腹側経路)よりも視覚-運動(いわゆる背側経路)の方が障害されやすそう,ということは言えそうです.ただ,③に関してはPVLの子どもの視知覚障害は腹側経路に限った話ではない,とクギを刺す論文もあり,一概には言えない印象も持っています.また,背側経路の脆弱性についてはその原因がPVLにあるのか,早産にあるのかについても結論は出ていないようです.
いずれにせよ,さすがにこのレビューだけでは臨床に応用するのは難しいので,また引用文献の孫引きから勉強を始めようと思います.